フェロニッケルスラグ微粉末の有害性をめぐって(追記あり)
(株)日向製錬所と(有)サンアイが黒木睦子さんを訴えた裁判では、黒木さんがフェロニッケルスラグ(グリーンサンド)を「有害なゴミ」と書いたことが真実であるか否かが大きな争点になっていた。
有害性に関することで黒木さんがブログに書いていたのは2点。ひとつは、造成工事の際にフェロニッケルスラグの粉塵が黒木さんの実家まで飛んできて咳がでるようになったということ。これは粉じんを吸引したことによる健康被害という主張だ。もう一つは、造成地の斜面の最下部にある沈殿池の水から基準値を大幅に超える重金属が検出されたということ。黒木さんは、スラグからしみ出た水が重金属で汚染されており、その水が川に垂れ流しになっていること、さらにその水が水田にも使われていると主張していた。この発言から、黒木さんはスラグから有害物質が溶け出ていると考えていることがわかる。
なお、沈殿池の水から有害物質が検出された件については、「黒木さんの水質検査で確認された有害物質は何に起因するのか?」および「黒木さんの水質検査で確認された有害物質は何に起因するのか? その2」を参照していただきたい。
こうした流れから、有害性に関する争点は「粉じんによる咳」と「スラグから重金属が溶出するか否か」になる。ところが、この裁判がはじまってからツイッターで、フェロニッケルスラグに含まれるシリカ粉じんが発がん性物質であるから、それを主張すればスラグの有害性の立証になるという主張をする人が出てきた。この裁判の情報をチェックしている人ならすぐにピンとくると思うが、現在のツイッターアカウントでいうと、@honest_kuroki さんだ。さらに、黒木さんの裁判に関心をもってブログ記事を書いてきた香取ヒロシ@EG_Hiroshiさんも同じ主張をしている。お二人の主張は以下のようなものだ。
フェロニッケルスラグ(グリーンサンド)の主成分はシリカ「SiO2」で、46~58%である。そして世界保健機関(WHO)の下部組織である国際がん研究機関(IARC)は石英結晶(シリカ)を「ヒトに対する発がん性が認められる」物質に指定している。また、多量のシリカ粉じんの吸引は珪肺の原因にもなる。黒木さんの裁判で裁判長は「有害であることを証明しなさい」と言っているのだから、裁判でこの主張をすれば有害性の立証になる。香取さんの主張は以下の記事に詳しい。
【追記あり】池の水は争点じゃない。衝撃の発がん性物質。
知っとこう・見据えとこう。尋問らしからぬ尋問。
司法にもとる裁量。そして今後のこと。
ただし、私はこの件については重視していなかった。なぜなら黒木さんはそういう指摘をしていなかったし、シリカの危険物指定は労働者が長期間にわたって微粉末を吸いこんだときのはなしであり、造成は一時的な飛散だからだ。
香取さんとツイッターでこのことに関する議論をしているとき、「だぶ」@fluor_doublet さんが、スラグに含まれるシリカは石英結晶ではないから、WHOが珪肺の危険性を指摘している結晶質二酸化ケイ素微粉末とは違い、有害性はそれほど高くないというツイートをしていたことを知った。「だぶ」さんにこれについてお聞きしたら、詳しい説明をしてくださった。以下が「だぶ」さんの説明。
労働安全衛生法においてシリカ微粉末が通知対象物質にかかっているのは、主に粉塵吸引の長期間曝露を念頭に置いてのことです。これは、主に鉱山の坑内の作業従事者が極めて微細な石英粉を長期間吸っていると、重篤な肺疾患(珪肺)が起こることによっています。このときのシリカは、石英です。
ちなみに、シリカというのはケイ素酸化物という意味ですが、これがまた多彩な構造をもつ物質で、結晶構造が数種あり、非晶質もかなり安定です。一番身の周りに多いのは低温石英(石英、αクオーツ)で、高温相もあります。トリディマイト、クリストバライトのような別の結晶構造もあります。
非晶質シリカも多いです。一回石英を溶融し、冷やすと石英ガラスになり、結晶構造は戻ってきません。水を多く含んだものはオパールであり、シリカゲルであります。これらのうち、珪肺を強く引き起こすのは石英、もしくはクリストバライトの非常に細かい粉です。
