知床に携帯基地局はいらない
2022年4月の観光船カズワンの事故を受けて、知床半島に携帯基地局を建設する事業が進められている。知床半島は原生的自然が残されている数少ない場所で、世界自然遺産にもなっている。半島の中ほどから先端部にかけては道もなく、人も住んでいない。このようなところに携帯基地局を建設する意味が分からない。
2024年5月16日付の北海道新聞の記事によると、「国土交通省はカズワン事故後、小型旅客船に義務付ける通信手段を無線や衛星電話とし、携帯電話は除外している」としている。実際にカズワンでは無線が故障していて連絡が取れない状態になっていた。無線や衛星電話が使えるのなら、携帯電話は必要ない。
携帯電話基地局は電源が必要だが、知床半島の先端部では太陽光パネル264枚を並べて電源を確保する計画だという。太陽光パネルによる自然破壊は日本全国で大きな問題になっている。無線や衛星電話で対応できるにも関わらず、大規模な自然破壊をし、税金を投入して携帯基地局を建設する必要性があるとは到底思えない。
しかも、太陽光パネルは火災になっても発電を続けるために、火災が発生した場合は大規模な山火事に発展しかねない。そんな危険なものを道路もない場所に建設し、もし火災が発生したら知床の原生的自然に大きなダメージを与えるばかりか、消火活動もままならないだろう。
国は、何かというと「人命」を持ち出すが、「人命」を持ち出せば自然破壊も許されるという考え自体が傲慢だ。カズワンの事故は、荒天が予想され注意喚起があったにも関わらず出航したこと、無線が故障していたことの他、船のハッチの蓋の不具合が原因で浸水して沈没した可能性が指摘されている。判断の甘さと船の整備不良の問題であり、携帯電話が繋がらないという以前の問題だ。そのようなことを改善すればいいだけの話が、なぜ携帯電話基地局の建設にまでなってしまうのか?
この計画に当たっては、日本自然保護協会、北海道自然保護協会などの自然保護団体が反対を表明しているが、地元の斜里町も先端部の工事は当面見合わせるように国に求める方針だという。
太陽光パネルに関しては、建設予定地近くにオジロワシが営巣している可能性があるとして現在は着工を見合わせているとのことだが、太陽光パネルはもちろんのこと、この事業そのものを中止すべきだと思う。
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