イスラム国の人質事件を二人の自己責任に矮小化してはならない
イスラム国を名乗るグループが、湯川遥菜さんと後藤健二さんを人質にとって、身代金2億ドル(約236億円)を要求している。とうとう懸念される事件が起きてしまった。
彼らは危険を承知で行動したのだから、自己責任だと主張する意見がある。もちろん、お二人が命を賭して危険地帯に行ったのは事実だろう。そういう意味では、自己責任の部分は確かにある。戦場に赴く人たちは湯川さんや後藤さんに限らず、みな危険を承知で行っているはずだ。
しかし、今回の人質事件を単純に二人の自己責任で終わらせてしまうと、「だから二人は殺されても仕方ない」ということで終わってしまい、物事の本質を見えづらくしてしまう。
安倍首相は「イスラム国と戦う周辺各国に総額2億ドル程度支援を約束します」と明言している。
イスラム国(ISIS)に宣戦布告した安倍首相(そりゃおかしいぜ第三章)
「はめられた」安倍総理の決定的な政治的ミス!~イスラエル国旗と日章旗が並ぶ前で、「イスラム国との闘い」を事実上宣言(IWJ Independent Web Journal)
昨今の安倍首相の暴走は著しい。集団的自衛権行使を認めて米国の戦争に自衛隊を差し出そうとしているし、改憲で戦争ができる国にしようと必死になっている。米国の同盟国がさらに米国の戦争へ協力すると明言しているのだ。つまり、自らイスラム国を敵視すると言っているようなものだ。
そんな中で安倍首相は中東を訪問し、イスラエル国旗と日章旗が並ぶ前でイスラム国と闘う周辺各国への2億円支援の発言をした。これでは、宣戦布告をしたと同然だ。火に油を注いだ結果の高額身代金要求と言える。
お二人がイスラム国に拘束されていることを政府は以前から把握していたし、後藤さんの家族には身代金要求がきていた。この段階で真剣に彼らの救出に動いていれば、二人は開放されたかもしれない。これまでイスラムは親日的で日本に対してそれほど憎悪を抱いていたとは思えないからだ。しかし、拘束されている日本人がいることを政府は知りながら安倍首相は宣戦布告をして火に油を注いだ。人質事件が起こりうることは当然予測できたのに、それをしないで刺激してしまったとしか思えない。
安倍首相が米国の戦争に肩入れするということは、米国の対テロを支援することだ。今回の人質事件がなくても、いずれイスラム国から敵視され日本がテロの標的にされると考えるべきだ。
そして、さらに恐ろしいのは、これをきっかけに「テロに屈しない」と強硬姿勢を貫き、引き返すことができずに泥沼にはまってしまう可能性だ。そんなことになったら、愚かな選択としか思えない。
今いちばん大事なのは、誠意ある交渉をして人質の命を救うことだ。そして、「対テロ」路線から距離を置くと宣言することだと思う。それができなければ、日本国民はいつテロの標的にされてもおかしくない。
この事件を二人の人質の自己責任に矮小化してはならない。今後日本国民に降りかかるかもしれないテロから日本国民を救えるか否かの問題だ。だから、彼らの自己責任を強調し「テロとの戦い」を宣言することは愚かでしかない。彼らの救出を第一に考え行動することこそ、日本国民を守ることにつながる。
イスラム国とのパイプをもつ同志社大学客員教授の中田考さんと、同じくパイプを持つジャーナリストの常岡浩介さんが交渉役を申し出ている。安倍首相には賢明な判断をしてもらいたい。
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コメント
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暴力を行使するテロリストに媚びるべきだ、ってこと?
投稿: こが | 2015/01/26 23:37
こがさん
なぜそのような短絡的発想になるのでしょうか。
日本はこれまでイスラムの過激派の人たちから敵とはみなされずテロの対象にはなってきませんでした。ですから、彼らを刺激するような言動をすべきではないと言うことです。これは「テロリストに媚びる」ということではありません。
また、暴力に対して暴力を使えば泥沼化するだけですが、安倍首相は集団的自衛権の行使容認によりそのような方向に持っていきたいように見えます。そんなことをしたら、日本は彼らのテロの対象になるでしょう。
人質問題は交渉によって解決すべきです。
投稿: 松田まゆみ | 2015/01/27 06:53