二酸化ケイ素(シリカ)は非常に安定な物質ですが、結晶構造をきちんと取るとさらに安定になり、微粉末を長期間吸いこんむと、そこに長い間留まり、肺に異物として認識され、悪さをし出すようですね。珪肺は復帰が難しく、鉱業では代表的な労働疾患です。アモルファスのシリカはそうでもありません。
んで、ではフェロニッケルのスラグはどうか、という話ですが、その前にひとつ、無機化学のおさらいをしておきましょうか。酸化物およびケイ酸塩の相は、通常の酸化数のものであれば、陽イオンのすべては酸素が陰イオンになっています。で
んで、そういった系の純物質もしくは化合物は、複雑な組成のものでも、純酸化物の組み合わせで表現することが多いです。例えば、頑火輝石という鉱物があります。これはMg2Si2O6という組成を持っていますが、しばしば 2MgO・2SiO2 という表現をします。
要するに、純酸化物で換算してどのくらい、という表現ですね。これは、実験上、分析上、あるいは考察上、非常にわかりやすい表現なのです。でも、 2MgO・2SiO2 の頑火輝石に、石英が入っているわけではないのです。単なる純シリカ換算なだけで
フェロニッケルのスラグもそんな感じで、複雑なケイ酸塩の結晶および非晶質(アモルファス、ガラス)の混じりで、その鉱物組成は原料や製法によってばらつきます。急激に冷やせばガラスになりますし、ゆっくり冷却すれば結晶化しやすいものから分化結晶化します。
ちなみにフェロニッケルのスラグは、二価の鉄、カルシウム、マグネシウムのケイ酸塩の組成です。ただし複雑な混じりの結晶もしくはガラスなので、構成鉱物種での表現は難しく、FeO ○○%, CaO ○○%, MgO ○○%, SiO2 ○○% といった表現をします。た
ただし、純シリカ分換算で SiO2 が ○○% 入ってる、という表現になってても、それが石英なわけではありません。そのほとんどはケイ酸マグネシウムやケイ酸カルシウムのケイ酸分です。ケイ酸の量が多ければ、スラグだとクリストバライトが結晶化することがありますが、ごく少量です。
なので、フェロニッケルのスラグの組成のコンテンツに SiO2 が ○○% 入ってる、という分析値が出ているからと言っても、それは石英であることはほとんどないのです。石英は融点が高く、それが多く入っているとスラグの流動性が下がりますしね。他の成分がみんな融かしてしまうのです。
ちなみに、フェロニッケルのスラグの組成だと、頑火輝石(エンスタタイト)がかなりメジャーな、安定相になってきます。ゆっくり冷やせばこれが結晶化してくるでしょう。あとはカンラン石かな。シリカ分は通常の岩石の組成から考えるとかなり少なめです。
なお、今はスラグの大部分は、融けてメルトになっている状態で水に放り込みます。こうすると体積収縮でバキバキに割れ、数ミリ大の粒になります。だから「グリーンサンド」というのですが。粒径分布を考えると、重量比率で一番大きいのは数ミリ大でしょうね。
そして一番大事なこと。地殻で一番多い元素は酸素、二番目はケイ素です。ですので、シリカ、具体的には石英は、ほとんどの岩石に含まれています。そこら辺にある砂を取って分析すれば、数割は石英ですし、海砂なんかは5割6割は当たり前、9割以上が石英なところもあります。
地球上のすべての生物はシリカ(正確には石英)の上に生きていると言っても過言ではありません。そのぐらい石英って多いのです。
以上のことから、フェロニッケルのスラグの組成に SiO2 が入ってる、石英は労働安全衛生法の通知対象物質に入ってる、だからフェロニッケルスラグは危ないんだ、という三段論法は、いろいろな点で間違いなのです
普通の窓ガラス(ソーダガラス)も、SiO2 ○○%, Na2O ○○%, CaO ○○%, B2O3 ○○% みたいな表現で書きますよ。でも、石英が入っているわけではないのです。
ちなみに「だぶ」さんは、無機と有機金属化学の研究者でシリカの専門家とのこと。とても噛み砕いて説明してくださったので、鉱物や化学に疎い人でも理解できると思う。
で、私も調べてみたが、以下のサイトでも「だぶ」さんと同じ説明がなされている。
5.SiO2の頂点に立つ水晶の構造(水晶と鉱物)
フェロニッケルスラグの冷却条件によって、スラグの主成分の結晶がどのような変化を示すかを実験した論文があるのだが、急速に冷却した場合はSiO2はすべてガラス質、つまり非結晶になったという結果が得られている。
