黒木さんの水質検査で確認された有害物質は何に起因するのか?
黒木睦子さんが平成24年7月30日に、日向市西川内地区の第一工区と称される造成地の沈殿池の水を採取し検査機関に分析を依頼したところ、高濃度の有害物質が確認された。この検査結果は裁判の証拠として原本が提出されており、有害という結果が出たのは間違いないだろう。検出された有害物質は以下(単位はmg/l)。
カドミウム 0.0096
総水銀 0.0073
セレン 0.030
鉛 2.1
六価クロム 0.02
ヒ素 0.52
シアン 0.1未満
フッ素 20
ホウ素 0.23
この水の採取に関して「別の場所から採取したのでは?」という意見もあるが、何ら証拠はなく、黒木さんがそのようなことをする理由も考えられない。また、このような汚染された水を一般市民が入手するのも困難だろう。黒木さんは採取時の様子も説明しており、第一工区の沈殿池から採取したと考えるのが妥当だ。
ならば、いったいこの高濃度の汚染はいったい何に起因するのだろう?
私は6月26日にこの件に関して以下のツイートをした。
https://twitter.com/onigumoobasan/status/614545946949488640
1 黒木さんの水質検査で有害とでた理由として考えられること。①スラグ微粉末を含む水をろ過せず検査した。②酸性雨によって沈殿池に飛来した微粉末から有害物質が溶けだした。③造成地に有害物質が不法投棄された(石灰で対処し川が白濁)。④酸性雨が積まれたスラグを浸透し有害物質が溶けだした。
https://twitter.com/onigumoobasan/status/614546095755034624
2
黒木さんが主張しているのは④だが、他の検査では有害と出ていないので、この可能性は一番低いのではないかと思う。もっとも、検査データや検査機関の人の説明、現場の状況などから黒木さんが「スラグを浸透した水が汚染されている」と考えるのは不思議ではない。
上記ツイートの「①スラグ微粉末を含む水をろ過せず検査した」という説に関しては以下の記事に書いたが、よしおかさんの仮説を元にしたものだ。私はこれまでこの説が妥当ではないかと考えていた。
そのほかに、「②酸性雨によって沈殿池に飛来した微粉末から有害物質が溶けだした」という可能性も考えられる。つまり沈殿池には雨水が溜まっていただろうから、酸性の雨水によって沈殿池に降り注いだスラグから有害物質が溶出したという可能性もある。これについてはOwlmanさんの6月17日の連続ツイートで触れられている。
https://twitter.com/nightowlfly00/status/610963803056947200
@mutsukurokiこれは県立図書館の分厚い金属辞典か鉱業辞典に専門家が書いてたことだが、 硫黄は時間が経つといろいろなものに変化する。イオン化したり酸化したり。 変化したある物質(正確な名前失念)が水に溶けると硫酸になる。
@mutsukuroki従って、製錬所では鉱滓をしばらくの間、貯蔵所に貯めといて、硫黄が硫酸になり鉱滓を溶かすことがないか、様子を見る。これをエイジングと呼ぶ。 硫酸になると黄色い水になるため、これは黄濁水問題として鉱毒原因として世界中で有名
@mutsukurokiネット記述では、製錬所は鉱滓中のフッ素を抜くために、エイジングを行う場合もあるらしい。 2002年頃鉱滓のフッ素規定が厳しくなり、製錬所が鉱滓のリサイクル利用を減らしたという記述もあった。(三浦万尚氏の指摘は正しい)
@mutsukurokiここから先は個人的推測だが、 鉱滓は空気や水に触れる環境中では、鉱滓中の硫黄が酸化したりイオン化したりして、その一部が硫酸原因となる物質になり、それが水に溶けて硫酸になり、鉱滓から重金属を溶かし出してしまうのでは?。
@mutsukuroki山中にそのまま事実上の投棄を行えば、地下水に触れ、将来的に長期間経過するうちに、硫黄の硫酸化と重金属溶け出しが地下で起こる場合があり得るが、埋立てしまえば、何が起きているのかわからなくなる。確認のしようがなくなるのだ。
@mutsukuroki自分的には、被害者が見つけた高濃度重金属汚染水は、山中に埋立途中で大量の雨水がかかり、鉱滓中の硫黄が水と大気でイオン化や酸化などを起こし、その結果、一部分が硫酸原因物質に変化し。それが水に溶けて硫酸となり、重金属を溶か
