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2025年4月

2025/04/19

シラオビアカガネヨトウ

 茶色と白のコントラストが明瞭で目を引くキリガ。よく似たマエグロシラオビアカガネヨトウは北海道には分布していない。幼虫はスイカズラ科のタニウツギを食べるそうだが、当地ではタニウツギは見たことがないので、タニウツギ以外の植物も食べるのかもしれない。写真の個体の前翅長は14mm。ヤガ科キリガ亜科。

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2024年7月10日 北海道十勝地方

 

2025/04/18

詐欺電話がかかってきた

 ニュースではしばしば電話やSNSによる詐欺被害を報じているが、いままではどちらかというと他人事のように思っていた。ところが、先日、我が家にも不可解な電話がかかってきた。

 

 自動音声で総務省をかたり、2時間後に通信機器が使えなくなるので1番を押してオペレーターにつなげという内容だ。もちろんすぐに「詐欺だろう」と気づいたので切ったが、怪しさ満載だ。

 

 まず、「2時間後に通信機器が使えなくなる」という予告がおかしい。総務省をかたるのも変だし、夕方の17時を過ぎているのも不可解だ。それに、伝えたいことがあるなら何もオペレーターを呼び出す必要はない。

 

 さっそく調べてみたら、総務省のHPに注意喚起があった。

 

総務省職員を名乗る不審電話にご注意ください

 

 そして、今日もまた同じ電話がかかってきた。「下手な鉄砲も数撃ちゃ当たる」で、おそらく固定電話の番号にランダムにかけているのだろう。

 

 冷静に物事を判断できる人ならば、すぐにおかしいと気づくと思うが、焦って指定された番号を押し、指示に従ってしまう人もいるのだろう。北海道新聞にも毎日のように電話やSNSを利用した詐欺被害が報じられているが、高齢者だけではなく若い人もいる。嫌な時代になったものだと思う。

 

 かつては名前と電話番号だけでなく住所も記載された電話帳が無料で配布されていて、それを利用した勧誘電話などもあったが、電話帳を配布しなくなってからはそんな電話もほぼなくなった。しかし、昨今は詐欺電話が横行している。商品の購入や投資などの勧誘電話よりたちが悪い。近年は同窓会名簿にも名前を載せてほしくないという人もいると聞く。かつては同好会などの会員名簿も普通に配布されていて何の問題も起きなかったものだが、そんなのどかな時代は過ぎ去ってしまった。

 

 先日は、卒業アルバムを印刷する会社がサイバー攻撃を受けて、卒業生の顔写真や名前が流出した可能性があると報じられた。インターネットが普及したことで、個人情報の流出の危険性は格段に高くなってしまった。いつ、どこから個人情報が流出するか分かったものではないし、個人が注意していたら防げるという話でもない。

 

 気にかかるのはマイナンバーカードだ。健康保険証や免許証も兼ねるようになってきているが、これもいつ個人情報の漏洩につながるか分かったものではない。しかも「任意」であったものが、健康保険証の廃止にまでなってしまった。そのうち銀行口座とも紐づけるのだろう。そしてマイナカードの情報が漏れてもおそらく誰も責任をとらないのだろう。

 

 詐欺が身近になっているだけに、くれぐれも気を付けてほしいと思う。

 

2025/04/17

ハガタアオヨトウ

 自宅の壁にきたハガタアオヨトウ。緑色をしたヤガはいくつかいるが、本種は前翅の後角に近いところに黄色い斑紋がある。幼虫はオオイタドリを食べるとのこと。前翅長は20mm前後。ヤガ科キリガ亜科。

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2024年7月31日 北海道十勝地方

 

2025/04/15

ヒメシロテンアオヨトウ

 倒木の傍らで産卵に来るヒメバチを探していたら、目の前に緑色の蛾が止まっていた。見るからにコケに擬態しており、しばらくその存在に気付かなかった。家に帰って調べたところ、ヒメシロテンアオヨトウと判明。幼虫はタデ科植物を食べるようだ。写真の個体は前翅長22mm。ヤガ科キリガ亜科。

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2022年7月14日 北海道十勝地方

 

2025/04/14

スジクロモクメヨトウ

 いかにも樹木の幹に擬態していると思わせる色や斑紋をもつ蛾。幼虫はオオイタドリを食べるとのこと。写真の個体は前翅長21mm。ヤガ科キリガ亜科。

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2022年7月27日 北海道十勝地方

 

2025/04/13

ワクチンは逆効果?

