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2013/06/10

居辺川の現状(その2)

 前回の記事では居辺橋(下流の方の居辺橋)より下流側の河床低下を見たが、その上流では大きな浸食は見られない。砂礫川原が広がる河川がしばらく続いている。
P10408461


 下の写真は上流の方の居辺橋から上流側を見た光景だ。ここから上流が、今回帯広建設管理部が遊砂地(2カ所)と護岸工、床固工(12基)を計画している場所だ。このあたりは砂礫川原が広がりセグロセキレイやイカルチドリの良好な生息地になっているのだが、この写真の川原は遊砂地工の予定地だ。
P10408482


 帯広建設管理部によると、遊砂地工は「河川の広がりを利用して、洪水流を減勢して土砂を計画的に堆積させます」とのこと。計画図面を見ると、遊砂地工の上部と下部に堰を造り、その間にも6本ほどの河川を横断する構造物を入れるようだ。おそらく階段状態にするのだろう。つまり、洪水のときにここに砂礫を落とし、下流に土砂が移動しないようにするということだろう。

 遊砂地工については以下を参照していただきたい。おおよそのイメージがつかめると思う。

遊砂地の仕組みと役割(福島河川国道事務所)

 オカバルシ遊砂地(ikuzus-h雑記帳)

 もしここに遊砂地ができると、土砂が移動せずに安定するため、砂礫川原がなくなってしまうのではなかろうか。さらに下流へ砂礫が供給されなくなるので、下流の浸食が進むことになる。

 居辺橋は平成15年の大雨による洪水で橋のたもとの河岸がえぐられて道路が陥没し、自動車が川に転落するという事故が起きた場所だ。この災害によって橋が架けかえられた。

 この遊砂地工予定地のすぐ上流に廃校になった東居辺小学校がある。平成15年の大雨のときにはこの小学校のあたりの河岸が浸食されて河岸の建物が流されるという被害が生じた。もっともここは河川の氾濫原であり、洪水があれば浸食されるのは当たり前の場所だ。このようなところに小学校を建ててしまったのが間違いなのである。

 今回の砂防事業はこの時の洪水が契機になっているそうだ。しかし、すでに被災地の復旧工事は済んでいる。しかも小学校はすでに廃校になっているのだから、洪水による人的被害を考える必要はない。

 下の写真はさらに上流の東居辺橋から下流側を見た光景だ。正面に見える崖は河川への砂礫の供給源になっている。ところが、近年この崩壊地の浸食が深刻になってきており、北海道は植樹を行って斜面の安定化を図るという。非常に急な斜面なのだが、重機が入って治山工事をしていた。
P10408493


 帯広建設管理部の説明では、このあたりに堆積した土砂が洪水で一気に下流に流される恐れがあるという。それを抑制するために、ここの下流部にも遊砂地を予定している。  東居辺橋から上流が床固工の設置区間になる。下の写真の中央あたりが最下部の床固工予定地だ。つまり、ここから上流に向かって12基もの堰を造るという。
P10408514


 下は、東居辺橋の上流の柏葉橋から下流側を見た光景だ。このあたりもそれほど浸食はされておらず、砂礫川原がある。
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 さらに上流の東大橋までいくと、浸食が目立つようになる。
P10408546


 帯広建設管理部の説明では、ここの上流の清進橋下流の河岸・河床の浸食が著しいために床固工によって土砂の流出を食い止めたいとのことだった。たしかに清進橋の下流は河岸と河床が浸食されていた。この下部が最上部の床固工予定地になる。
P10408907


 しかし、ここのすぐ上流には落差工が設置されていたのだ。
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 ここはもともと河床勾配が急なところだが、この落差工によってさらに河床低下が生じたのだろう。しかし、帯広建設管理部はここに落差工があるという説明を私たちにはしていなかった。

 清進橋の上流の清進1号橋までくると、もはや川というより直線化した三面張りの水路となり、ところどころに落差工が設置されている。このような水路が上流へと続いている。
P104086510


 居辺橋から上流部を見て感じたのは、ここでは砂防工事が必要な場所はほとんどないということだ。

 清進橋の下流部はたしかに河岸・河床の浸食が見られる。しかし、地形図を見るとこのあたりの右岸は崖状になっている。段丘面を流れてきた川が谷に入るところだから勾配がきつく、もともと浸食が活発なところなのだ。浸食が加速したのは、農地の排水事業によって三面張りの水路としたため激しい流れが発生するようになったからだ。つまり、清進橋下流の浸食は農地の排水事業と落差工が原因だろう。

 しかし、浸食が著しいのは一部だけで、柏葉橋あたりまでくると浸食はそれほど生じていない。このままで特に問題があるとは思えない。12基もの床固工と2基の遊砂地工という大工事をする必要性が、私には皆目分からない。

 このような工事をしたら、下流への砂礫の流下が抑制され、新たに下流の河床低下が生じるだろう。さらに砂礫の移動が抑えられるために河川敷に植物が繁茂し、砂礫川原が消失する可能性が高い。砂礫川原特有の野鳥や昆虫類への影響は甚大になるだろう。居辺川の砂防事業は川を殺す事業と言わざるを得ない。

 札内川ではダムを造ったことで河畔林が繁茂してしまい砂礫川原の再生事業が計画されているが、砂礫川原再生も対処療法にすぎず、ダムを壊さない限り元の状態に戻すことは不可能だ。居辺川で砂防工事を行えば札内川の二の舞となって砂礫川原が消失し、下流部ではさらに河床低下が進むだろう。生態系を破壊する愚かな工事は止めるべきだ。

【関連記事】
砂防工事で居辺川を殺してはならない 
川を荒らす農地の排水事業

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