スジモクメシャチホコ
茶色の地味なシャチホコガだが、前翅の中央部は帯状に淡色になっている。幼虫はハルニレやオヒョウを食べる。写真の個体は前翅長21mm。シャチホコガ科。
2023年7月27日 北海道十勝地方
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茶色の地味なシャチホコガだが、前翅の中央部は帯状に淡色になっている。幼虫はハルニレやオヒョウを食べる。写真の個体は前翅長21mm。シャチホコガ科。
2023年7月27日 北海道十勝地方
日高山脈襟裳国定公園が国立公園に昇格するにあたり、環境省の中央環境審議会自然環境部会で環境省が「日高山脈襟裳十勝国立公園」とする案を提示し、それが了承されたことはこちらの記事で触れた。
この名称の件、どう考えても「十勝」を入れるのは筋違いであり、意味不明だ。地元自治体の首長らが名称に「十勝」を入れるように動いていたのは事実だが、私は環境省がそんな名称を真に受けて審議会に提案するとは思ってもいなかった。まともな思考ができるなら、「十勝」を入れるなどという発想には到底ならない。なんでこんなことになるのか?
環境省によると、名称の決め方に規則はないという。しかし、実際には基準といえるものがあり、複数の地名を入れる場合は国立公園として相応しい自然がある地域の名称を使用している。例えば、利尻礼文サロベツ国立公園は利尻礼文国定公園が国立公園に昇格する際にサロベツ湿原を加えたためにこのような名称になった。富士箱根伊豆国立公園は、富士箱根国立公園に伊豆半島も加えた際に名称に伊豆を入れた。
秩父多摩甲斐国立公園の場合はやや異なるのだが、「公園区域の主要部分を占める都道府県の旧国名を使用。面積僅少の長野側は名称に用いられず。」とされている(国立公園の名称と当該名称による公園地域の代表性)。奥秩父を中心として東京、山梨、埼玉、長野の一都三県にまたがる国立公園だが、多摩(東京)、秩父(埼玉)は公園の名称に入っているものの、最大の面積を有する山梨県の名称が冠されていないことが「甲斐」を加えた理由であり、こうした経緯に特に問題は感じない。
しかし「十勝」は1市16町2村で構成される広域行政区の名称であり、大部分が農地などになっていて国立公園に相応しい自然が残されているわけではない。「日高山脈」や「襟裳」は公園地域を代表した地名だが、「十勝」は公園地域を代表する地名とは到底言えない。それにも関わらず、なぜ環境省は審議会で前例のない広域の地域名である「十勝」を加えた名称を提案したのか?
「財界さっぽろ」という雑誌の2024年4月号にそれにまつわる興味深い記事が掲載された。タイトルは「名称に『十勝』がなんで入っちゃったの!?」というもの。環境省は国立公園の範囲拡大で地権者との調整に難航していたのだが、参議院議員である長谷川岳氏が地権者との交渉を取り持ち、名称に関しても関与したという話があるらしい。
これが事実だとすると、環境省は長谷川氏に恩があるということになる。その見返りとして名称についての要望を聞き入れた・・・ということであるのなら、環境省が「十勝」を入れた名称を提案したことも説明がつく。しかし、それが事実なら政治家との癒着、あるいは忖度と言われても仕方ないし、あってはならないことだ。
長谷川岳氏といえば、最近こんなニュースがある。どうやら彼はパワハラ気質らしい。
〈CAに横柄な態度と吉幾三が暴露〉永田町や地元でも被害者続出…「派手なイベント好きでチャラい印象」「官僚へのイチャモンは日常茶飯事」自民・長谷川岳氏の散々な評判
長谷川氏と環境省との間に何かあったのか知らないが、もしかしたら名称のことで環境省に圧力をかけた可能性もあるのではないかと妄想してしまう。
国立公園の名称に「十勝」を入れるという件は、あまりに意味不明で前例のないものであることは間違いない。北海道自然保護連合はこの問題で環境省に質問書を提出したが、この質問書を読めば今回の名称の決め方がいかに不公正で不可解なものかが分かる。
中央環境審議会自然環境部会に関する環境省の回答に対し質問書を送付
和名の通り、木目のような斑紋をした樺色のシャチホコガ。前翅の外縁は黒く縁どられ、内側に淡色の線がある。幼虫はサクラ類やズミなどバラ科植物を食べる。前翅長は30mmほど。シャチホコガ科。
2022年7月30日 北海道十勝地方
褐色、赤褐色、黒色が複雑で派手な斑紋を織りなし、目を引くシャチホコガ。初めて見たときは、その奇異な斑紋にちょっと興奮した。幼虫は広食性で、カバノキ科やクルミ科の樹木やシナノキなどの葉を食べる。前翅長は20mm前後。シャチホコガ科。
