「えりもの森裁判」差戻し審の争点
12月15日、「えりもの森裁判」差戻し審の第4回口頭弁論が開かれた。
5月15日に差戻し審の第1回口頭弁論が開かれて以降、原告は現地での調査と林班図を基に、過剰な伐採および伐区の外での伐採(越境伐採)があったことを主張してきた。
今回は、原告のこれらの主張に対し、被告である北海道が反論書面を提出した。
被告側の主張のポイントは、以下である。
1.過剰伐採について
発注者においては、伐採木の増加は事業費の増加を伴うものであり、不必要な発注から得るものはなく、受注者においても受注した対象を超えて伐採を行うことは単なる業務増となり負の影響しか生じない。
地ごしらえで伐採した立木は、枯損木、かん木、著しい腐朽木など一般的に利用価値のない立木(受光を確保するため伐採を必要とするものの伐採・搬出頭の事業費が市場価格を上回る負価材を含む。)のほか、植栽の障害(植栽・保育管理の障害や労働安全上の危険性を高めるもの)である不用木であり、植栽に必要な措置として伐採したものであったと推定するのが最も合理的である。
本件受光伐及び本件地拵えの効果により森林の価値や機能が増進している(これに関しては伐採2年後である平成19年10月26日の写真と平成27年6月11日の写真を証拠として提出している)。
2.越境伐採について
平成13年10月から11月頃までの間に、当時センター職員により行われた収穫調査において、43小班の区域に含まれている北側の天然林の部分の状況を現地において確認し、調査終了後、基本図の正確性を期すため、基本頭上の43小班の形状を現地に合うよう修正した。平成18年の10小班における植栽に伴い、10小班を44小班に名称変更したことの他は修正等は行っていない。
現時点にあたっては、本件受光伐は本件地拵え等の実施に伴う現状の確認に伴い修正が必要となっているが、本件訴訟が確定するまでの間は基本図の修正を保留し、修正は一切行っていない。
次回は被告の主張に対して、原告が反論をする。
以下は被告の準備書面を受けての私の感想である。
過剰伐採に関しては、過剰に伐採したものについてはすべて財産的価値がない木であるとの前提のもとに、不必要な伐採は事業費や業務費がマイナスになるという主張だ。しかし、ナンバーテープのつけられた販売木のほかに、木材として商品価値のあるナンバーテープのない木も伐採して販売したなら、マイナスにはならないだろう。販売木以外に、財産的価値のある木を伐ったか否かが重要なポイントだ。
また、伐採後2年目の紅葉の時期の現場写真と、伐採後10年目の草本が茂る6月の現場写真を並べて、森林の価値や機能が増進していると主張しているが、このような比較はナンセンスとしか思えない。そもそも、うっそうと生い茂っていた天然林が皆伐と植栽によってトドマツ幼木の造林地になってしまったのだ。これによって、森林の価値も機能も大きく低下してしまった。もともとは針葉樹と広葉樹が混在する多様性の高い天然林であったことから目を逸らし、植栽後の様子を比べて森林の価値や機能が増進しているというのは目くらましというべきではなかろうか。
被告は「受光伐においては、本件売買契約1により、受光の確保のために伐採を必要とする立木及び当該立木を伐採するために支障となる立木について、抜き伐りして売買し、本件請負契約1の地拵えにおいては、その他の植栽の障害となる不用木等を伐採し、寄せ幅に残地することとした」としている。そうであれば天然林で「抜き伐り」を行ったあと、植樹のために支障木や不用木を伐採したら皆伐になり、皆伐したところに苗木を植えて人工林を造ったことになる。このように天然林を人工林に変える施業は拡大造林という。拡大造林を「受光伐」と称すること自体が欺瞞である。
越境伐採に関しては「現状に合わせて基本図を変える予定であるから越境ではない」という主張である。しかし、森林は基本図によって管理されているのであり、基本図に合わせて施業しなければならない。基本図と実態が合っていないという理由で、基本図の境界からはみ出して施業してもいいという論理は首をかしげるばかりである。被告の主張するように基本図と実態が合っていないのであれば、これまで基本図を無視した施業が行われてきたということになる。基本図無視という杜撰な実態を棚に上げ、実態に合わせて基本図を変えてしまうなどというのはあまりに無茶苦茶である。こんな話しは聞いたことがない。
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