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2014/12/22

忍び寄る全体主義に潜む恐るべき策謀

 安倍政治について作家の辺見庸氏が以下のような発言をしている。

安倍政治を問う〈11〉目を見開き耳澄ませ 作家・辺見庸さん(神奈川新聞)

 冒頭に書かれているように、今回の選挙は実に策謀的だった。アベノミクスの虚像がバレる前に延命を図ろうという意図があったことは言うまでもない。だから消費税増税時期の先延ばしという意味不明な理由で解散総選挙に踏み切った。選挙戦が始まると国民の関心を経済政策に向け、改憲や原発再稼働などは争点から逸らしてしまった。そして選挙戦が終わった途端に改憲への意欲を口にした。

 さらに、投票率の低下を期待したとしか思えない年末の選挙やマスコミへの圧力。小渕優子氏の関連団体がHDを破壊していたことも、選挙戦が終わってから公表された。マスコミとグルになっているとしか思えない。どれをとっても策謀的というほかない。

 つまり安倍首相は小選挙区制という選挙制度を最大限に利用し国民を騙して戦争をする国へと着々と準備をしているのであり、詐欺師同然だ。しかし、今は「詐欺師が悪い」などと批判している場合ではない。いかに国民が騙されないようにするかが問われている。

 このインタビュー記事の中で、辺見氏は以下のように発言している。

「日本国憲法、9条は自明の事実として正当性を語る必要はなく、徹底的な反戦主義に俺たちは生き方を合わせることができた。そうやって過ごしてきたことが、俺は見込み違いだったと思う」

「日本の思想、文化、メディアを含め、平和憲法、9条というモラルスタンダードの補強作業をしてこなかった。安楽死だ。闘ってこなかったんだ」

 私たちは平和憲法によって何ら努力しなくても平和が保てると思いこみ、何もしてこなかった。しかし、常に権力者を監視し、騙されないように五感を研ぎ澄まし、憲法9条を必死で守る努力をしない限り簡単に平和憲法は安楽死してしまうのだ。今回の選挙は国民がいかにたやすく騙されてしまうかを如実に物語たっている。

 秘密保護法も施行されてしまった。これからはじわじわと権力者に楯突く人々の口を封じるようなことが起きるのだろう。そうしておいてから憲法を改悪していつでも国民を戦争に駆り出せるようにしようとしているとしか思えない。一方で若者の貧困層を増やして兵士へと誘導する。米国と同じやり方だ。安倍首相が考えている今後の策謀を見据えないと簡単に全体主義に引きずりこまれてしまうだろう。

 じわじわと戦前のような社会になりつつある。それにも関わらず、未だにアベノミクスを評価し、自民党政権に期待する呑気な者がいると思うと鳥肌が立つ。

 安倍首相の策謀だけを見抜ければよいというものではない。安倍首相暴走の背後に米国が控えているのは言うまでもない。米国の策謀のことも考えると、背筋が凍る思いだ。以下、元朝日新聞記者でフリージャーナリストの吉竹幸則氏の記事を是非お読みいただきたい。

秘密保護法、集団的自衛金のあまりに危険な実態、ジョセフ・ナイ元米国防次官補の語る日米軍事戦略(MEDIAA KOKUSYO)

 ジョセフ・ナイ元米国防次官補は、もし米国と中国の全面戦争になった場合、米国は中国からの攻撃に備え日本の自衛隊を使いたいという思惑があるという。日本が戦争をできる国になれば、日本列島の米軍基地が少なくなって日本の基地となり、米国と日本の部隊が一緒に配備される可能性があるというのだ。このようなナイ氏の発言から、著者の吉竹幸則氏は米国と中国の全面戦争が起きた場合、日本全土の自衛隊基地が米軍基地化すると指摘する。しかも最悪の場合は核戦争だ。

 ここに書かれていることはもちろん推測の域を出ないし最悪の場合だ。しかし米国の策謀を考えたならあり得ないとは言い切れないし、常に最悪の事態を考えていなければならないということを私たちは福島の原発事故で学んだ。もし米国と中国との間で戦争が勃発したなら、自衛隊は米軍にいいように使われ、自衛隊基地から中国に米軍の爆撃機が向かうということになりかねない。日本列島は米国の捨て石にされ、戦場と化す可能性すらある。核兵器が使用された場合は日本は完全に壊滅するだろう。安倍首相の暴走がいかに恐ろしいものかが透けて見える。

 今私たちがしなければならないのは、安倍首相や米国の策謀を読み、そのことを広く知ってもらうことではなかろうか。安倍首相の目論む集団的自衛権の行使と改憲は、日本人が米国の手足になって戦争をするということであり、場合によっては日本列島が米国の捨て石にされて戦場と化すことを意味する。

 今回の衆院選で沖縄だけはすべての選挙区で自民党以外の候補が当選した。先の戦争で本土の捨て石とされ多くの犠牲を出し、今も基地問題を抱える沖縄の人たちは、戦争へと暴走する安倍政権の危険性を敏感に感じ取っているのだろう。のほほんとバラエティ番組など見ている場合ではないことを、どれだけの日本人が分かっているのだろうか。

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コメント

辺見庸氏が芸術家のろくでなし子さんと作家の北原みのりさんの逮捕について:「2人は警察批判や政権批判をしていた。狙い撃ちの恫喝(どうかつ)。そして周囲の萎縮だ。警察が特高的になっている」「彼女たちの逮捕を軽視し、冷ややかに笑う世間の反応まで権力に見透かされている。社会全体が自警団のようになっている」。特高は外部ではなく、私たちの内部にいる。権力に瀬踏みされ、自由の幅はさらに縮んでゆく。:と書いていますが、マスコミでもわいせつに関する逮捕としか報道されていません。権力批判に対す見せしめがこれからどんどん強化されて、このようなネットのブログで、体勢批判しただけでも逮捕となってしまう現実が起こるかもしれません。恐ろしいことです。

飯嶋さん

ご指摘のとおり、ろくでなし子さんと北原みのりさんの逮捕は、見せしめと疑わざるを得ません。政府はこうやってじわじわと体制批判をする人たちの口を封じようとするのではないでしょうか。特定秘密保護法は何が秘密なのかも分からないのですから、理由も分からず逮捕されてしまうことになりかねません。そのうち市民のブロガーも狙い撃ちされるのかも知れませんね。自由に物を言えなくなる時代になりつつありますが、若者こそこの恐ろしさに気づいて目を覚ましてもらいたいものです。

私は、日本のマスメディアが権力に抵抗することができなくなりつつあることを最も危惧しております。

朝日新聞が権力に屈した端的な例は、いわゆる「吉田調書誤報事件」です。5月20日の記事は誤報ではなく、朝日新聞は記事の取り消しをするべくでなく、ましくは謝罪などはもっての他です。

海渡雄一氏によ、PRCへの批判が以下のURLで読むことができます。

http://iwj.co.jp/wj/open/wp-content/uploads/2014/11/f11e527ab6b4e36d065f57578a13f26d.pdf

SBさん

同感です。

マスメディアは今もかなり体制寄りになっていますが、これからはますます萎縮するでしょうね。

さらに懸念されるのが、果敢に権力批判をしているフリーのジャーナリストが秘密保護法によって狙い撃ちされるのではないかということです。

そして市民が市民を監視するようになるのではないでしょうか。恐ろしいことです。

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