2023年7月24日 北海道十勝地方
茶色に黒いラインの入るシャチホコガだが、前翅の外縁が白っぽくなっていてよく目立つ。幼虫の食餌󠄀植物はカエデ類。前翅長約20mm。シャチホコガ科。
2022年7月8日 北海道十勝地方
全体的に茶色いが、前翅の基部に銀色の斑が並ぶシャチホコガ。写真では斑紋は白くなってしまうが、実際には銀色をしている。幼虫の食餌󠄀植物はニレ科のハルニレやオヒョウなど。前翅長は20mm前後。シャチホコガ科。
2022年7月24日 北海道十勝地方
純白の翅に「く」の字型をした橙褐色の斑紋が映える美しいシャチホコガ。幼虫の食餌󠄀植物はカバノキ科のシラカンバ、ダケカンバ、バラ科のナナカマド、アズキナシなど。前翅長は16mmほど。シャチホコガ科。
2022年6月28日 北海道十勝地方
全体的に茶色のシャチホコガ。エグリシャシホコの仲間は同定が難しい。本種はエグリシャシホコに似るが、エゾエグリシャチホコは外横線の外側の白線が翅頂に達するのに対し、エグリシャシホコは前縁に達する。ということで、写真のものはエゾエグリシャチホコと同定。幼虫は広食性で、ブナ科、アオイ科(シナノキ)、バラ科、ムクロジ科(トチノキ)などの植物を食べる。写真の個体は前翅長25mm。シャチホコガ科。
2021年8月5日 北海道十勝地方
全体的に茶色だが、二本の横線の間とそれ以外では色調がやや異なる。幼虫はヤナギ科のヤマナラシを食べるとされているが、同じポプラ属のドロノキは食べないのだろうか。前翅長は約15mm。シャチホコガ科。
2022年7月6日 北海道十勝地方
前翅に黒褐色の三角形の斑紋があり、胸部背面は栗色の毛が生える。色彩に変異があるが、斑紋が特徴的で見分けやすい。幼虫はヤナギ科の植物を食べる。写真の個体は前翅長15mm。シャチホコガ科。
2022年7月21日 北海道十勝地方
枯葉のような色彩をしたシャチホコガで、雄は止まったときに腹端が翅からはみ出すが、雌ははみ出ない。幼虫はヤナギ科の植物を食べる。写真の個体は前翅長約13mm。シャチホコガ科。
雄 2022年8月5日 北海道十勝地方
ツマアカシャチホコに似るが、前翅の赤褐色斑の内側にある白線が太く明瞭で、後縁近くに黒紋がない。幼虫はヤナギ類を食べる。前翅長は15mm前後。シャチホコガ科。
2022年8月6日 北海道十勝地方
シャチホコガの中では小型の種で、前翅の翅頂近くに赤褐色斑があり、後縁の近くには黒紋がある。似た種にニセツマアカシャチホコがいるが、ニセは黒紋がない。腹部先端を上に反らせて止まる。幼虫はヤナギ類を食べる。前翅長15mm。シャチホコガ科。
2022年6月27日 北海道十勝地方
今日は、少しずつ描いているクモの標本画(ケント紙に色鉛筆)のうち、原始的なクモ類の絵を紹介したい。といっても北海道在住の私はエゾトタテグモの他はキシノウエトタテグモとジグモしか標本を持ち合わせていないので、この3種のみ。いずれも地面に穴を掘って潜む。
【エゾトタテグモ】
上が雌、下が雄。カネコトタテグモ科。北海道の固有種。両開きの扉を持つ穴を地面に掘って日中は中に潜んでいるために人目につくことは少ないが、森林地帯を中心に低地から高山まで広く分布している。ピットフォールトラップには雄がよくかかるので、雄は夜間にかなり徘徊しているものと思われる。体長は雌が12~18mm、雄が10~14mm。
【キシノウエトタテグモ】
トタテグモ科。本州、四国、九州に分布。崖地などに片開きの扉をつけた横穴を掘り、中に潜む。腹部に淡色の縞模様があるのが特徴。体長は雌が10~15mm、雄が9~15mm。
【ジグモ】
ジグモ科。本州、四国、九州に分布。北海道では道南で記録があるが、人為的分布の可能性がある。樹木の根元などに穴を掘って糸で裏打ちした袋状の住居をつくるが、袋状の住居の上部は地上に出ており木の根元や塀などに付着させている。餌となる昆虫や小動物が袋部分に触れると、クモは袋越しに獲物に噛みつき住居の中に引きずり込んで食べる。体長は雌が12~20mm、雄が10~17mm。
小型のナミシャクで、下唇鬚が非常に長い。全体に茶色っぽいが、緑色を帯びた横帯がある。もっとも色彩はかなり個体変異があるようだ。幼虫はツツジやヒサカキなどの蕾や花を食べる。前翅長は約10mm。シャクガ科。
2022年9月21日 北海道十勝地方
