海岸に咲くエゾマツムシソウ
14日は、浜大樹の海岸で行われた植物観察会に参加した。この日の私の最大の目的はエゾマツムシソウだった。
十勝の海岸部は春から夏にかけては何回か行っているのだが、よく考えてみたら秋にはほとんど行ったことがない。エゾマツムシソウは、花の時期に行かなければまず気がつかない。
私の故郷は信州の上諏訪で、霧ヶ峰には子どものころから何度となく行っている。その霧ヶ峰を代表する花といえば7月に高原を黄色く染めるニッコウキスゲと8月から9月にかけて藤色の花を咲かせるマツムシソウだろう。涼風の立ち始めた初秋の草原に咲き乱れるマツムシソウの花は、どことなく寂しげで哀愁を誘う。父の命日の頃はちょうどマツムシソウが盛りを迎える。父が亡くなってからは母と何度か霧ヶ峰を訪れたが、いつもマツムシソウの季節だ。その母も今年他界した。マツムシソウを見るとさまざまな思いが蘇る。
北海道にはエゾマツムシソウがあるのだが、実は信州のマツムシソウとはずいぶん趣が異なる。信州のマツムシソウは、草丈が50センチから90センチほどになる。それに対して、エゾマツムシソウはずっと小さく、今回見たものはせいぜい15センチくらいしかない。風の強い海岸の地べたにしがみつくように生えている。色も信州のものより幾分濃い藤色だ。
海岸といっても砂浜に生育しているわけではない。海食崖の上の草地に生育しているのだが、ガンコウランの群落にも入り込んでいる。ガンコウランとエゾマツムシソウが一緒に見られるのは、北海道の一部の海岸だけではなかろうか。
エゾマツムシソウは思っていたより沢山あり、そのちょっと不思議な光景を堪能することができた。カシワの海岸林と海食崖の間の僅かな草地にしか生育できないようだが、海食崖の浸食が進んだり、ササが繁茂したら生育地がなくなってしまうのではないかと心配になる。
いつまでも可憐な姿を絶やさずにいてほしいと思う。
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こちらはマツムシソウが出てくる父の随筆と詩。
http://yamanobanka.sapolog.com/e76031.html
http://yamanobanka.sapolog.com/e76052.html
http://yamanobanka.sapolog.com/e76053.html
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