サホロ岳のナキウサギ生息地をめぐる疑惑
サホロ岳のナキウサギ裁判が始まってから1年半ほどが経過したが、3月10日に行われた第7回口頭弁論でナキウサギ生息地に関して大きな疑惑が浮上した。
北海道知事はかつてサホロスキー場の拡幅にあたって、加森観光にナキウサギ生息地を保全するように付帯意見を出していた。このために加森観光はサホロ岳北斜面のコース造成にあたり、ナキウサギの生息可能なガレ場を保全すると北海道に説明をしていた。そこで自然保護団体は加森観光に対し工事内容を説明するように求めたのだが、加森観光は申入れを無視してスキーコースの造成に着手してしまったのだ。
原告は昨年の10月14日の第5回口頭弁論で加森観光に対し、スキーコースやリフト、岩塊堆積地(ナキウサギの生息可能地)の位置を記入した地図の提出を求めた。ところが提出された地図は縮尺が1/3000で、既存のゴンドラ駅も記入されていない不可解なものだった。
そこで、第6回口頭弁論で岩塊堆積地のGPSデータと詳細な地図の提出を求めたところ、3月3日に加森観光からGPSデータと地図が提出された。しかし、この地図も国土地理院の地形図とは異なる地図で、原告らのデータを重ね合わせることができないものだった。
このために、原告らが調査した岩塊堆積地のGPSデータと、加森観光のGPSデータを国土地理院の地形図に重ね合わせるという作業を行った。その結果、原告らが調査した岩塊堆積地と加森観光の提示した岩塊堆積地が大きくずれていたことが判明した。つまり、加森観光の示した岩塊堆積地はスキーコースからギリギリで外れているのだが、原告らが確認した岩塊堆積地はスキーコースと重なっているのだ。
3月10日の第7回口頭弁論で、加森観光は裁判長から原告が主張する岩塊堆積地を調べたのかと質問されたのだが、加森観光の弁護士はそれに答えようとせず雪がとけてから調査すると言い出した。このために原告の弁護士は、調査報告書等で分かることだからすぐに出せるはずだと主張し、1カ月ほどで回答するということになった。
岩塊堆積地はゴンドラ駅からほど近いところにあり、加森観光がそれを見落としているとは考えられない。ここから導きだされるのは、加森観光が岩塊堆積地の位置をスキーコースから外れるよう恣意的にずらしてしまったのではないかという疑惑である。
スキーコースはすでに伐採が行われてしまっている。もし、岩塊地をスキーコースにしていたのであれば、ナキウサギの生息地を保全するように求めた北海道知事の付帯意見を無視し、北海道にも虚偽の説明をしたことになる。
次回の口頭弁論の期日は5月19日である。
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