フェロニッケルスラグの冷却条件と組織に関する研究(資源・素材学会誌 105(1989)No.14)
*上記の論文について「だぶ」さんが図を引用して詳しく解説をしてくださった。詳しく知りたい方は、以下のツイートをお読みいだだきたい。
https://twitter.com/fluor_doublet/status/673918886845153280
https://twitter.com/fluor_doublet/status/673929874915004416
https://twitter.com/fluor_doublet/status/673929931722633216
https://twitter.com/fluor_doublet/status/673929964157190144
https://twitter.com/fluor_doublet/status/673930026706862080
https://twitter.com/fluor_doublet/status/673930103248707584
https://twitter.com/fluor_doublet/status/673930131308605440
https://twitter.com/fluor_doublet/status/673930163046887425
https://twitter.com/fluor_doublet/status/673930802439188480
製錬の過程は住友金属鉱山のHPで説明されていて、日向製錬所では溶融したスラグを水砕している。つまり、融けた高温のスラグを水で急速に冷却しているといえるだろう。
http://www.smm.co.jp/business/refining/group_domestic/hyuga/kyoten.html
珪肺について調べてみると、原因物質は「シリカ結晶」「結晶シリカ」「石英」などと書かれている。
珪肺(ウィキペディア)
塵肺の一種である珪肺(けいはい)の原因はシリカ粉塵の吸入!? (カラダノート)
発がん性に関しても、IARCは「石英またはクリストバライトとして結晶質シリカが職業暴露により吸入された場合、ヒトに対して発がん性がある(ただし非晶質シリカはGroup3(発がん性が分類できない))」としている。以下、参照。
発がん物質暫定物質(2001)の提案理由(日本産業衛生学会)
珪肺やがんの原因とされるシリカ微粉末というのは天然に存在する結晶石英もしくはクリストバライトであり、これを長期間吸引することによって引き起こされる。一方、スラグは粉砕した鉱石を電気炉で溶融しメタルを取り出したあとの鉱さいであり、鉱石に含まれる結晶石英は溶融後に固化しても結晶石英にはならない。とくに急速に冷却すると非結晶質分が多くなり、石英に相当するものはほとんどなくなってしまう。スラグ成分にSiO2と書かれているからといっても、それが結晶石英やクリストバライトを指すわけではないということだ。
これらのことから、日向製錬所から排出されるフェロニッケルスラグには珪肺やがんを引き起こすと認められている結晶シリカはほとんど含まれておらず、含まれていたとしてもごく少量と言えそうだ。ならば、スラグの主成分がSiO2だからという理由でスラグ微粉末は発がん性があるとか珪肺の原因になるという主張は的外れであり、間違いといってもいいだろう。
もちろん、粉じんの吸入は咳などの健康被害を引き起こすし、スラグ粉じんが無害だとは思わない。また、現時点では非結晶シリカが絶対にがんや珪肺の原因にならないとは断言できないだろう。しかし、結晶石英とそうではない非結晶シリカでは有害性に大きな違いがあるということはきちんと認識しなければならない。
香取さんの主張は、まさにシリカSiO2という記述だけに着目し、シリカ(ケイ素酸化物)と結晶石英を混同した勘違いだ。専門知識がないことで間違いを犯すことがあるのは往々にしてあるが、間違いに気付いた時点ですみやかに訂正するべきだと思う。間違ったまま突っ走ってしまうと後戻りができなくなり、自分で自分の首をしめることになりかねないことを指摘しておきたい。
【12月6日追記】
