イスラム国を生んだのは米国であり日本にも責任がある
前回の記事で、「暴力を暴力で封じ込めようとしたなら憎しみが連鎖して泥沼にはまり込むだけだ。」と書いた。なぜなら、イスラム国という暴力集団はまさに暴力から生まれたからだ。そういう背景について分かりやすく説明しているのが、ジャーナリストの志葉玲さんの記事だ。
イスラム国は日米の外交・安全保障政策の失敗が産んだモンスター~暴走を止めるためにやるべきことは?
米軍はイラク戦争でなりふり構わず攻撃をし、子どもでも女性でも撃ちまくった。あの爆撃の映像を覚えている人は多いだろう。米軍の攻撃に怒りを燃やした多くのイラク人が、米軍を相手に武器を手にすることになった。米軍の容赦ない攻撃がイラクの人たちの憎悪を駆り立てたのだ。
イラク戦争前のサダム政権は確かに人権問題では酷い状態だったが、イラクの人たちにとって米軍の攻撃は「サダムより酷い」と言わしめるものだった。そして、米国や日本が軍事的・経済的に支援した新生イラク政府は、米軍よりもさらに酷い拷問や虐殺を繰り返したと志葉氏は書いている。
かつてイラクではイスラム教のシーア派もスンニ派も共存していた。ところがシーア派至上主義者が主導する新生イラク政府は、スンニ派はサダムの支持者であるとして激しい攻撃を加えた。シーア派によるスンニ派への暴行や虐殺が繰り広げられる中で、シーア派を容赦なく攻撃するイスラム国という過激な暴力集団が生まれたのだ。
米国の圧倒的な軍事力を行使したイラク戦争が新政権の暴力を生み、新政権の暴力がイスラム国という暴力集団を生んだのだ。つまり、この暴力の連鎖の根っこには、米軍によりイラク戦争がある。米国の暴力がイラクの人たちの憎悪を煽り報復の世界をもたらしたのだ。紛れもなくここには暴力の連鎖、憎悪の連鎖がある。
そして、日本はそのイラク戦争に無関係ではない。沖縄の米軍基地から、米軍がイラクへと出撃していったからだ。さらに米国のポチと化した安倍首相は、集団的自衛権の行使容認や改憲によって米軍へとすり寄ろうとしている。これでは、日本に恨みが向けられるのも当然といえるだろう。
イスラム国などの過激派のおぞましい残虐行為に皆が憤り「テロに屈しない」と連呼する。あの残虐行為を許せないのは当たり前だが、残虐集団の誕生は日本と無関係ではない。安倍首相が中東で宣戦布告のような発言をしたら、暴力の矛先が日本へと向けられるのは必然とも言えるだろう。
人質事件で最悪の結果を迎え安倍首相は「罪を償わせるために国際社会と連携していく」と報復とう受け取れる宣言をしたのだから、まさに憎悪の連鎖、暴力の連鎖に日本も加わると宣戦布告したようなものだ。安倍首相は、人質を殺した加害者を裁判にかけると弁明しているが、日本が米国に追従している以上、そんな言葉は虚しいだけだ。
志葉さんは「集団的自衛権の行使や単なる米国追従では同じ間違いを繰り返すだけ。上記したように、少なくともイラクにおいては、イラク戦争やその後のイラク政府の暴挙の数々が招いた宗派間対立こそがISISに付けいる隙を与えている。もし、日本を含む国際社会が強く働きかけ、イラク政府が全ての宗派や民族の融和と和解を進めるにようになれば、ISISも弱体化していくだろう」と書いている。
ほんとうにその通りだと思う。志葉さんはイスラム国を「モンスター」と言っているが、それはあくまでも比喩であり、かれらは言葉の通じる人間であることは間違いない。イスラム国が残虐極まりない行為をしているのは事実だが、以前はスンニ派もシーア派もあれほどにまで憎しみ合っていなかったのだ。対話、和解での解決が不可能とは思えない。憎悪と報復の連鎖ではこの悪循環を断ち切ることはできず、泥沼にはまり犠牲者を増やすだけだ。
安倍首相はまさにその泥沼に片足を踏み込んだ。安倍首相を選んだ国民しかこれを止めることはできないだろう。私たち国民の責任は大きい。
« 暴力から生じるのは憎しみの連鎖でしかない | トップページ | 黒木睦子さんの裁判、2回目の口頭弁論で分かったこと »
「政治・社会」カテゴリの記事
- トランプ氏の勝利で世界は変わるか(2024.11.16)
- 製薬会社社員が売りたくない危険なワクチン(2024.10.18)
- 世界を支配しているのは誰なのか?(2024.10.11)
- 製薬会社社員が書いた書籍「私たちは売りたくない!」発売(2024.09.19)
- 国は台風の制御を掲げている(2024.09.15)
「戦争・平和」カテゴリの記事
- 競争と闘争(2023.11.14)
- 支配欲のあるところに平和はない(2022.04.13)
- 敗戦の日に(2019.08.15)
- 敗戦72年に思う(2017.08.15)
- 戦争は人間の本性か?(2016.02.01)
コメント
« 暴力から生じるのは憎しみの連鎖でしかない | トップページ | 黒木睦子さんの裁判、2回目の口頭弁論で分かったこと »
イランイラク戦争でアメリカが手に入れた利権(石油施設)をISISが攻撃したことが、アメリカの空爆の口実で本音でしょう。ISISがシリアで活動している時は、アメリカは関心を示しませんでした。
そして、シリアの石油利権もこの攻撃が終わったときにはアメリカが大部分の利権を手に入れる。
何兆円も掛けて戦争するのですが、それ以上の物を手に入れる計算が常に働いています。
それはイギリス、フランスも同じで、働きに比例したものです。
その後欧米の資本が投下され、表向きは正当な経済行為ですが、決して現地の住民が潤うことは無いでしょう。
投稿: Tabi | 2015/02/03 22:08
Tabiさん
米国はもちろんさまざまな思惑の上で行動しているのでしょう。イラクの人たちの命などより自分たちの利権の方が大事なのだと思います。
そんな米国に私たち日本人が追従してしまうことの責任を考えねばなrないと思います。
投稿: 松田まゆみ | 2015/02/04 06:49