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2023/02/10

十勝川水系河川整備計画[変更](原案)への意見書

 北海道開発局帯広開発建設部は「十勝川水系河川整備計画[変更](原案)」について意見募集をしており、今日がその締切日。ということで、意見書を書いて提出した。この十勝川水系河川整備計画に関しては、2009年および2013年にも意見募集をしており私はどちらにも意見を提出している。おそらく意見は名前などの個人情報を伏せた上でホームページに公開されると思うが、私の意見をここに公開しておきたい。

 

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【意見要旨】
 十勝川下流部の動植物確認種にイソコモリグモが欠落しています。
 老朽化したダムのかさ上げは安全性や費用面でデメリットがある上に洪水調整機能は限定的です。かさ上げより事前放流を重視すべきです。
 ダムや堤防に頼る治水から、想定外の洪水を容認したうえで被害を最小限にする対策へと転換を図るべきです。
 札内川の砂礫川原の減少は札内川ダムが原因であることを明記し、復元は困難であることを認めるべきです。

 

【意見】
1-2-2(3)54ページ イソコモリグモの欠落について
 私は2009年の十勝川水系河川整備計画(原案)に対する意見書で、十勝川下流部の動植物確認種に国が絶滅危惧種(絶滅危惧Ⅱ類)に指定しているイソコモリグモが欠落していることを指摘しましたが、今回の「十勝川下流部における動植物確認種」においてもイソコモリグモが入っていません。なお十勝川河口部におけるイソコモリグモの分布については以下で報告しています。追加するよう求めます。
松田まゆみ・川辺百樹 2014.北海道におけるイソコモリグモの分布.Kishidaia, 103:18-34.

 

2-1-1(1)81ページ ダムのかさ上げについて
 洪水時の流量を調整するための対策として「ダムの嵩上げ」を提案しています。糠平ダムのかさ上げの方針については新聞でも報じられていますが、老朽化したダムのかさ上げは安全性の懸念があり巨額の費用がかかりますが、洪水調整機能は限定的です。上流域に降った雨をダムで貯めたとしても、中流域や下流域が増水していれば安易に放流できません。ダムが満水になっても放流ができなければ決壊の危険性が高まります。2011年9月7日に音更町で音更川の堤防が大きくえぐられ決壊寸前になりました。この時の音更川の水位は「危険水位」まで約1メートルの余裕がありました。それにも関わらず堤防が洗堀されたのは、糠平ダムからの放流が鉄砲水となって堤防をえぐったことが原因と考えられます。このように、河川の水位が低くてもダムの放流によって堤防が決壊する危険性があります。また、ダムのかさ上げによって雨水を溜め込む量が増えるほど、放流が必要になったときの放流のタイミングや放流量の調整は難しくなり放流によって洪水被害が生じることが懸念されます。
 多額の費用をかけてかさ上げをしても想定外の降雨による放流時のリスクが大きいのであれば適切な対策とは言えません。ダムで洪水調整をする場合は、かさ上げをしてもしなくても水位を低くしておく必要があり、かさ上げより事前放流による対応を重視すべきです。
 また、ダムは魚類の遡上の阻害、堆砂による貯水量の低下、土砂の流下を妨げることによる海岸線の後退、河床の低下、砂礫川原の消失、決壊の危険性などさまざまな弊害やリスクがあります。堤体のコンクリートの劣化や堆砂による貯水量の低下を考えるなら、ダムの寿命や撤去を視野にいれなければなりません。決壊する確率は低いとしても万一決壊した場合の被害は極めて甚大なものになります。例えば、糠平ダムの上流には活火山の丸山がありますが、もし火山噴火によってダム湖に融雪型火山泥流が流れこんだ場合はダムが決壊する可能性が否定できません。ダムによる治水を唱えるのであれば、ダムの弊害やリスクも明記すべきです。欧米ではダムの撤去が進んでいます。ダムを撤去することで本来の自然の河川を取り戻す試みがなされている中で、ダムのかさ上げによって老朽化したダムの延命を図ることはダムの弊害やリスクを放置することになり、自然復元にも相反する行為です。

 