緑色の翅を持つ小型のナミシャクだが、緑色が退色していることもある。翅には黒い横線が入り、前翅の前縁に近いところは太くなる。幼虫は広食性のようだ。前翅長は9mm前後。シャクガ科。
2023年7月24日 北海道十勝地方
小型のナミシャクでナカアオナミシャクに似ているというが、北海道にはナカアオナミシャクは分布しない。胸部と腹部は白く、腹部には褐色の独特の斑紋がある。写真の個体は前翅長9mm。シャクガ科。
2023年7月27日 北海道十勝地方
前翅の外縁の中ほどに白い斑紋があるが、あまり目立たない個体もある。また、色彩の変異が大きい。前翅長は約11mm。シャクガ科。
2022年8月25日 北海道十勝地方
2022年8月25日 北海道十勝地方
日高山脈襟裳国定公園が国立公園に昇格することになった。昇格にあたって面積が倍以上になる。この国立公園の名称について、2月22日に開催された環境省の中央環境審議会自然環境部会は「日高山脈襟裳十勝国立公園」とする環境省の原案を了承した。まだ確定ではないが、5月に予定されている審議会の答申を経て6月には確定する予定になっている。
この国立公園は日高山脈一帯を指定区域とし、南は襟裳まで伸びている。日高山脈は「十勝」と「日高」にまたがる山脈で、稜線の東側が十勝管内、西側が日高管内になる。また襟裳は日高管内に含まれる。
「十勝」は1市16町2村で構成される広域行政区の名称で、広大な地域を指す。この広大な地域のうち、この国立公園に含まれる「十勝」部分は山脈の東側と襟裳から続く広尾町のごく一部の海岸しかない。そして日高山脈の東側は「日高山脈」という固有名詞に内包されている。これら以外に「十勝」に含まれる地域はない。
日高山脈以外に「十勝」はほぼないわけで、この国立公園の名称に「十勝」を加える意味も理由も見いだせない。なぜこんなことになっているのかというと、「十勝」を入れるか入れないかについて複数の団体が要望をしてきたという経緯がある。
名称に「十勝」を入れることを要望してきたのは、十勝圏活性化推進期成会、日高町村会、十勝・日高地方の13市町村の首長だ。
他方で「十勝」を入れないように要望してきたのは十勝自然保護協会、北海道自然保護連合、北海道自然保護協会、北海道勤労者山岳連盟、日高町村議会議長会。
さらに、環境省が実施したパブリックコメントでは名称について14件の意見があり、いずれも「十勝を入れない」という意見だった。
このように意見が分かれる中で、環境省は中央環境審議会自然環境部会において、地元自治体の要望を尊重するとして「日高山脈襟裳十勝国立公園」という原案を提示した。しかも、この審議会にはオブザーバーとして地元自治体の二人が参加し、意見まで述べた。また委員には関係市町村の要望書のみが配布され、自然保護団体などからの要望書は配布されなかった。委員からは「十勝」を入れることに反対する意見も述べられたが、最終的に多数決で環境省の原案が了承される形になった。つまり、賛否両論がある中で「十勝」を入れる原案に誘導するような議事進行がなされたというのが実態だ。しかも、パブリックコメントで出された意見は反映されることもなかった。
環境省は、地元自治体の要望を尊重したいというが、「地元自治体の首長の意見=地元の人たちの意見」ではない。それに、国立公園なのだから、道民はもとより国民の意見を尊重するべきではないか。なぜ地元首長の意見を尊重するのかさっぱり分からない。
「十勝」を入れるように要望していた地元自治体の首長の目的が何かといえば、「十勝」の知名度を高めて観光につなげたい、ということでしかない。しかし、名称に十勝を入れることで観光客が増えるとはとても思えないし、そもそもそんな発想自体が「卑しい」と思えてならない。そんな自分勝手な首長らの意見をそのまま原案に取り入れてしまう環境省も見識が問われる。
国立公園の名称はその地域を端的に表すものであるべきだし、短い名称に越したことはない。観光客にとっても短い方が覚えやすいし分かりやすい。むしろ、実態に合わない「十勝」を加えることで、多くの人が混乱するだろう。
はっきり言っておきたい。意味不明の「十勝」を入れた名称など迷惑だ。みっともないし、恥でしかない。
なお、十勝自然保護協会は今回の審議会の進行が極めて公平性を欠くものであったとして、環境省に質問および要望書を提出し、再審議を求めている。
日高山脈襟裳国定公園の国立公園化に伴う名称について環境省に質問および要望書を送付
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