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2025/07/21

絶滅の危機に陥った篠路福移湿原のカラカネイトトンボ

 昨日の北海道新聞に「埋まる湿原 トンボ消えた」というタイトルで、札幌市北区にある篠路福多湿原で埋め立てが進み、絶滅危惧種のカラカネイトトンボの姿が見られなくなってしまったとの記事が写真とともに一面をつかって掲載された。

 

 記事によると、90年代には約20ヘクタールの湿原があったが、2001年頃から工事現場などで発生した残土による埋め立てが始まったという。ここの湿原をめぐっては「カラカネイトトンボを守る会」が保護活動をしていることは知っていたが、こんな状況になってしまったことに愕然とした。

 

 湿原一帯はかつて原野商法で切り売りされ、地権者が数百人いて埋め立てが進んだそうだ。しかし、地権者の了解なく土砂を搬入することなどできないと思うのだが、土砂の搬入をしている業者が湿原一帯を買い取ったのだろうか? 地権者を調べることはできるが、原野商法であれば地権者が亡くなったあとも名義変更をせずに放置され地権者と連絡が取れなくなっている区画もそれなりにあるだろうし、業者が湿原一帯を広範囲に買い取ったとは考えにくい。いったいどんな手続きがなされたのだろうか。

 

 「カラカネイトトンボを守る会」も土地を買い取る運動を展開して現在1ヘクタールほどを所有しているという。同会は埋め立てをめぐって業者を提訴したが、「業者が土砂を搬入した土地が守る会の所有地だと特定できない」という理由で最高裁で敗訴してしまった。しかし、「土地の範囲が特定できない」のであれば、埋め立てをしていいという理由になり得るのだろうか? 私にはどうも理解できないし、地権者がいて土地が登記されているのなら、業者に測量をさせるべきではなかろうか・・・(もし業者が地権者から土地を買っているのなら、測量して境界をはっきりさせなければ埋め立て行為もできないのではないか・・・)。

 

 環境省は、2001年に篠路福移湿原を「日本の重要湿地500」に選定し、2016年には「生物多様性の観点から重要度の高い湿地」に選定した。環境省も地元自治体もこの湿地の重要性やカラカネイトトンボの希少性は理解しているはずだが、民有地であることを理由に何の手も打てないという。

 

 いったい何のためのレッドリストなのか? 何のための重要湿地選定なのか? 環境省だって地元自治体だって、その気があれば業者と湿地保全について話し合いくらいはできるのではないか。残土捨て場の代替地くらいあるだろうに。重要性が分かっていながら、何もできずに埋め立てられるのを指をくわえて見ているだけとは何と情けないことか。

 

 環境省は絶滅危惧種などの選定や保全活動はまあまあやっている。しかし、開発行為が関わる事例では、それに対してほぼ何もしない。大雪山国立公園に計画された士幌高原道路も、日高山脈に計画された日高横断道路も、中止に追い込んだのは自然保護団体だ。環境省は中止のための行動は何一つしなかった。

 

 重要な湿地に選定することはしても、開発行為に関しては何も言えないというのが環境省の一貫した対応だ(ただし、初代環境庁長官の大石氏だけは尾瀬の保護を実践した)。指定と保全がセットでできなければ、環境省の存在意義がないのではと思えてならない。

 

 もしかしたら、「カラカネイトトンボが消えたところで大きな問題などないのではないか」などと思っている一般の人もいるかもしれない。しかし、そういう理屈でかつては日本のあちこちにあった湿地は次々と埋め立てられ、その度に希少な生物の生息地が失われた。気が付けば、今残されている湿地はほんのわずかしかない。これまでに人間のエゴでどれほどの生物が失われたことだろう。そして、一度絶滅した生物は戻ってはこない。人間の傲慢で愚かな行為は、必ず何等かの形で人間に襲いかかってくるだろう。

 

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