 最近、夏目漱石の小説を読み返している。漱石の作品は若い頃に「坊ちゃん」「こころ」「硝子戸の中」などを読んだが、それらも含めて読み返している。そんなわけで「道草」を読んでいたところ、意外な記述があった。「道草」は漱石の自伝的小説と言われているが、39章にこんなことが書かれている。

 

 彼は其所そこで疱瘡をした。大きくなって聞くと、種痘が元で、本疱瘡を誘い出したのだとかいう話であった。彼は暗い櫺子のうちで転ころげ廻った。惣身の肉を所嫌わず掻かきむしって泣き叫んだ。

 

 主人公、つまり漱石が3歳頃のことだ。彼が疱瘡、つまり天然痘にかかったことはWikipediaにも書かれている。西暦でいうと1870年前後だろう。その頃には、医師はワクチンである種痘を接種しても天然痘に罹患することが分かっていたし、それどころか種痘が天然痘を誘発させることもあると考えていたのだろう。

 

 種痘を接種しても天然痘に罹ったというのは、「ワクチン神話捏造の歴史」にも書かれている。日本の状況については以下の記述がある。

 

 東洋諸国も例外ではない。日本では1872年に天然痘ワクチンの強制接種が始まり、1885年には5年から7年おきにワクチンを強制的に再接種する法案が成立した。1885年から1892年にかけて2500万例のワクチン接種と再接種が記録されているが、天然痘は日本で猛威を振るい続けた。

 

(中略)公的な記録によると、1892年から1897年にかけて14万2032例の感染と3万9836例の死亡が確認された。1896年にはどんな地域でも天然痘ワクチン接種を5年ごとに強制する法律が制定されたが、そのまさに翌年の1897年には4万1946例の感染と1万2276例の死亡が記録された。天然痘の死亡率は32%に上り、ワクチン接種の始まる前の2倍近くとなった。

 

 漱石の記述からも、「ワクチン神話捏造の歴史」からも、種痘が天然痘を防いだどころか、逆効果だったことが示唆される。天然痘が流行っていた頃、医師はそのことを体験から知っていたはずだ。しかし、その事実は人々には広まらなかった。

 

 このような公的記録がありながら、国民には事実とは正反対のことが教えられた。私も天然痘はワクチンによって撲滅されたと学校で習った記憶があるし、種痘を接種していれば一生天然痘には罹らないとコロナ騒動前まで信じていた。今もそう信じている人は医師を含め多いだろう。150年以上も前に分かっていた事実がずっと隠されて、効果どころか逆効果の可能性もあるワクチンを打たされてきたのだ。

 

 中村篤史医師がこんな記事を書いている。

 

子宮頸癌ワクチンの危険性

 

 中村医師は、子宮頸癌ワクチンを打つと子宮頸癌の発生率が上がると、データを元に指摘している。中村医師は、「その病気を防ぐためのワクチンのせいで、むしろその病気にかかりやすくなる。コロナワクチンもそうだったし、インフルワクチンもそう。子宮頸癌ワクチンも同じだということです。」と書いている。

 

 それにも関わらず、今もこれらのワクチンが感染予防効果があると信じている人は医師を含め多数いる。この情報化時代にあっても、国や医師が「ワクチンは効果がある」と喧伝すれば、簡単に事実が隠されてしまうのだ。

 

 さらに、近年は「癌ワクチン」なるものまで研究されている。癌ワクチンについては荒川央博士が詳しい記事を書いているのでお読みいただきたいが、要は、癌mRNAワクチンは危険であり、薬害はコロナワクチンと比べ物にならないほどになるだろうという。

 

【前編】次世代LNP/mRNA製剤と癌: 癌の生物学

 

【後編】次世代LNP/mRNA製剤と癌: LNP/mRNA製剤による癌の予防や治療は可能か?