2-1-1(4)100ページ ダムや堤防以外の対策について
 本整備計画ではダムのかさ上げによる流量調節や堤防の強化、河道の掘削など、ハード面での対策がメインとなっていますが、このようなダム湖や川(堤防と堤防の間)に水を閉じ込める治水には限界があり、閉じ込める水量が多くなるほど、ダムの放流や決壊時、あるいは堤防の決壊時の被害は大きくなります。近年は気候変動による台風の大型化や集中豪雨で想定以上の雨が降る可能性があり、ダムや堤防に頼る対策から、一定以上の雨に対しては「水を溢れされる治水」に変えていく必要があります。これについては、100~101ページにかけて若干触れられていますが、不十分と言わざるを得ません。具体的には、森林を増やすことで「緑のダム」機能を活かす、住宅地の少ない地域に遊水地を設けて溢れた水を誘導する、支流との合流点のような氾濫しやすい場所は危険地域に指定し住居の移転を促進する、高床式住宅を普及させる、洪水の危険がある地域にすむ人々の速やかな避難体制を確立する、などが考えられます。これらの対策は河川管理者だけで対応できることではありませんが、関係機関と協議・連携して積極的に進めていく必要があります。
 日本はこれから急激な人口減少社会になります。多額の税金を投入するハード面での対策より、想定外の洪水を容認したうえで被害を最小限にするような対策へと舵を切る発想の転換が必要と考えます。

 

2-1-3(3)109ページ 札内川の砂礫川原復元について
 ここでは河川景観の保全と創出について取り上げています。十勝川水系の河川の自然景観は本来の河川環境を保全することでしか維持できません。例えば札内川では河川敷にヤナギなどの河畔林が繁茂し、ケショウヤナギが生育するような砂礫川原が減少してしまいました。これは上流に札内川ダムを建設したことで砂礫の流下が阻害されたことと、札内川ダムの貯水機能によって流量が抑制され洪水が生じにくくなったことに起因します。ところが本計画案では砂礫川原減少の原因となった札内川ダムのことに一切触れていません。そして中規模フラッシュ放流が砂礫川原の創出に効果を上げているとしています。ダム建設前と現在の写真を比べても中規模フラッシュ放流の効果は限定的のようですし、ダムによって砂礫の流下が妨げられている以上、中規模フラッシュ放流だけで砂礫川原を維持していくことはできないでしょう。また、礫層が流されてしまうと河床低下が進み、増水のたびに流路に面した高水敷の縁が浸食されて崩壊し、高水敷に堆積している砂礫も流されますし、高水敷に生育しているヤナギも根本から浸食を受けて流木となります。仮にダンプなどで定期的に砂礫を運んできたところで次第に下流に流されますので、永遠に運び続けなければなりません。持続可能な自然復元とは言い難い事業です。
 砂礫川原減少の原因に触れることなく人為的操作によって砂礫川原を「創出する」などというのは「人が自然を創出できる」という驕りによる発想です。「創出」ではなく「復元」と記すべきですが、それ以前にダムが原因であることを明記した上で、復元は困難であることを認めるべきでしょう。
 私はこのことについて2013年の「十勝川水系河川整備計画[変更](原案)に対する意見書」で指摘し公聴会で意見を述べました。十勝自然保護協会も同様の意見を提出し公聴会でも陳述しました。しかし今回の計画案には全く反映されていません。ダムによって砂礫川原が減少したこと、その復元はダムの撤去を除いては極めて困難なことを明記するよう再度求めます。

 

意見の要旨について
 十勝川水系河川整備計画[変更](原案)への意見ではありませんが、意見募集に関して意見を述べさせていただきます。ホームページの「意見募集要領」の「注意事項」によると、意見書が200字以上の場合は200字以内の要旨を付ける旨が書かれています。しかし、意見書の様式には「※上記の記入欄が不足する場合は、本意見書と併せて別紙で提出して下さい。」と書かれており、要旨のことは書かれていません。これでは200字以上であっても「要旨」を付ける人と付けない人が出てくるでしょう。このような一貫性のない対応は不適切です。また、多数の意見がある場合は200字以内に収めるのは困難または不可能ですし、要旨では理由や根拠が伝わりません。意見を公表することがあるとのことですが、長い意見の場合は要旨を公表するということであれば具体的意見が伝わらず不本意です。要旨ではなく意見全文を掲載するよう求めます。

 

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