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2019/04/21

消費税議論で考えてほしいこと

 山本太郎氏が消費税の減税や廃止を掲げて「れいわ新選組」を立ち上げた。それによって消費税減税に賛成する声が広がっているのだが、この主張に乗ってしまうのはとても危険だと思う。以下はこの問題に関する4月19日の私の連続ツイート。

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日本の多くの人は、消費税はすごく高いけれど教育や医療が無償とか福祉や社会保障が行き届いている北欧などの国は羨ましいし手本にすべきだと思っているのではなかろうか。社会保障が充実していれば貯蓄がなくても安心して暮らせるし、消費税が高くても納得できるというものだろう。

国民が手厚い社会保障を求めるなら、税金はどうしても高くならざるを得ない。とりわけ日本は少子高齢化で多額の社会保障費が必要なのだから、健全財政を維持し、かつ社会保障の質を落とさないためにはどうしても高額の税が必要になる。税金は払いたくないけど社会保障は充実しろというのは矛盾する。

ただ、今の政権で消費税増税に賛成できないというのももちろん当然だと思う。何しろ、生活保護や障害年金などは削減される一方だし、保育園や特別養護老人ホームの待機者問題も一向に改善されない。年金の納付額は増え続けてきたのに、支給年齢は引き上げて支給額を減らそうとしている。

高齢者の医療費の無償もなくなった。介護保険の認定も厳しくなる一方で、十分な支援が受けられない。賃金は上がらずブラック企業がはびこり過労死が後を絶たない。鬱になる人や自殺も多い。働いても働いても生活が苦しい人たちが大勢いる。消費税が上げられてきたのに、現状は悪くなる一方なのだから。

その一方でトランプ大統領の言いなりになって高額の武器を買い込み、沖縄県民の声を無視し自然を破壊して辺野古を埋め立て、無駄としか思えない大型公共事業も相変わらず。首相は頻繁に税金で外遊をし海外にお金をばらまく。不正も何のその。こんな政権に消費税を取られるのは誰もが納得しない。

しかもアベノミクスは大失敗。国債は増え続けてプライマリーバランスは大赤字。下手をすれば財政破綻になりかねない危機的状況にある。つまり消費税そのものが悪いのではなく、お金の分配に問題があるのだ。賃金が低すぎたり労働環境が悪すぎることも大問題だし、政権の腐敗や独裁体質が問題なのだ。

だから消費税は据え置きで争点にすべきではない。野党はアベノミクスの失敗こそ争点にし、それを元に今後財政をどのように立て直していくのか、どうやって格差を縮めるのかを示すべきだ。もちろん足りない財源を国債に頼るのは、アベノミクスの失敗から何も学ばないということに他ならない。

いずれにしても今の状況を一気に大きく変えることはできないと思うし、政府が信頼を取り戻す努力をした上で少しずつ改善していくしかないだろう。アベノミクス失敗のツケは必ず国民に降りかかってくる。国債に頼り続けたなら財政破綻という最悪の事態になりかねない。そのことは肝に銘じるべきだろう。

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 このツイートをしたら、いくつかの反論がきた。一つは法人税を上げればいいというもの。大企業や富裕層への課税強化はもちろん否定はしない。しかし、それだけで税収が安定するかといえばそんな単純な話ではない。

 所得税や法人税は海外に資産を移すなどして課税逃れができる。大企業や富裕層ほどそのような方法で課税を逃れるのは目に見えている。また、所得税や法人税は基本的に経済状況に応じて上下する。日本はすでに低成長時代に入っているのだから、税収の大きな増加は見込めない。さらに、企業が赤字になれば赤字分を繰り越し、その後黒字になったときに相殺するという繰越欠損金という仕組みがあり、これによって法人税を逃れることもできる。所得税や法人税の増税だけでは今の日本の税収を大きく改善することはできないだろう。この点に関しては、明石順平氏の「データが語る日本財政の未来」を読んでいただきたい。欧州の多くの国が高い消費税を採用しているのも、安定的な税収であるという理由がある。

 もう一つは、国債を発行して財源にすればいいという意見。安倍政権はアベノミクスのもとにこれをやってきたが大失敗をしたわけで、さらに続けるというのはアベノミクスの失敗から何も学ばないしリスクを増大させるだけだろう。このような主張をされる方は、以下をお読みいただきたい。

そして預金は切り捨てられた 戦後日本の債務調整の悲惨な現実

 ここから一部引用しておきたい。

これらの事実から明らかになるのは、国債が国として負った借金である以上、国内でその大部分を引き受けているケースにおいて、財政運営が行き詰まった場合の最後の調整の痛みは、間違いなく国民に及ぶ、という点である。一国が債務残高の規模を永遠に増やし続けることはできない。「国債の大部分を国内で消化できていれば大丈夫」では決してないのだ。

 国債をどんどん増やした挙句、財政運営に行き詰まってしまったら、富裕層だけではなく国民全体にそのツケが回る。アベノミクスの失敗で日本はまさに財政運営に行き詰まりつつあり、このまま国債に頼り続けたなら戦後の財政破綻のときより酷いことになりかねない。国債、国債と言う人たちはあまりにも安易であり無責任だと思う。

 

 

 

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コメント

まず、財政出動と金融緩和を混同されていませんか?

現在行われている「アベノミクス」は異次元緩和一辺倒のもはや当初のアベノミクスではない何かです。そしてこれが「アベノミクス」失敗の根源であるわけです。
「アベノミクス」=放漫財政というように思われているかもしれませんが、2014年以降は第二の矢つまり財政出動が抑えられています。これが問題なのです。

そして財政破綻云々とあなたは仰いますが、通貨発行権を有し、そして国債は100%自国建てという状態でどうして財政破綻が起きましょうか?

財政出動と金融緩和の違いくらいは分かっています。MMT支持者の方とは根本的なところで考え方が異なり平行線にしかならないことをツイッターでのやりとりで実感していますので、議論はしません。あなたの自説はどうぞご自分のブログなりSNSで発信なさってください。

異次元の金融緩和によって財政破綻にまで追い込まれるかどうかはわかりませんが、将来にツケを回すのは確実でしょう。この記事の最後に河村小百合さんの記事を引用しましたが、同じく河村小百合さんの著書「中央銀行は持ちこたえられるか」の一文を以下に紹介しておきます。

「日本は貯蓄率が高く、国債のほとんどを国内で保有しているから、財政運営が危なくなるようなことはない」という見方を聞くことがあります。しかしながら、実際にはそれはあくまでも日本政府自身が健全な財政運営に努め、それを市場に評価し、信用してもらい、リーズナブルな低い金利で国債を発行し、財政運営を回すことができている限りにおいて、の話です。
 放漫財政で借金を増やし続け、市場金利が上昇する、もしくは今の日本の状況に照らせば、「事実上の財政ファイナンス」を行い、巨額の国債を買い入れ続けている日銀の金融政策運営が行き詰まることをきっかけに、政府の財政運営が回らなくなったとき、わが国はギリシャがとったような手は使えません。急激な債務調整の負担は、すべて私たち国民に向かってくることになるのです。

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