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2013/10/25

新規の公共事業より老朽化対策を

 今日の北海道新聞のトップ記事は「護岸点検 別の浸食見逃す」とのタイトルで、JR函館線の護岸浸食を北海道新聞社のヘリが見つけたことを報じていた。

 10月22日、JR函館線の八雲町付近で海岸の護岸壁が浸食されて穴があき、土砂崩れが生じて電柱が傾くという事態が発生した。このためにJR北海道は23日から復旧作業に着手し、24日には道南地方で護岸壁の緊急点検を行い「異常がなかった」としていたのだ。ところが北海道新聞社が崖崩れの現場をヘリで取材した際に、近くの別の場所で線路脇の斜面が大きく崩れているのを発見した。22日に発見された護岸壁の南端に当たる場所だ。放置したなら浸食が進み危険な状態になるのは間違いない。

 新聞記事によると、穴が開いた護岸壁は建設されてから68年が経っているという。波による浸食とコンクリートの劣化により護岸壁自体がボロボロになってきているのだろう。この記事を読み、これからはこういう事例が頻繁に生じるだろうと思った。

 私は海岸の砂浜に生息するイソコモリグモの調査で北海道の海岸を見て回ったが、海岸浸食は極めて深刻だ。浸食防止のために、海岸のあちこちでコンクリートによる護岸や消波ブロックの敷設が行われている。浸食によって砂浜が減少し、護岸によって自然の海岸線がどんどん減少しているのだ。

 鉄道や道路際の海岸線の浸食が進む以上、コンクリート護岸も維持しなければならない。しかしコンクリートには寿命がある。消波ブロックも波を受け続けるとボロボロになってくる。コンクリート護岸とて同じである。68年も経過したならば、穴があくのも当然だ。

 これからの時代は、高度経済成長時代につくったコンクリート建造物が次々と寿命になる。護岸に限らず、道路や橋梁などもどんどん劣化し、補修や造り替えが必要になる。インフラの維持管理に今まで以上にお金がかかる時代になるだろう。

 一方で、未だに必要性の乏しい道路やダムを造り続けているのがこの国の現状だ。先日、日高方面に出かけたのだが、高規格幹線道路である帯広広尾自動車道の建設が相変わらず続いている。高規格道路というのは実質的には一車線の高速道路だ。この道路は帯広を起点として広尾まで建設を予定しており、現在は更別まで開通している。しかし、帯広から広尾には国道があり、帯広から遠ざかるに従って交通量も減る。どう考えてもここに高速道路など必要はない。

 民主党政権で凍結されたサンルダムや平取ダムなども、建設に向けて動き出してしまった。ダムの弊害よりも目先の利権のほうが大事なのだろう。

 また、東北地方北海道沖地震の津波被害を受けたところでは、巨大な防潮堤の計画もある。しかし、百年に一度、あるいは数百年に一度の大津波に備えて巨大な防波堤を造ったところで、大津波がくる前に劣化してしまう可能性もある。巨大構造物は自然も景観も破壊してしまう。なんでも構造物で対処しようという考えも間違いだ。

 老朽化したインフラは必要性を再検討し、必要なものは造り替えや補修などの対策をきちんととる一方、不要あるいは弊害が大きいと判断されるものは潔く撤去も考えるべきだ。これからは人口が減っていくのであり、新規の公共事業に巨額の税金を投じるのはいい加減にやめてほしい。

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コメント

謹啓、ドイツのブレーメン市立病院は第一次世界大戦後の老朽化した建造物でしたが骨格が頑丈で配管は外部を貫通し露呈しているものの作っては壊しを繰り返さず手入れして200年使うと語ったのが脳裏に焼き付いております。オリンピックの国立競技場も60年間隔で解体新築を繰り返すのは止めて戴きたいと存じます。敬具

関さん

建設されて数十年で壊され建て替えられる日本の建造物を見ていると、どうにかならないのかと思えてなりません。

造っては壊し、造っては壊し・・・というのも利権構造のなせる技でしょう。資源の無駄遣いを反省すべきです。

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