地裁差し戻し審が始まった「えりもの森裁判」
えりもの森裁判の概要
2005年の秋、日高管内えりも町の道有林が皆伐され、集材路をつくったことで近くのナキウサギ生息地も破壊されてしまった。そこで、道民3人が住民監査請求を経て提訴したのが「えりもの森裁判」だ。北海道の条例や生物多様性条約に違反する伐採によって森林の公益的機能が損なわれ、また過剰な伐採によって損害を与えたとして損害賠償を求めている。
一審では賠償命令が却下され、それ以外の請求も棄却されてしまった。この一審判決は肝心の違法性について判断をしていない。あまりに不当な判決のために控訴したところ、高裁では原告敗訴の一審判決の一部を取り消し地裁に差し戻しをするという画期的判決が下った。高裁から地裁への差し戻し審は異例とのことだ。ところが被告の北海道はこれを不服として最高裁に上告をしたのだ。時間延ばしの上告と言わざるを得ない。
そして、最高裁は昨年の11月に終局し、一審に差し戻されることが決定した。高裁も最高裁も一審判決を否定しやり直しを命じたということから、一審判決の不当性が浮き彫りになった。
差し戻し審第一回口頭弁論
提訴から10年目という長丁場の裁判になっているが、5月12日に札幌地裁で差し戻し審の第一回口頭弁論が開かれた。
高裁の判決が2012年10月だったので、ひさびさに裁判のために札幌に出かけた。大通り公園ではパンジーが咲き誇りライラックもちょうど花盛り。
久しぶりに出かけた札幌地裁は、以前からやっている耐震工事がまだ終わっておらず、北側の出入り口からしか入れない。そして、入口には以前はなかったものものしいゲートが設置され係員が何人も並んでいる。空港の搭乗口にあるあのゲートとほぼ同じもので、ここで手荷物の検査を受ける。なんとも仰々しい。
十勝から札幌地裁まで出かけると丸一日かかるのだが、第一回口頭弁論はあっけなく5分で終了した。これはいつものことだから、想定内。今回は大阪の弁護士さんがはるばる来てくださった。
原告からは「準備書面(14)」として事実関係の概要と差し戻し部分についての双方の主張をまとめた書面が提出された。
この裁判では、これまでに提出された書面および証拠書類を重ねると数十センチにもなる。この膨大な資料を裁判長は一通り目を通すのかと思ったのだが、どうやら当事者に概要をまとめてもらうということのようだ。差し戻し審でのポイントは、過剰伐採と越境伐採についての立証になりそうだ。
次回期日は7月28日(火)13:15である。
« シャーロットの名付け問題に見る日本人の幼児性 | トップページ | 「シャーロットのおくりもの」が伝えるもの »
「えりもの森裁判」カテゴリの記事
- 「えりもの森裁判」高裁判決(2019.04.03)
- えりもの森裁判(1審の差し戻し審)を終えて(2018.11.17)
- えりもの森裁判差戻し審で過剰伐採を認定(2018.10.03)
- えりもの森裁判が結審(2018.06.06)
- 「えりもの森裁判」差戻し審の争点(2015.12.17)
コメント