 

 昨今では、帯状疱疹や百日咳が流行っており、それらのワクチンの接種が推奨されている。帯状疱疹や百日咳の流行は、おそらくmRNAコロナワクチンによって免疫が低下したためだろう。しかし、そんなことは全く報じられない。そんな免疫が破壊された状態でワクチンなど打って大丈夫なのだろうか?

 

 国は、ワクチンが本当に感染予防や重症化予防の効果があるのかという検証もせずにワクチンを推奨する。今後は、インフルワクチンもmRNAレプリコンが登場するだろう。そして、何も知らない人は喜んで接種するのかもしれない。

 

 これまで、国がワクチンが逆効果であるという事実を隠し続けて推奨してきたことを思うと、私は現状を恐ろしいとしか感じない。

 

2025/04/12

ナカジロキシタヨトウ

 本種は環状紋と腎状紋が白く縁取られ、胸部背面が緑色を帯びており、「キシタヨトウ」とつくキリガの中ではわかりやすい。前翅長は18mmくらい。ヤガ科キリガ亜科。

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2022年8月26日 北海道十勝地方

 

2025/04/11

ウスキシタヨトウ

 前翅は色彩斑紋に変異が多いが、後翅を確認してウスキシタヨトウと同定。前翅長は20mmくらい。ヤガ科キリガ亜科。

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2022年8月30日 北海道十勝地方

 

2025/04/10

人口調整は必要か?

 コロナ騒動をきっかけに、mRNAコロナワクチンの目的は人口削減ではないかとの話をよく聞くようになった。これを事実だと考えるかどうかはともかくとして、世の中には地球上の人口を減らすべきだと考えている人がいることは間違いない。現在、世界の人口は81億を超えている。産業革命以降、人口はどんどん増え続けてきた。私も、このまま人口が増えつづけるとしたなら、飢餓やエネルギー不足による死者がいずれ大量に出ることになるのではないかと危惧している。

 

 地球上の野生生物は、人のように増え続けてしまうことはない。例えば、ときどき昆虫の大発生などがある。マイマイガとかキクイムシなど大発生する種はいくつかいる。しかし、そうした大発生も天敵が増えたり餌が不足するなどして数年で収まっていく。あくまでも一時的なものだ。

 

 また、なわばりを持つ動物は、生息できる環境が増えない限り増え続けることはできない。一番(つがい)の野鳥が4羽、5羽もの雛を育てても、天敵に捕獲されるなどして全部が無事に育つわけではない。環境の悪化などで特定の種の個体数が減ったり絶滅することはあっても、増え続けるということはない。

 

 日本では北海道でも本州でもシカの数が増えてきている。畑の作物を荒らしたり、希少な植物を食べてしまったり、街中に出てきたりと問題になっているが、これもずっと増え続けることにはならない。餌や生息適地は限られているから増えるといっても限界がある。

 

 地球の生態系の中で生きている限り、際限なく増え続けるという生物はいない。ヒトも、狩猟採集生活をしていた頃は人口がどんどん増えることなどなかっただろう。むしろ、滅びてしまったことの方が多いのではなかろうか。今、生きているヒトという種は、絶滅を免れて生き延びてきたということに他ならない。

 

 しかし、ヒトは自然の生態系からはみ出して独自の文化や社会を作り出した。農耕や牧畜によって食料を生産するようになり、さらに地下に眠っていた石炭や石油を掘り出してエネルギーとして利用したり、石油からさまざまな化学製品を作り出すようになった。農耕や化石燃料によって多くの人を養えるようになり経済成長が始まった。さらに、近年は医療が発達し、乳児死亡率は大きく下がった。栄養状態も衛生状態も改善されて感染症もかなり克服し、寿命が格段に延びた。

 

 産業革命以降の人口の増加はこうしてもたらされた。これは他の動物では起こりえないことだ。ただし、農耕地にできる地球上の土地は限られている。石炭や石油なども今のところは枯渇していないものの、以前ほど豊富に採掘できなくなっているし、価格も高騰している。温室効果ガスである二酸化炭素の増加により地球温暖化も年々顕著になってきている。