@mutsukurokiし出したように思われる。 或いは、製錬所で電気炉から出て来たすぐの鉱滓を、エイジングもしないまま、山中に埋立たのかもしれない。 無論、その場合は黄濁水問題が発生する確率は高くなるだろう。 以上2つの要因が重なったのかも
酸性雨にスラグが長期間浸かることよってスラグから有害物質が溶出するかどうかも酸性溶媒による溶出試験で確認する必要があると思う。もっとも検査機関では定められた方法での検査しかしないだろうから、こうした試験はそう簡単にできないかもしれない。
上記二つの仮説は、有害物質がフェロニッケルスラグに由来するという考え方だ。私はこれまで有害物質はスラグに由来するだろうと思い込んでいた。しかし、この思い込みのタガを外せば、有害物質がスラグに由来することに拘る必然性は何もないということになる。すなわち「③造成地に有害物質が不法投棄された」という説もあり得る。
以前、左巻健男さんとツイッターでやりとりした際、左巻さんが「スラグ溶出と思えない成分などもあった」とツイートをしているのを思い出し、そのツイートを探してみた。以下。
https://twitter.com/samakitakeo/status/552097537083994112
@onigumoobasan 第三者も一緒に採取していないと厳しいですね。スラグ溶出と思えない成分などもあった気がします。その検査結果のもと報告書のコピーも示されていませんよね?
フェロニッケルスラグには含まれない有害物質が検出されているのなら、スラグ埋め立てとは別に不法投棄があったと考えるほうが辻褄が合う。
黒木さんは「フェロニッケルスラグ沈殿池の水質検査」というブログ記事で、水の採取をした際の状況を「私たちが水を汲みに行ったときは、水は黒く濁っており、下の方の状態は黒くて見えませんでした。吐き気がくるような異様な臭いもしてました・・・」と説明している。黒く濁り悪臭がするような水が存在したのなら、スラグ微粉末の混じった水をろ過せず検査したためだけではなく、水そのものに有害物質が溶け出ていたのかもしれない。
造成地の下を流れる西川内川が石灰で白濁していた時期があったが、有害物質の処理のために石灰が投入されたという可能性も否定できない。もしこれが事実だとしたなら、事業者は不法投棄を知って対処したことになる。
上記①、②、③が重なっている可能性も否定できない。
現時点では黒木さんの検査で有害物質が検出された原因は全く解明されていない。①ないし②であればスラグは有害ということになるが、もし③の不法投棄があったのであれば、それはそれで重大な違法行為だ。どれも可能性の話しなのだが、有害物質が検出されている以上、その原因を解明することが必要だと思う。
大量のスラグが積み上げられた造成地の下部にある沈殿池(しかも第一工区の沈殿池はコンクリートブロックで固められていない)の水から有害物質が高濃度で検出されたという状況から、私もはじめはスラグを浸透した水が有害物質を溶出させたのではないかと思った。黒木さんが同じように考えるのは無理もないし、彼女がそう確信した「真実相当性」が認められれば、有害という主張に関しては名誉毀損が免責される可能性はある。
なお、香取ヒロシさんは、黒木さんはグリーンサンドの主成分であるシリカの発がん性について裁判で主張すべきだと言っている。
【追記あり】池の水は争点じゃない。衝撃の発がん性物質。 (Come on by! 英語ガレージ! ☆☆☆)
原告が求めているのはフェロニッケルスラグが有害であるということについての立証だから、水質検査結果とは別に、スラグ微粉末自体の有害性を主張することも意味があると私は思う。
*検出された有害物質について追加した。
« 上高地散策 | トップページ | 夫婦別姓を選択できない遅れた国 »
「環境問題」カテゴリの記事
- 生物多様性の消失と人類の未来(2024.07.26)
- 香害という公害(2024.07.03)
- 人間活動による地球温暖化の何が問題なのか(2023.09.14)
- グレート・リセットと地球温暖化否定論(2023.04.30)
- 小規模流水発電の普及を(2022.08.12)
コメント