経済成長というディストピア
経済学者の水野和夫氏は2014年に「資本主義の終焉と歴史の危機」(集英社新書)で、資本主義が終焉に向かっていると指摘した。利子率が低下しているのは資本主義の終焉の兆候だという。水野氏がこの本を書いてから10年以上が経過したが、現状はどうなのか。確かに経済成長は鈍ってはいるものの、未だに成長を続けているし、どの国も相変わらず「経済成長」を叫んでいる。水野氏の指摘は外れたのだろうか?
私は、これまでの「物の生産から」デジタル化やAIなどのIT分野、それに関連する半導体などの生産、そして温暖化対策やワクチンなどの医薬品に成長産業をシフトすることで成長を永らえていると見ている。成長産業には軍需産業も含まれるだろう。日常生活に必要な衣類や日用品、家電製品などの「物」は一通り所有してしまえば消費はそう簡単には伸びない。しかも高齢化と少子化が合わせてきている。これでは物の消費が増えるわけがない。そこで、目を付けたのがこれらの分野だろう。3G携帯がなくなってスマホへと切り替えが進み、スマホなどほとんど必要としない高齢者にもスマホを持たせ使わせようとする。そして、生成AIを誰にでも解放して使わせようとする。その背後には、ビッグテックによる金儲けがある。
だからこそ、大量の電気を消費するデータセンターが必要になるし、半導体生産が必要になる。半導体生産は大量の電気を必要とするし環境汚染がついてまわる。そして、メガソーラーの建設や原発の再稼働。高市首相は武器の輸出までしたいようだが、すべてがつながっている。
地球温暖化対策はもちろんやっていかねばならない。しかし温暖化対策のもとに行われている再生可能エネルギー事業や電気自動車産業も、背後には利権やら金儲けがうごめいている。太陽光発電や大型風力発電には環境破壊や健康被害、廃棄物(リサイクル)などさまざまな問題を抱えているが、そんなことはお構いなしで進められている。温暖化対策の名のもとに、ほんの一握りの巨大企業や富裕層がさらに儲け、人々を奴隷のように使い支配する、そういう方向に向かっているとしか思えない。
今の状態は、資本主義の、あるいは経済成長の最後のあがきと言ってもいいかもしれない。現在のこの混沌とした世界は、私に言わせれば資本主義の作り出した怪物であり狂気だ。資本主義が生み出した強欲で支配的な超富裕層は危険極まりない存在だ。この先に待ち受けるのは際限のない格差の拡大であり、破滅の道ではないか?
私は常々「自然の摂理に逆らってはいけない」と訴えてきた。どんなに科学技術が進歩しても、人は生物であり自然の一部に他ならない。人の遺伝子を操作したり、人為的に改変してしまえば取返しのつかないことになるのは言うまでもない。しかし、遺伝子製剤によってすでに遺伝子の改変すら起きてしまっている。AIも計算能力では人間を超えているが、しかし科学技術は決して「人」を作り出すことはできない。AIを使えば使うほど、人々は頭を使わなくなり、感性は鈍り、創造力はなくなり、対話も減るだろう。そして、人間らしい幸福感はどんどん失われていくのではなかろうか? AIは人の認知の世界まで変えてしまう危険をはらんでいる。
こんな世の中が到来しようとは、いったいどれほどの人が想像できだだろうか?
日本の政党を見渡してみても、資本主義を否定しているのは日本共産党くらいだ。その共産党も経済成長は否定していない。大多数の経済学者も政党も資本主義を支持し、経済成長を唱えている。今の惨状をもたらしているのが経済成長だとなぜ疑わないのだろうか?
核廃棄物の処理もできず、大事故を起こした原発の処理もできない。温暖化の危険性を知りながらも止められない。AIも同じことになるのだろうと私は思っている。一部の分野では便利かもしれないが、人が行ってきた仕事の大半をAIがとって変わるなどということにはならないだろう。なぜならAIには感性もないし、人のような意思疎通はできないだろうから。接客や営業、介護や医療など、人と人の意思疎通が必要な仕事がAIにできるとは思えない。もしそのようなことをAIやロボットに任せたなら、人の社会は空虚で寒々しいものになるに違いないし、人は心を病んでいくだろう。
先の衆院選には「チームみらい」が不思議なことに比例で11議席も獲得した。この政党はAIやデジタル化推進だが、背後にIT産業が関わっているのではなかろうか。
私は、今すぐにでも経済成長を止め(むしろ縮小させ)、デジタルもAIもほどほどにし、エネルギー消費もできるだけ抑え、環境に負荷の少ない地産地消の小規模自然エネルギーに転換していかなければ、人類に未来はないと思っている。しかし、そんな意見の人の何と少ないことか。
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