植物と一緒に運ばれるクモ
先日セアカゴケグモが自動車とともに北海道に持ち込まれたことについて記事を書いた。セアカゴケグモの場合は人工的なものに網を張ることが大半なので、こうした形であちこちに運ばれてしまう。
ところで、植物についていたクモが人によって遠くに運ばれてしまうということは日常的に起きている。
セアカゴケグモが見つかったのと同じ北見市(旧端野町)で、以前コガネグモが見つかったことを思い出した。これは2004年8月16日発行の「経済の伝書鳩」という北見・網走地方で配布されているフリーペーパーの記事になったのだが、記事にする際、クモの種名について私に問い合わせがあった。コガネグモが見つかったのは果樹園。そしてこの果樹園では本州から苗木を仕入れているそうだ。つまり、苗木とともにクモが運ばれてしまったのだろう。
コガネグモは腹部が黒と黄色の縞模様の大型のクモで、大きな円網を張る。大型で目立つクモだからこそ人の目に止まり話題になったのだ。コガネグモの場合は北海道では越冬できないだろうから、このような形で持ち込まれても定着することはない。しかし、植物とともにクモが運ばれてしまうということは実際には相当起きていると思われる。
たとえば野菜と一緒に運ばれるという事例だ。身近な例で言うと、購入した香川県産のレタスからサラグモが出てきたことがある。顕微鏡で調べてみると(微小のサラグモの同定は実態顕微鏡で生殖器を観察する必要がある)セスジアカムネグモの雌だった。北海道ではごく近縁のコトガリアカムネグモが生息しており、セスジアカムネグモと同種とすべきか別種とすべきか判断に迷う(私はとりあえず北海道産のものはコトガリアカムネグモに同定している)。しかし香川産の雌を見る限り、生殖器の形態が北海道産のものとやや異なっていることが確認できた。
また、つい先日のことだが、やはり冷蔵庫の野菜室からフクログモが出てきた。これも顕微鏡で調べると、サッポロフクログモの雌だった。どの野菜についていたのか分からないが、北海道産の野菜を数種類買ったのでたぶん北海道産の野菜だろう。
北海道では全国各地から野菜が運ばれているので、クモや昆虫などもかなり一緒に運ばれていると思う。こんなふうにして植物とともにひっそりと小さな動物が運ばれているのだ。こうやって持ち込まれた種が繁殖して定着してしまうことは稀だとは思うが、移入先でクモが産卵したり、卵のうが付着した植物が持ち込まれた場合などは、定着してしまう可能性も否定できない。
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