然別湖周辺の風倒被害
北海道は10月初旬に台風と低気圧で強風が吹き荒れた。この強風で大雪山国立黒煙の南東部にある然別湖周辺では、比較的大規模な風倒被害が発生した。
道路沿いを見る限り、然別湖の北岸にある野営場の一帯でかなりの風倒被害が見受けられる。全面的に倒れたという状態ではないにしても、場所によっては薄暗かった森林がスカスカの明るい疎林になってしまったところもある。下の写真の場所ではトドマツやエゾマツがかなり倒れたため、今まで見えなかった背後の山が見えるようになってしまった。
東ヌプカウシヌプリの登山道も、ちょうど風穴のあるあたりで集中的に風倒被害が発生していた。このあたりは岩塊地で樹木は深く根を張れないことが風倒被害につながったようだ。
気になるのは、今後の風倒木の処理だ。大規模な風倒木が発生すると、森林の管理者(ここの場合は国有林なので十勝西部森林管理署)がキクイムシの発生などを理由に風倒木を運び出すのが普通だ。昨今ではブルドーザーで作業道をつくって搬出するのが一般的なのだが、重機を入れると稚樹が潰されるだけでなく、植生が破壊されて土砂の流出が生じる。これまでも、そんな現場をあちこちで見てきた。
しかし、キクイムシが大発生したとしても数年で自然に収束するし、キクイムシはキツツキ類の餌となる。北海道の森林は過去になんども大きな風倒被害を受けてきたはずだが、風倒木を放置しても自然に森林は回復するのだ。倒木がそのままになっている景観はたしかに美しいとは言い難いが、倒木もやがて朽ちて後継樹の苗床となる。
また風倒木は風で揺すられて繊維が破断されるため材としての価値も下がる。自然保護の観点からも、また自然の遷移を見守るという観点からも、風倒木のある風景を自然の摂理として受け止め、基本的に手をつけないという選択をしてほしい。
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