変更せざるを得なくなった雌阿寒岳噴火時の避難道路計画
北海道は雌阿寒岳が噴火した際の避難路として、新しい道路の開削を計画した。今ある道路(道道モアショロ原野螺湾足寄停車場線)は未舗装で狭いというのが新規開削の理由だ。この道路のことについては以前、「雌阿寒岳の麓に新たな道路は必要か?」と「雌阿寒岳噴火に備えた避難道路建設は無意味」という記事を書いている。
自然保護団体はこの新規開削に反対してきた。理由は二つで、一つはそもそも噴火してから避難するのでは被害が防げないこと(そのために雌阿寒岳火山防災協議会の防災計画では雌阿寒岳の麓にあるオンネトー湖畔では噴火警戒レベルが3になった時点で立ち入り禁止にしている)。もう一つは、開削予定地には風穴や希少なコケ類等がありそれらを破壊するためだ。計画路線は盛土と切土が必要なため広い法面が生じ、風穴地だけではなく、広大な森林を伐開することにもなる。
自然保護団体は道路予定地で風穴や植生などの調査を行い、風穴地一帯に希少なコケ類が生育していることを訴えてきた。新規道路の一部は国立公園の第2種特別地域になっており、環境省も今年に入ってから、希少なコケ類に影響を与えるような開削は許可できないと北海道に伝えた。このために、北海道は計画変更をせざるを得ない状況に追い込まれた。
6月23日の北海道新聞十勝帯広版は、「防災と自然保護どう両立」というタイトルでこの問題について取り上げた。しかし、私はこのタイトル自体に違和感がある。これまでの新聞記事もそうだが、そもそも「噴火してから避難する」ことを前提とした道路など防災の意味がないのに、そのことに全く触れず、あたかも「防災のために道路が必要」と受け止められるようなタイトルになっているからだ。
十勝総合振興局帯広建設管理部道路課は北海道新聞の取材に対し「非常時に避難する車と緊急車両がすれ違うことができない。地元からの道路整備の要望もあり、計画を進めていた」とコメントしている。しかし、この主張は破綻している。
火山噴火の防災とは噴火が起きる前に避難をさせることだ。火砕流や融雪型泥流、噴石などは噴火直後に到達するので、噴火してからでは被害は防げない。噴火してから避難するために幅広い舗装道路が必要という発想は防災ではない。だから、防災計画では、噴火前に避難をすることになっている。
避難する車と緊急車両がすれ違えないというが、これも机上の空論だ。なぜなら、緊急車両とて噴火活動が治まらなければ現地に入ることはできないから、噴火発生直後に現地に入ることにはならない。また、緊急車両は足寄町市街地から現場に向かうことになるが、足寄町市街地から現道の未舗装部分まで地図上で計測すると37キロほどあり、緊急車両が到着する頃には現地にいた車両は現道の未舗装道路の部分を通り抜けているはずだ。つまり、緊急車両とのすれ違いが生じることは考えにくい。登山中などで避難が遅れた人がいたとしても、待避場を利用してすれ違うことは可能だ。
帯広建設管理部がこんな理由で道路の新規開削を決めたのなら、火山噴火の防災について何もわかっていないことになる。しかも、帯広建設管理部はこの道路開削について雌阿寒岳火山防災協議会に何ら相談をしていないのだ。
北海道自然保護連合は北海道に質問書を提出しているが、北海道の回答は環境省の見解を示しただけで、質問に何ら答えていない。議論をすりかえて言い逃れをする「ごはん論法」の回答だ。
こういう対応を見ても、この新規開削計画が防災とは言えないことは明らかだ。新規開削がどうしても必要というのであれば、まずは正面から質問に答えなければならない。このような意味のない避難道路に多額の税金を投入し、自然を破壊することはあってはならないと思う。
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