 

 もし、今のまま人口が増えつづけたなら、間違いなく食料不足になるだろうし、エネルギー不足(または高騰)も顕著になるだろう。地球温暖化もさらに深刻になる。それによって、食料やエネルギーをめぐる争いや暴動が生じたり、多くの人が餓死や凍死、熱中症死しても「それは自然の摂理だから仕方ない」と割り切れるのであれば、それも人類の自業自得として受け入れるしかなかろう。

 

 しかし、そんな悲惨な大量死を防ぎたいのなら、やはり人口の調整は欠かせないと思う。もちろん、戦争で人を減らしたりとか、医薬品などを用いて今生きている人を減らしたり、不妊にすることで減らすなどということは人道的な面からあってはならない。としたら、産まれてくる子どもの数を制限するしか人口を減らす方法はない。

 

 高度経済成長も終わり、先進国ではこどもの数が減ってきていて、放っておいても人が大きく増えることはないだろう。しかし、今の81億人を維持していくというのは地球への負荷が大きすぎると私は思っている。自然エネルギーだけで持続可能な状態にするためには、もっとずっと少ない人口にしなければならないだろう。日本でいえば、江戸時代くらいの人口が適正ではないかと思っている。

 

 とすると、若い人に理解してもらって、一組の夫婦が育てる子どもの数を1~2人にしてもらい、少しずつ減らしていくしかなかろう。こんなことを言うとかつての中国の一人っ子政策を持ち出して批判されそうだ。もちろん出生数を減らせば高齢者ばかりになり、社会システムの維持が困難になるので、高齢になっても元気な人は働く必要があるだろう。経済成長などはありえない。そして、今の日本の社会もすでにそういう状態になっている。

 

 人は、目先の利便性や利益ばかりを優先するが、人が地球上に誕生した生物の一種であり、有限な地球に住む以上、人口を増やし続けるのは自滅の道を歩むことだと思っている。コロナ騒動以降、おそらく地球の人口は少しずつ減っていくだろう。ただ、食料問題、エネルギー問題、温暖化を含む環境問題は待ったなしだ。人類が環境への負荷を小さくして持続可能な社会を作れるのか、それ以前に資源が尽きたり環境が悪化して人類の大量死を招くのかはなんともわからない。

 

 いずれにしても、食料やエネルギー不足、あるいは温暖化による大量死をできる限り未然に防ぐには出生数の調整は必要だと私は考えている。

 

2025/04/09

エゾキシタヨトウ

 前翅は黒褐色を基調としているが、斑紋や色彩には変異が多く同定の悩ましい種。後翅の黄色い部分が幅広く外縁が角張っているので、本種と同定。写真の個体は前翅長17mm。ヤガ科キリガ亜科。

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2022年8月25日 北海道十勝地方

 

2025/04/08

スジキリヨトウ

 はじめのうちは同定に迷ったが、前翅の枝分かれした白い筋模様が同定のポイント。ただ、この白筋が不明瞭な個体もいる。幼虫はイネ科植物を食べるとのことで、芝の害虫とされている。前翅長は12mmくらい。ヤガ科キリガ亜科。

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2024年8月24日 北海道十勝地方

 

2025/04/07

シロスジキノコヨトウ

 自宅の壁にきたシロスジキノコヨトウ。前翅のカーブした白い条がよく目立つ。翅を閉じて止まることが多いのだが、やや翅を開いて後翅がのぞいていたところを撮影した。前翅長は15mmくらい。ヤガ科キノコヨトウ亜科。

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2024年8月1日 北海道十勝地方

 

2025/04/06

イチモジキノコヨトウ

 内横線の基部側は灰色、内横線と外横線の間が濃灰褐色という何とも地味な色合いのキノコヨトウ。外横線は大きく湾曲している。幼虫は地衣類を食べるとのこと。写真の個体の前翅長は約13mm。ヤガ科キノコヨトウ亜科。

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2024年8月4日 北海道十勝地方

 