香取さんから以下の2点についてツイッターで意見および要望があったので、記事にコメントしてほしいと返事をしたのだが、なぜかコメントはしないとのこと。そこで、追記としてここで返事をしておきたい。
香取さんからの意見・・・松田さん。ご紹介頂いた僕のブログ記事で、結晶ってことについて書いてますよ。 国交省の資料もあげてます。 シリカ(SiO2)などの主成分が「徐冷・急冷のいずれの場合にも」「安定した結晶構造」とのこと。
国交省の資料では、香取さんの指摘のように「フェロニッケルスラグはシリカ(Sio2)とマグネシア(MgO)を主成分とし、徐冷・急冷のいずれの場合にも主な鉱物組成は安定した結晶構造である」と記述されている。しかし、その記述の前に、「風冷スラグは水砕スラグに比べガラス量は低いが・・・」との記述があり、水砕スラグはガラス質が多いと理解できる。
この資料は学術論文ではなく、鉱物や化学の専門家が書いているとも認められない。「主な鉱物組成は安定した結晶構造である」という表現は具体的な結晶の名称が示されていないあいまいな記述であり、この記述のみを取り上げて、フェロニッケルスラグのシリカが結晶シリカであるという根拠にはならないと判断した。学術論文やシリカの専門家の説明の方が信ぴょう性が高いと考える。
なお、国交省の資料とは以下である。
http://www.mlit.go.jp/kowan/recycle/2/12.pdf
香取さんからの要望・・・シリカ(SiO2)は、労働安全衛生法で「有害物・危険物」に指定されている。 発信事項とブログ記事を紹介された者として、この強調している事が触れられず伝えられないのは困ります。 松田さんの記事に加えて下さい。
労働安全衛生法で「有害物・危険物」に指定されていることを香取さんが強調しているのは知っているが、黒木さんの裁判は労働裁判ではないので私は労働問題にまで話しを広げないほうがいいとの立場をとっている。また、労働安全衛生法に関する記事は、私が紹介した香取さんの記事からもリンクされていて知ることができる。したがって、それらの記事は取り上げなかった。必要性を感じていないので、要望を受けて加筆するつもりはない。
【12月7日追記2】
昨日の追記の「香取さんからの要望」への返事に補足する。
この記事の主旨は、急冷されたフェロニッケルスラグにはほとんど結晶石英やクリストバライトが含まれていないと判断できること、珪肺やがんの原因とされているシリカとは結晶石英やクリストバライトを指すこと、したがって、日向製錬所から排出されたフェロニッケルスラグには発がん性や珪肺の原因物質はほとんど含まれていないということの指摘である。
さらに香取さんはご自分のブログでフェロニッケルスラグが珪肺の原因になったり発がん性があると主張されていたので、間違いであるとの指摘をした。香取さんが、日向製錬所から排出されるフェロニッケルスラグは発がん性物質であり珪肺の原因になると主張されるのであれば、フェロニッケルスラグには結晶石英やクリストバライトが含まれていることを科学的根拠に基づいて示すか、あるいは結晶石英やクリストバライト以外のケイ素酸化物も発がん性が認められるとか珪肺の原因になるという根拠を示すべきだろう。それらについて明確な根拠が示され、私のこの記事が間違いであることが明確になったなら、私はこの記事を訂正し、香取さんに謝罪したい。
労働安全衛生法で「有害物・危険物」とされるシリカにはたしかに非結晶シリカも含まれているようだが、このことと結晶石英の発がん性や珪肺の問題は別である。本記事の主旨である発がん性、珪肺のことを棚に上げて労働安全衛生法を根拠に有害性を主張するのは論点を逸らすことになる。
その後、香取さんは労働安全衛生法で「有害物・危険物」とされるシリカには非結晶シリカも含まれていると主張していた。「危険有害性の要約」の「310 シリカ」にはさまざまな構造のシリカが記載されているが、この中でGHSの対象となっているのは「結晶質-石英」だけであり、それ以外は対象となっていない。したがって、香取さんのこの主張も誤りである。
なお、スラグ微粉末の吸引が健康被害を引き起こすことは当然考えられるし、私のこの記事でも「粉じんの吸入は咳などの健康被害を引き起こすし、スラグ粉じんが無害だとは思わない」と書いている。したがって、長期間にわたるスラグ粉じん吸引が健康被害を及ぼすことは否定していない。
