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2015/04/01

見習うべきことが多いスウェーデンの育児政策

 3月30日の北海道新聞に、「人口減少社会を生きる」というテーマのもとにスウェーデンのことが取り上げられていた。出生率増加という点だけではなく、育児や家事と仕事のあり方という面から非常に意味のある内容だったので簡単に紹介しておきたい。

 私が子どもの頃は、既婚女性の大半が専業主婦だったが、スウェーデンでもかつては女性の大半が専業主婦で夫は外で働くという形態が一般的だったそうだ。しかし、1960年代に高度成長期を迎え、働き手として女性の労働力が注目されることになった。そのために、女性が働きやすい育児制度がつくられてきたという。

 具体的にどのような政策がとられてきたかを、記事から箇条書きにすると以下のようになる。

・両親合計で平日480日まで休む権利があり、休業中は給与の80%を国が支給。復帰後は育休前と同等の給与や地位に戻すことが義務づけられている。
・480日のうち父母は各60日休まないと権利が消失する「パパ・ママ・クオータ」制により、男性の育休取得率は8割に上る。
・企業が従業員の仕事と家庭を両立させるワークライフバランスを重視し、フレックスタイム制を採用したり残業をさせないなど、子育て支援が充実。
・保育所(プレスクール)は待機児童がゼロ。
・保育料は親の収入の3%が上限。
・児童手当(子ども1人月額約1万5千円)が16歳まで支給され、2人目以降は金額が増える。
・小学校から大学まで学費は基本的に無料で、高校までは給食費や教材費も無料。
・出産費用は国の負担でほぼ無料。

 スウェーデンでは、国として男女平等と育児に力を入れる政策をとっているが、それだけではなく企業自体も家庭や子育てを重視しているのだ。こうした企業の姿勢は日本は正反対といってもいいだろう。

 日本の現状については私がここで説明するまでもないだろうが、共働きであっても家事や育児の大半を女性が受け持つ。男性は残業が当たり前だし、残業代の未払いや過労死が後をたたない。男女平等などといっても、家事や育児に積極的に関わる男性はまだまだ少なく、女性がやるのが当たり前だという意識の男性が多いし、結婚や出産で仕事を辞めざるを得ない女性も多い。大学の学費はべらぼうに高く、親の収入で子どもの進路が左右される。

 つまり、日本とは基本的なところで考え方や方針が180度といっていいくらい違うのだ。育児政策ももちろんだが、従業員を酷使することしか考えていないブラック企業が増殖しても放置し、派遣という不安定な働き方を廃止する気配もない。それどころか、相変わらず大企業優遇だ。こんな状態で女性の活躍といっても、虚しいだけだ。

 もちろん、これはスウェーデンに限ったことではなく、北欧では一般的なことだ。育児に限らず、老後の社会保障も手厚い。だから、貯金がなくても安心して暮らせるのだ。国民が高い税金に文句を言わないのは、税金を国民にきっちりと還元する政策にある。また、以前「かなりおかしい日本の労働」という記事で書いたように、ドイツなども北欧に近いのだろう。

 男女平等、福祉政策をとっても日本は北欧などに比べて半世紀は遅れているといっても過言ではないと思う。北欧に見習うべきことは多いのだが、米国の新自由主義の後追いをしている限り、北欧と同じような社会を目指すことにはならないだろう。

 国民一人ひとりを大事にせず格差を拡大させ戦争へと突き進む国が、税金を国民に還元する福祉国家になり得ないのは明らかだ。

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