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2014/05/17

「美味しんぼ」批判こそ差別であり目的は言論封じ

 福島の鼻血のことなどを取り上げた漫画「美味しんぼ」への批判がマスコミでも取り上げられているが、鼻血と被ばくの関係については多くの人が指摘している。チェルノブイリの事故でも鼻血を出した人が多かったという事実があるし、福島も同じだ。鼻血が増えたという事実は歴然としてある。被ばくが関係していないというのなら疫学調査をして証明すべきだが、批判者は誰もそれをしていない。

 【チェルノブイリでは避難民の5人に1人が鼻血を訴えた】2万5564人のアンケート調査で判明(DAYSから視る日々)

福島県双葉町で鼻血「有意に多い」調査 「避難生活か、被ばくによって起きた」 (J-CATニュース)

 上記の記事で紹介されている論文は以下。

水俣学の視点からみた福島原発事故と津波による環境汚染(大原社会問題研究所雑誌)

 なお、福岡の子どもが福島の8倍も鼻血を出したという山田真医師の調査も報道されている。しかし、これは小学校の保健室にいる養護教員からの聞き取り調査であり、どうみても疫学的調査と言える代物ではない。

福岡の子ども、福島の8倍も鼻血を出す? 小児科医が調査、理由は「わからない」 (J-CATニュース)

 「美味しんぼ」作者の雁屋哲さんはご自身のブログで「私は自分が福島を2年かけて取材をして、しっかりとすくい取った真実をありのままに書くことがどうして批判されなければならないのか分からない。」と書いているが、事実を書いたことがなぜ批判されねばならないのだろう。

 双葉町は「美味しんぼ」の鼻血を出す描写などに対し「福島県民への差別を助長する」として小学館に抗議をした。

 福島の原発事故以来、「風評」とか「差別」という言葉が頻繁に使われるようになったが、言葉の用法を誤っているとしか思えない。辞典では以下のようになっている。

風評:世間であれこれ取りざたすること。また、その内容。うわさ。「―が立つ」

差別:1 あるものと別のあるものとの間に認められる違い。また、それに従って区別すること。「両者の―を明らかにする」 2 取り扱いに差をつけること。特に、他よりも不当に低く取り扱うこと。「性別によって―しない」「人種―」

 雁屋さんが描いたのは、取材に基づいた事実であり、うわさではないので「風評」には当たらない。では、福島で鼻血を出す人が増えたという事実は「福島県民への差別」につながるのだろうか? もし、鼻血が出た人を他者が不当に低く取り扱うようなことがあれば差別といえるだろうが、果たして誰が何のためにそんな扱いをするというのだろう?

 福島では多くの子ども達が甲状腺がんを発症しており、被ばくが関係している可能性が高い。多くの人たちはこの事実を深刻に受け止めて心を痛めたり加害者に怒りこそ抱いても、被害者を差別したりはしないだろう。もし鼻血を出したという事実を理由に福島の人たちを差別するような人がいるのならば、そんな意味不明の差別こそ問題にしなければならない。

 今回の抗議は、結局は被ばくによる健康被害が生じると不都合な人たちによる言論封じであり、そのために「風評」や「差別」という言葉を利用しているに過ぎない。また、汚染された福島で暮らさざるを得ない人々は、大変な不安やストレスにさらされている。だから、不安になるような情報に対して過敏に反応し、バッシングに同調してしまう人もいるのだろう。

 福島では被ばくや健康被害について語ることはタブーになっていると聞く。どうやら事実を語ると叩かれてしまうという状況があるらしい。ご自身の原因不明の体調不良をブログに綴っていた「ぬまゆ」さんもブログを非公開にしてしまったが、福島では自分の体調や症状を語ることすら困難になっているのだろう。本当のことを言う人が叩かれるのであれば、それこそ真実を語る人への「差別」である。ところが、本当のことを言うと「差別を助長する」というのだから、アベコベではないか。

 私は日本にはびこる「ムラ社会」的な同調意識こそ、差別の温床だと思っている。多くの人はその場に漂う同調圧力によって周りの人に合わせてしまう傾向があるし、批判などを恐れて本音を言わないことが多い。多数意見に合わせていれば、まず自分が批判されたり攻撃されたりすることはないからだ。

 しかし、これは多様な意見や個性を否定することに他ならない。日本人の多くが、無意識のうちに同調圧力によって差別を助長しているといっても過言ではないと思う。被ばくによる健康被害を懸念する人に対し「福島に対する差別だ」と言う人がいるが、福島では被ばくを懸念したり健康被害を訴える人たちに対して差別がまかり通っていると認識すべきだ。

 今回の鼻血をめぐる問題で、双葉町が作者の雁屋さんではなく版元の小学館に抗議をしたというのもおかしな話だ。雁屋さんに抗議をしても漫画の販売を止められないからこそ、版元に圧力をかけたとしか思えない。

 「美味しんぼ」一時休載へ 「表現のあり方を今一度見直す」と編集部見解(産経新聞)

 なお、この記事ではあたかも批判によって休載に追い込まれたかのように感じられるが、実際にはシリーズの区切りごとに休載しているらしい。なんとも誤解を招く書き方だ。

 https://twitter.com/asozan_daifunka/status/467324623927791616 

 もう一つ指摘しておきたいことがある。この記事で立命館大名誉教授の安斎育郎氏の以下のコメントが掲載されている。

この中で、立命館大の安斎育郎名誉教授(放射線防護学)は、1シーベルト超の被曝(ひばく)をしなければ倦怠感は表れないが、漫画で第1原発を見学した際の被曝線量ははるかに低く、倦怠感が残ったり鼻血が出たりすることは考えにくいと指摘。「率直に申し上げれば、『美味しんぼ』で取り上げられた内容は、的が外れていると思います」「200万人の福島県民の将来への生きる力を削(そ)ぐようなことはしてほしくない」と訴えた。

 安斎氏の原発事故後の発言に関して私は以前から疑問を感じていたが、このコメントを読んで明らかに被ばくによる健康被害を過小評価していると思った。しかも、実際に倦怠感があったり鼻血が出た人が有意に多かったという調査結果を無視した意見だ。安斉氏の放射能リスクに関しては高岡滋氏が批判的な見解を述べているが、高岡氏の指摘はもっともだと思う。

 安斎育郎氏の放射能リスクに関する諸見解について(togetter)

 今年は原発事故から3年目。甲状腺がんをはじめとした健康被害の急増が懸念される時期に突入した。今回の騒動で、いよいよ被ばくによる健康被害に対する言論封じが本格的に始まったと感じざるを得ない。この国は、どんどん自由に物が言えないようになっていくだろう。大事なのは同調圧力に負けずに主張していくことだと思う。

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http://litigationwithnaomiikezawa.jimdo.com/弘中絵里弁護士への通知書/

相手方が提出した「陳述書」や「診断書」に書かれている病名,「処方されている薬」は「私生活についての重大な秘密」であり「第三者が閲覧等を行えば,社会生活を営むのに著しい支障を生じるおそれがある」との理由から記録閲覧制限の申立てがなされています。

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