【12月9日追記3】
以下の3点について追加および修正をした。
・沈殿池の水質検査に関わる過去記事を追加。
・「フェロニッケルスラグの冷却条件と組織に関する研究」について、「だぶ」さんの解説を追加。
・「追記2」の一部に誤りがあったので修正。
【12月12日追記4】
住友金属鉱山はホームページでは以前はグリーンサンド(フェロニッケルスラグの商品名)の成分をSiO2、Mgo、CaOと化学式で表記していたが、その後Si、Mg、Fe・・のように元素表記に書き変えた。このような成分表記が適切なのかどうか「だぶ」さんにお聞きしたところ、問題ないとのこと。住友金属鉱山は、二酸化ケイ素が「物質として」含まれていると誤解されないために、このような元素表記に変えたのではいかと思う。以下、「だぶ」さんからのお返事。
https://twitter.com/fluor_doublet/status/674783490559250432
また、これに関連する「だぶ」さんの一連のツイートも紹介しておきたい。
うーん。フェロニッケルのスラグ、酸化物成分の値で書くと勘違いする人が出るので、各元素で表記してみますか。
元論文はこれです。 https://www.jstage.jst.go.jp/article/shigentosozai1989/105/14/105_14_1067/_pdf スラグ二種類の挙動が書いてあるので、スラグAとスラグDについて、元素の重量百分率で示しますよ。
スラグDは SiO2 53.9%, MgO 27.8%, Fe (all) 6.5%, CaO 5.4%, Al2O3 2.4%, Ni (all) 0.26% の酸化物換算組成です。足らないところは鉄およびニッケルに結合した酸素でしょうから、それで 100% にします。
すると、Si 25.2%, Mg 16.8%, Fe 6.5%, Ca 3.9%, Al 1.3%, O 46.0% になります。スラグD は20℃/sec以上の冷却温度で冷却すると、そのままガラスになるので、ガラスの成分はこのままです。マグネシウムに富んだケイ酸塩ガラスですね。
これには、非晶質の二酸化ケイ素 (SiO2)、結晶質の二酸化ケイ素(石英、クリストバライト)の物質は一切含まれていません。単なるガラスです。
ちょっと厄介なスラグA,こっちはもっとマグネシウムに富み、50℃/sec の速度で冷却すると、重量%で 10% が苦土カンラン石になります。苦土カンラン石の組成は Mg2SiO4 です。
スラグAの組成は SiO2 52.4%, MgO 34.3%, Fe (all) 6.5%, CaO 0.35%, Al2O3 1.9%, Ni (all) 0.11% です。酸素で帳尻を合わせてやります。ここから、重量で 10% の Mg2SiO4 の結晶が落ちます。
その分を引いて規格化して、元素ごとに残りのガラスの重量百分率を出しますと、Si 25.0%, Mg 19.1%, Fe 7.2%, Ca 0.28%, Al 1.1%, O 47.1% になります。こういうガラスがスラグAから 90% の重量百分率でできます。
50℃/secの冷却速度で冷やしたスラグAは、10% の苦土カンラン石 Mg2SiO4 と、90% のガラスです。ガラスの部分は、非晶質の二酸化ケイ素 (SiO2)、結晶質の二酸化ケイ素(石英、クリストバライト)の物質は一切含まれていません。これもまた単なるガラスです。
先の論文には、そういうことが書いてあるのです。フェロニッケルのスラグを水砕しても、シリカガラスも、結晶質シリカもできませんよ、と。
だから、フェロニッケルスラグの中の物質の二酸化ケイ素について考えても、意味がないんです。入ってないんですから。
(承前)一番右はケイ酸ナトリウム(水ガラス)ですが、Naイオンをマグネシウムに置き換えて考えてみてください。フェロニッケルのスラグは一番右のようなものであって、左でも真ん中でもないのです。
なので、シリカを悪者にしても、このフェロニッケルのスラグの場合はホントに頓珍漢な話なのです。
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