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2013/05/03

直面する平和憲法の危機

 今日は憲法記念日。思い返せば、これまで憲法記念日にどれだけ憲法のことを考えてきただろうか? 連休の一日として、あまり深く考えもせず過ごしてきたように思う。

 しかし、今年ほど憲法の危機を感じることはない。もちろん安倍政権が96条を変更し、改憲に向けて大きく舵を切ろうとしているからだ。安倍首相は就任以来、アベノミクスを唱えて支持を広めつつ、消費税増税、公共事業ばら撒き、TPP交渉参加と勢いづいている。そして、夏の参院選に向けていよいよ改憲へとまっしぐらだ。これほど危険なことはない。

 私はもちろん戦争を体験した世代ではなく、高度経済成長の中で育った。しかし子どもの頃にはまだ街角に傷痍軍人の姿があり、戦争の傷跡を垣間見ることができた。小学生のときには東京大空襲のことを書いた本も読み、戦争などという殺し合いは絶対にしてはならないし、あの戦争を経験した日本人は戦争を拒否しつづけるに違いないと思った。子どもにすらやってはいけないと分かることを、大人が分からないはずはないと・・・。はかり知れない大きな犠牲を経て獲得した平和憲法に安心感を覚えていたのかもしれない。

 しかし、現実はそう甘くない。この世の中にはお金や利益のためなら「殺し合い」という残虐な行為にためらいのない政治家が一定程度いるのだ。そして、そのような政治家を支える財界やマスコミ。ところが、それに簡単に迎合してしまう一部の市民がいる。とりわけ頭の中に戦争の残像もない若い世代は、戦争を社会の閉塞感のはけ口のように考えてしまうのかもしれない。しかし、彼ら政治家は決して戦場には行かない。戦場に行かされるのは従順な国民だ。

 ここで考えねばならないのは、なぜ昨年の衆院選で民主党が敗れたのか、政権を握った自民党は何を目指しているのかだ。以下の渡辺治さんの解説が参考になる。

渡辺治さん(一橋大学名誉教授)に聞く【安倍政権誕生の背景と運動の課題】保守主義と新自由主義の結合 政治の対立軸示さないマスコミ(Daily JCJ)

 国民は、民主党が政権をとった選挙で自民党の推し進めてきた新自由主義にノーを突きつけた。しかし、民主党の首相が次々と交代する中で、民主党は変節し国民の期待を裏切った。彼らは圧力に抗えなかったのだ。こうした状況の中、小選挙区制による選挙が自民党の圧勝を招いてしまった。上記の記事では「いわば左からの支持者も右からの支持者も離反したのが、民主党大敗の原因です」としている。

 そして渡辺氏は、マスコミが「新自由主義・改憲の政治」か「反新自由主義・憲法の政治」か、という対抗の構図を示さなかったことが、自民党を勝利に導いたと見ている。

 私は、さらにマスコミの世論調査が自民党政治を後押ししているように思える。マスコミの行っている世論調査は第三者のチェックも入らず、それ自体が公平・公正・中立なものであるのかも分からない。もちろん、マスコミは世論調査の際に「新自由主義・改憲の政治」と「反新自由主義・憲法の政治」のどちらを望むか、という質問もしない。内閣支持率、支持する政党、経済政策の評価、改憲、TPP交渉参加の是非ばかりが独り歩きしている。マスコミが頻繁に実施する世論調査は、「多数の側にいることを好む日本人」にとって、意思決定に大きな影響を与えている。

 憲法記念日の今日、ぜひ原点に立ち戻って憲法の意味を考えてほしいと思う。戦争という殺戮を許していいのか。自分や家族、子や孫が戦争に行くことを望むのか。戦争の名のもとに人を殺してもいいのか。自分は人を殺せるのか・・・。

 自衛隊だけが戦争に行くと思うのは甘い。一度戦争肯定への道を選んだなら、犠牲になるのは国民だ。憲法を守って戦争を拒否するのも、改憲によって戦争のできる国にしてしまうのも、私たち国民ひとりひとりの判断に関わっている。そして私たちの決断は次世代へ大きな責任を負っている。

消費税と同じように憲法を変えていいのか(そりゃおかしいゼ)

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コメント

謹啓、息子2人を日中戦争、ノモンハンで喪った祖父や伊号潜水艦で駆逐艦の爆雷攻撃で死線を潜り抜けた父は憲法9条の絶対的支持者でした。「戦争は大量破壊と大量殺人を前提とした投機である。勝てば領土、賠償金、奴隷を得るが良い目を見るのは支配者と一握りの死の商人だ」と主張しました。大倉財閥の創始者の大倉喜八郎は鉄砲商として幕府軍と維新軍の双方に競わせて値を吊り上げ暴利を貪り日露戦争では缶詰に砂で上げ底したり軍服の縫製を手抜きし糊付けしたりしましたが203高地の戦闘で殆どが戦死し死人に口無しとなりました。敬具

戦争を体験している世代がどんどん減っていき、テレビやインターネットで戦争の場面が映し出される時代、若い人たちはその凄惨さ、酷さ、悲惨さ、恐ろしさなど分からないのかも知れません。あるいは、自分が戦場に行くかもしれないなどとは考えていないのか・・・。

それにしても、この極端な右傾化に鳥肌が立つ思いです。

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