2025/04/05

マルモンキノコヨトウ

 前翅は基部側が黒褐色、外側がやや緑がかった白色で、二色に染め分けられたような色彩のキノコヨトウ。写真の個体は前翅長9mm。ヤガ科キノコヨトウ亜科。

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2022年8月4日 北海道十勝地方

 

2025/04/04

マダラツマキリヨトウ

 モコモコの毛が生えた中脚や中ほどで湾曲する触覚など、とても特徴的な風貌のツマキリヨトウ。幼虫はシダ類を食べるそうだ。前翅長は15mmくらい。ヤガ科ツマキリヨトウ亜科。

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2024年7月31日 北海道十勝地方

 

2025/04/03

欲と悪

 私は子どもの頃、知恵ある人類はもう戦争など起こさずに平和な社会を築いていくのだろうとなんとなく思っていた。なにしろ日本は太平洋戦争で大きな痛手を受け戦争放棄を宣言したのだし、戦争がどれほど残酷で悲惨なものかは子どもだって理解できる。

 

 しかし、実際にはその後も世界のあちこちで戦争が繰り広げられている。人はいつまでたっても過去から学ばないし、残忍なことも平気でできるのだと痛感した。もちろん戦争を起こそうとする人たちは、自分だけは安全なところにいて命令をしているだけなのだけれど、残忍であることには変わらない。いったいヒトという生物の残忍さはどこからくるのだろうか? そんなことをよく考える。

 

 先日、霊長類学者の故河合雅雄氏の本「サルの目ヒトの目」(平凡社)を読み返していたら、こんなことが書いてあった。

 

 河合氏がゴリラの調査でアフリカのウガンダとコンゴに行ったときのこと。1959年に未開の数種族の人々と接したときは、どの人たちも親切で人懐こかったという。ところが、それから10年ほどたってから再訪したとき、ウガンダは治安が悪化して殺人強盗事件が多発し、身の危険を感じたというのだ。10年の間に文明国から様々な物が入り込むようになり、人々は物欲で強盗までするようになったそうだ。河合氏は、こんな風に書いている。

 

 ウガンダはもともと豊かな国である。赤道直下だけに気候は温和で、主食であるバナナは放っておいても年中実っている。100坪もの土地にバナナを植えておけば、一家は食べるのに苦労しない。パパイヤやマンゴーなどの果物も豊富にある。夜はバナナ酒を飲んで、歌って踊り、眠りにつけばいいのだ。働かなくても、食べるには事欠かない。いわば天国のような国である。
 そこへ消費文化という、文明が生んだ怪物が侵入してきた。ひとびとはたちまちのうちにその毒気に当てられ、心を蝕まれてしまった。物質欲がいつも心の飢餓感をあおり、純朴で平和な心はすっかり荒れ果ててしまったのである。

 

 文明国から持ち込まれた自動車や洋服は、それまで穏やかな暮らしをしていた人々に強烈な物欲をもたらしてしまったらしい。その物欲は簡単に「悪」へとつながっていく。この人に備わった強欲こそが、悪の根源ではないかと思えてならない。

 

 河合氏の同書では、狩猟採集民族であるピグミーやブッシュマンの社会のことにも触れていて、彼らは狩猟で獲った獲物は射ちとったものが少し優先権を持つだけで、あとは全く平等に配分するという。彼らの社会では特定のリーダーが存在せず、平等主義に貫かれていると。この平等主義はおそらくアイヌやイヌイットなどでもほぼ同じではないかと思う。

 

 また、平等なだけではなく協力的な社会でもあっただろう。例えば、家を作るときもコミュニティの人たちが協力し皆で建てただろうし、大きな動物を狩る場合も基本的にはグループで協力して行っていただろう。人が地球の生態系の中で狩猟採集民として暮らしていた頃は、人の社会は基本的に協力的で平等な社会だったに違いない。そんな平等の社会であれば、「自分だけ多く持ちたい」などということは許されないし、物欲というものも表立って出てこないのではなかろうか。また、非協力的で自分勝手な行動をしていたら、コミュニティで生きていけないだろう。だから、支配的な自己中人間は存在できない。

 

