北電再値上げの暴挙
15日、北海道電力の電気料金再値上げが国から認可された。11月1日から値上げが実施されるが、値上げ率は何と15.33%。電力消費量が多い冬場の緩和策として3月までは12.43%に抑えるというが、昨年9月に値上げしてから1年と数カ月で再び値上げ申請するという北電の暴挙に怒りを禁じえない。
北電は値上げの理由として、泊原発の停止に伴い火力発電所の燃料費が年2千億円増加したとしている。燃料費が増加したのは事実だとしても、これは北海道電力だけの話しではない。2014年4月時点での日本の電力会社の電気料金を比較すると、北海道電力が最も高い。
電気料金を徹底比較!『日本で一番高い電力会社』はいったいどこ?電気料金ランキング(エネチェンジ)
原発を持たない沖縄電力より北海道電力の方が高いのに、更なる大幅値上げをするというのだ。火力発電の燃料の価格はどの電力会社でも大きく変わらないだろうから、燃料費の増加だけでは説明がつかない。日本一高い電気料金をとっていながら再度値上げするという本当の理由は、泊原発が不良債権となっているからだ。つまり、泊原発の維持費や安全対策費に膨大なお金をかけているということに他ならない。
しかし、どれだけの道民が原発に賛同し、原発への依存を望んでいたのだろう? 北電は道民の意見などそっちのけで原発依存を強めていったのだ。
北海道での原発建設は、一般の道民にほとんど何も知らされないまま、北電と北海道庁、通産省傘下の札幌通産局(限北海道通産局)の三者で進められた。そんな中で原発に懸念を持ち反対をしていた漁師ももちろんいた。泊原発の建設にあたっては反対する人たちと北電との間で壮絶なバトルが繰り広げられたが、最終的には建設へと進んでいったのだ。そして、平穏だった漁業中心の町は分断されてしまった。建設にあたっての経緯は以下の平田剛士さんのルポに詳しい。
漁民解体-岩内郡漁協と原発計画- (青空文庫)
北電の原発建設は道民の理解を得て進められたわけではないし、むしろ地元反対を押し切り、補償金やさまざまな優遇というアメをばら撒いて勝ち得たとも言えるのだ。そして、北電は原発の依存度をどんどん高めるという方針を取ってきた。
原発という不良債権は、安全性をないがしろにして原発建設をごり押しし、さらに原発依存を高めるという北電の経営方針から生じたのだから、北電は解体・清算してでも責任を持つべきだと思う。北電の身勝手な原発依存のツケを値上げとして道民に負担させるというのではとても納得いかない。
泊原発に関しては多くの道民が原告となって廃炉を求める裁判も行われている。泊原発が福島原発のような過酷事故を起こしたなら、その処理や補償にかかる費用は計り知れないし、環境汚染や健康被害はお金で元に戻るわけではない。しかも使用済み燃料の処理や廃炉経費を考えるなら、非常に高い発電だ。日本国民は「原発は安くて安全」という嘘に騙されていただけだ。そんな原発は廃炉にするしかない。
とりわけ今回の値上げはオール電化住宅の人たちにとっては大きな打撃だ。北電は火力発電を減らして泊原発による発電を増やしてきた。そして、「安全」「クリーン」などと喧伝し、原発でどうしても余ってしまう夜間電力対策としてオール電化住宅を推奨してきた。
北海道新聞によると、オール電化住宅向けドリーム8契約の標準世帯では現在の年額電気料金は33万1067円だが、来年4月からは41万6177円になるという。年額8万5110円、月額にすると7000円強もの値上げになる。これはたまらないだろう。北電の勧めに従ってオール電化住宅にした人たちは、欺かれたも同然だろう。
消費税増税に電気料金の大幅値上げは低所得者や年金生活者にとって死活問題とも言える。北海道の場合、自家用車を持たないと生活できない人も多く、燃料費の高騰も生活を圧迫している。さらに来年10月からは消費税の再増税が予定されている。まさに弱い者いじめの国だ。
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初めまして。
故郷に近い泊原発と青空文庫のノンフィクションについて検索したら、ここに漂着を・・
とても面白いブログでした。
これからもよろしくお願いします。
投稿: 道産子詩人pikki | 2015/07/21 20:41
道産子詩人さん、訪問ありがとうございました。こちらこそよろしくお願いいたします。
投稿: 松田まゆみ | 2015/07/21 22:42