マダニ対処法
東京に住んでいた頃はときどき登山などもしたが、マダニに噛まれたことは一度もなかった。ところが北海道は実にマダニが多い。登山はもちろんのこと、林道や森林の中の遊歩道を歩いただけでマダニに噛まれることがある。道民にとってマダニはヒグマやスズメバチと同じくらい注意が必要な動物だ。
本州から自然好き、生物好き、登山好きの知人などがくると、たいていの人が「ヒグマが怖い」という。北海道に住んで45年ほど経つが、ヒグマを見たのは4回だけ。そのうちの3回は車の中からだった。注意は必要だし熊撃退スプレーなども持ち歩いた方がいいけれど、出会う確率はそれほど高くない。
私はヒグマ以上にマダニやスズメバチに注意するように言う。北海道に住むようになってから、マダニは何回噛まれたかわからない。マダニは重症熱性血小板減少症候群(SFTS)、日本紅斑熱、ライム病など複数の感染症を媒介し、重症化すると死亡することもあるので侮れないのだ。スズメバチは2回刺され、アナフィラキシー症状は出なかったのでハチ毒アレルギーではないことは分かったが、アレルギーの人はやはり命に関わる。
最近は登山もほとんどしなくなったが、自宅近くの遊歩道を散歩しただけで昨年は1回、今年はすでに2回、マダニに噛まれている。4月下旬、少し笹薮を歩いただけで、ズボンに何匹ものマダニが付いていたこともある。いずれもまだ成体になっていない小さなダニだった。
マダニは卵からかえると幼ダニ、若ダニ、成ダニの順に脱皮し、そのステージごとに吸血する。1~2ミリほどの小さなダニでもしっかり皮膚に取り付いて吸血する。この小さいダニは気づきにくいのでなかなか厄介だ。なお、「マダニ」というのはマダニ目に属する吸血性のダニの総称で、シュルツェマダニ、ヤマトマダニ、フタトゲチマダニなど日本では数十種が知られている。
マダニには日頃から注意しているので、噛まれてもたいてい数時間後には気づいて除去するが、皮膚に取り付くときに全く痛みを感じない。だから普段からあまり注意をしていない人は、何日も気づかないことがあると思う。
長袖、長ズボン、帽子着用で注意をしていても、やはりマダニが多いところに行けばどうしても付かれてしまう。マダニはササや草本、樹木の枝先などで動物が近くを通るのをじっと待っていて、近づいた動物や人にとび移る。そして、しばらく服の上を歩き回ったあとに、襟やズボンの裾などから服の下に潜り込み、柔らかそうな皮膚に口器を差し込んで吸血する。だから、まずは登山や散歩から帰ったらすぐに服や体にマダニが付いていないかどうかチェックするのが肝要だ。
もし、噛まれてしまったときは、ダニ取り用の釘抜き状の道具かダニ取り用ピンセットで取り除く。マダニに噛まれて間もないときはこれで簡単に除去できる。ただ、気づかずに何日も放置してしまうと取れにくくなり、無理に引っ張ると口器が皮膚に残ってしまう。マダニの口器は下向きの棘が生えていて、簡単に抜けないようになっている。しかも、時間が経つと唾液によって固められますます抜けづらくなることもあるので、早めに除去するのが一番だ。噛まれてから時間が経ってしまった場合は、医療機関で取ってもらったほうが無難だ。
2ミリにも満たない小さなダニに噛まれ、すぐに気が付いて除去しても、噛まれたところは赤くなって何日も痒い。そこで、つい先日噛まれたときは、除去した後にインセクトポイズンリムーバーで毒を吸入してみた。インセクトポイズンリムーバーというのは注射器のような形状をしたプラスチック製の器具で、ハチや毒虫に刺されたときに刺し口に当てて毒を吸引する。これを使ったところ、痒くならずに済んでいるのでお勧めだ。
いずれにしても、ダニに噛まれたあとに発熱や倦怠感などの症状が出た場合は速やかに医療機関に行く必要がある。
近年、散歩しただけでマダニに噛まれるようになったのは、エゾシカが増えていることと関係しているのだろう。ちょっと山間部に行けば、エゾシカはあちこちに群れている。以前、交通事故で死んだエゾシカに、血を吸って豆粒のように膨れ上がったマダニがいくつもついているのを見たことがある。マダニは十分に吸血すると自ら離脱する。エゾシカがよく見られるところではエゾシカから離脱したマダニが産卵し、幼ダニや若ダニが大量にいそうだ。
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