 それから、争いごともなるべく避けていたのではないかと思えてならない。なぜなら、ヒトの繁殖力は高くはない。子どもは通常一人しか産めないし、成人になるまでに何年もかかる。寿命もさほど長くないだろうから、戦いをして仲間を失ってしまうのはその民族やコミュニティの存続には大きな痛手になる。ヒトという生物は、協力的で平等で平和を重視する社会を選択したのではないかと私は想像している。

 

 しかし、やがて農耕や牧畜などを始めたことにより、「富」を手にするようになった。そして、自然の生態系から次第にはみ出してさまざまな「物」を作り出すようになった。その富をコミュニティの中で平等に分配していれば大きな問題はなかったのではないかと思う。しかし、ひとたび富を手にしてしまうと自ずと欲が出てくるのだろう。この欲こそが悪の根源ではなかろうか。ウガンダの人たちがたった10年ほどで、「欲」におぼれてしまったように、富の偏在は人々に妬みを抱かせ、悪に手を染めてしまうことになりかねない。

 

 「欲」はもちろん物欲に限らない。富を手にすると多くの人は「お金さえあればなんでもできる」と思ってしまうようだ。欲しいものがなんでも手に入るようになると、支配欲や権力欲が頭をもたげてくる。そんな物欲や支配欲が極限にまできてしまったのが現代社会なのかもしれない。利権などというのも、お金と支配の構造にほかならない。戦争も、欲と軍事産業の利権によってつくられる。

 

 現代の資本主義社会は富の偏在があまりに極端になってしまった。気の遠くなるような莫大な財産を手にしている億万長者もいれば、その日食べるものすらない人たちまでいる。そして、支配欲、権力欲が強まった人たちは、自分たちこそ社会の勝者であると勘違いし、他者を支配しようとし、その自分の目的の達成のためには、騙しでも邪魔な者の排除でも何でもやる。資本主義というのは「欲の製造システム」ではないかと思う。

 

 ここまできてしまうと、果たしてこれを正すことはできるのだろうかと思えてくる。いくら税金によって富の偏在を小さくしようとしても、富める者は富を手放さないためになんでもやるだろう。こんな社会を見ていると、ため息がでてしまう。

 

 もっとも、こんな社会であっても、物欲がさほどなく定常的な生活を送って幸福感を得ている人もいる。定常的な生活というのは、余計な消費はせずに物を使い切るという生活だ。衣類なら傷んだりよれよれになるまで着、電化製品や自動車なども修理しながら使えなくなるまで使う。無駄な消費をしなくても幸福な人はたくさんいる。しかし、消費することに慣れ、他者の目を気にする人ほど物欲が強くなる。

 

 また、物欲はさほどないのに支配欲の強い人もいる。例えば、家族や部下を自分の望み通りにさせたいような人だ。このような人は、おそらく協力的な生き方を選択せず、自分の利益を優先する生き方を選択したのだろう。いずれにしても、物欲や支配欲というのは個人の考え方で強くも弱くもなるものなのだけれど、いちど欲にはまってしまった人は、そう簡単にそこから抜け出すことはできそうにない。

 

 人が、本当に争いのない平和な社会を築いて維持していきたいのなら、やはり原点に戻って協力的で平等な社会システムへと変えていくしか道はないのではなかろうか。そういう社会では、悪へとつづく「欲」そのものが抑制されるのだろうと思う。人は、言葉でコミュニケーションできる生物だし、理性や良心、知恵も持つ。トラブルは話し合いで解決を目指すべきだし、平和に暮らしている狩猟採集民族から学ぶなら平等で協力的な社会の構築も不可能とは言い切れない。

 

 とはいうものの、ここまで酷い社会になってしまったのに、いまだに資本主義を支持し、経済成長にこだわる人が大半なのだと思うと、なんともやりきれない気持ちになる。落ちるところまで落ちないと気づかないのだろうか。

 

2025/04/01

ベニモンヨトウ

 前翅の外横線の外側に紅色の斑紋を持つヒメヨトウの一種。色彩には変異があり、写真はコントラストがかなり明瞭な個体。幼虫はタデ科植物を食べるとのこと。前翅長は10~11mm。ヤガ科ヒメヨトウ亜科。

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2024年6月28日 北海道十勝地方

 

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