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2013/04/18

木村政昭氏の予測する伊豆・小笠原海溝の巨大地震(追記あり)

 東京に行った際、気になっていた木村政昭氏の本を3冊入手した。木村政昭氏は琉球大名誉教授で海洋地震学者だが、「地震の目」「噴火の目」という独自の理論で数多くの地震や火山噴火を予測し的中させてきた。たとえば1986年の三原山噴火、1991年の普賢岳噴火、1995年の兵庫県南部地震、2004年の新潟県中越地震、2011年の東北地方太平洋沖地震など。

 入手した3冊は、「地震の目で予知する次の大地震」(マガジンランド、2012年3月発行)、「富士山大噴火 不気味な5つの兆候」(宝島社、2011年8月発行)、「東海地震も関東大地震も起きない! 地震予知はなぜ外れるのか」(宝島社、2013年3月発行)。「東海地震も関東大地震も起きない!」には、木村氏の最新の地震予測が掲載されている。

 私は、木村氏が多くの地震や噴火を予測し当ててきたことを知って以来、「地震の目」「噴火の目」という理論に興味を抱いていたのだが、木村氏の本を読んでその概要が分かってきた。もちろん「地震の目」理論は日本だけではなく、海外の地震にも当てはめることができる。

 木村氏の「地震の目」理論はプレートテクトニクスに基づいたもので、大地震の予測法である。かいつまんで説明すると以下のようになる。

・数十年にわたって巨大地震(M6.5以上)が起きていない場所(第1種地震空白域)を探す。
・第1種地震空白域に、ここ数十年間に発生したM6以上の地震の震源地をプロットすると、震源地がドーナツ状に分布していく(地震の輪)。
・「地震の輪」の中に人の黒目のように地震が発生している場所が現れることがある(第2種地震空白域:固着域)。
・第2種地震空白域に、さらに同じ時期に起きた地震の震源を「M5以上」「M3以上」などと条件を変えてプロットすると一定の地域に黒い点が集中してくる。これを「地震の目」と呼び、大地震の震源地となる。
・「地震の目」は時間とともに一定方向に移動していくことがあり、その延長線上が本震の震源地となる。
・「地震の目」の大きさと地震の規模はほぼ比例しており、「地震の目」の長径からマグニチュードを推定することができる。
・「地震の目」では地震発生回数が3つの山をもって段階的に増えていくが、最初に地震が活発化してから30年±3年で大地震が発生すると予測される。

 火山噴火もプレートの移動によってマグマに圧力がかかることで生じるのであり、地震と噴火は同根である。興味深いのは、大地震が発生する前には、震央に近い火山から遠い火山へと、波紋のように順に噴火していく現象が見られるというのだ。地震と火山噴火は密接な関係にある。

 木村氏は噴火についても地震と同様に、大噴火の前、過去30年以上にわたり火山の地下で発生した地震を解析する手法で「噴火の目」理論を導きだした。噴火においても地震と同様に地震回数に3つのピークがあり、最初に地震が活発化してから35年±4年後で主噴火に至ると考えられるそうだ。

 地震予知などできないという地震学者は多いが、木村氏の本を読めばそれは大きな間違いであると理解できるだろう。何しろ、木村氏には予知の実績がある。「地震の目」理論でおおよその発生年を予測し、さらに宏観現象(電磁波や地磁気の異常、ラドン濃度の変化、地震雲、地下水の水位変化など)と言われる様々な地震前兆現象を組み合わせることで、地震発生時期を絞り込むことも決して実現不可能ではない。

 政府はかなり前から東海・東南海・南海地震がいつ起きてもおかしくないとして警告を発してきた。しかし、これらの地震は起きずに兵庫県南部地震や東北地方太平洋沖地震という大地震が起きて大きな被害がもたらされた。「東海地震も関東大地震も起きない!」では、なぜ国の予知が当たらないのかということにも言及しているのだが、この国では地震予知の予算の使い方を間違えているとしか思えない。

 ところで、もっとも気になるのは最新刊で木村氏の予測している今後の巨大地震だ。それによると日本近海でM8からM9クラスの「地震の目」が複数ある。

 このうちM9と予測しているのは伊豆・小笠原海溝に沿った鳥島南方沖を震央とする「地震の目」だ。発生予測年は2012年±3年。ということは、あの悪夢のような超巨大地震がいつ起きてもおかしくないことになる。気になるのはここで地震が起きた場合に破壊される断層の長さだ。M9の東北地方太平洋沖地震では、長さ500km幅200kmにわたって断層が破壊された。これと同じ規模の破壊が生じると仮定するなら、関東地方に近いところにまで達する可能性があり、首都圏もかなり揺れる可能性がある。もちろん大津波も押し寄せるだろう。関東地方は十分な警戒や備えが必要だ。

 もう一つ気になるのが、東北地方太平洋沖地震のアウターライズ地震(海溝の外側で起きる地震)の「地震の目」だ。これは2020年±3年、M8.0となっている。

 また、九州から南西諸島にかけても「地震の目」がある。ひとつは日向灘南部で、2020年±4年、M7という予測。もう一つは奄美大島東方沖の2019年±3年、M8.8。南西諸島方面も注意が必要だ。

 もちろんこれらは予測であり、巨大地震が発生することでプレートにかかる圧力が変化した場合には「地震の目」も変わることがあるだろう。

 しかし、これだけ巨大地震の「地震の目」が日本近海に現れている以上、警戒を怠ってはならない。昨日は三宅島の近海と石垣島近海で中規模地震があった。これらの地震も予測されている巨大地震と無関係ではないだろう。とりわけ伊豆・小笠原海溝には歪がたまっていると考えられ、地震だけではなく伊豆諸島や富士山の火山噴火も懸念される。

 木村さんのこれだけの実績がありながら、政府は「地震の目」理論に関心を示さないようだ。マスコミは相変わらず、東海・東南海・南海の連動地震や首都直下地震ばかりを取り上げている。しかし、木村氏は東海から南海にかけての大地震や首都直下地震はそれほど逼迫していないと言う。原発問題もそうだが、この国の地震予知や防災の姿勢には溜め息が出るばかりだ。

【4月20日追記】
 ロシアの研究者が、独自の地震予知理論により2013年から2014年にかけて日本の太平洋側でM9クラスの巨大地震が起きると予測している。木村さんが巨大地震を予測している伊豆・小笠原海溝付近に近く、超巨大地震の再来が懸念される。

ロシア人学者「一年半以内にM9が日本で発生する可能性あり」関東東部から南海トラフのエリアで前兆! (正しい情報を探すブログ)

 もし数日前に巨大地震の予知ができ、被害が想定される地域の住民を事前に避難させることができれば、人的被害を限りなくゼロに近づけることができるだろう。国はこういう研究にこそ力を入れてほしい。

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