出版契約保全システムの本当の目的
文芸社には著作者保護制度というものがある。文芸社の説明によると、支払い額が確定した印税と著者から入金された出版費用を信託財産化することで、著作者の金銭的な権利を安全に保護することが目的なのだという。
こう説明されれば、とにかく著者にとって有利なシステムだと感じるのが普通だろう。しかし、何のために印税や出版費用を保護しなければならないのだろうか? 端的に言ってしまえば、万一倒産した場合でも支払った費用や支払われるべき印税は保全されますよ、ということなのだ。説明文には「倒産」などという言葉はもちろんまったく書かれていないが、倒産を視野に入れたシステムであるということに他ならない。
先日、消費者庁から3カ月の業務停止命令を出された日本文学館にも、「出版契約保全システム」という同様の制度があることが「クンちゃん」によって報じられている。
確かに、出版契約をして本が出版される前に倒産してしまったなら、本も出なければお金も戻らないというあまりに悲惨な被害者が出てしまう。しかし、冷静に考えてみるなら、こんな風に倒産を前提としたシステムが必要な会社など一体どれほどあるだろうか? 何故こんなシステムが必要なのかと不思議に思わないだろうか?
文芸社や日本文学館がこのようなシステムを取り入れたのには、当然ワケがある。つまり、共同出版の御三家と言われた新風舎・文芸社・碧天舎のうち、はじめに倒産した碧天舎はこうした被害者を出して被害者組織までできた。文芸社のライバルである新風舎の倒産の際にも同じような被害者を出し、大きな批判を浴びた。
同業者の文芸社としては、著作者保護を打ち立てることで「安心」をアピールしたということだろう。しかし、碧天舎にしても新風舎にしても、そもそも悪質な商法を新聞や雑誌などで大きく宣伝して顧客を集めるなど、無謀な事業の拡大などの行為が倒産を招いたのである。同じ悪質商法を大々的に展開している文芸社や日本文学館が、悪質商法そのものを改善せず、倒産対策だけを行うなどというのはもってのほかではなかろうか!! 著作者保護制度・出版契約保全システムなどというのは、「安心」を売りにした悪質商法への勧誘作戦なのである。
本当に良心的な自費出版社であれば、契約の減少などで経営危機に陥った場合、事業の縮小や合理化などの対策をとり、どうしても見通しが立たなければ適切な時期に事業を畳むなどして著作者に迷惑をかけないようにするのではなかろうか。
著者からの費用で経営している会社が、新聞や雑誌広告、出版説明会などに投資して事業の拡大を図ることの危うさこそ著者は見抜かなければならない。こういうやり方は自転車操業になりかねないのだ。「著作者保護制度」「出版契約保全システム」は、ないよりはあったほうがいいシステムではあるが、悪質商法への勧誘作戦の一環であることを忘れてはならないだろう。
また、この制度がほんとうにきちんと運用されているのかどうかも疑問が残る。名前ばかりで中身がないのであれば、まさに詐欺同然である。日本文学館の「出版契約保全システム」がちゃんと機能するのかどうか分からないが、万一の場合に最悪の被害者が出ないことを願いたい。
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