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2013/02/15

金坂滋行政書士の処分で公文書の重要部分を黒塗りにした東京都

 東京都行政書士会に所属の金坂滋行政書士が、職務上請求書を使用して私の戸籍を不正に取得していた件で、私は東京都知事に対して金坂滋行政書士の懲戒処分を求め、東京都は2012年11月9日付で処分した。

行政書士に対する行政処分について 

処分内容
1月間の業務の停止
(平成24年11月10日から同年12月9日まで)

処分理由
被処分者は、平成20年8月22日、職務上請求書を使用して戸籍謄本を請求したが、当該戸籍謄本請求に関して依頼人の本人確認をせず、依頼について記録することもしなかった。このことは、行政書士法第10条の規定に違反する。
 被処分者は、業務に関する帳簿を備えていなかった。このことは、行政書士法第9条第1項の規定に違反する。
 被処分者は、日本行政書士会連合会の定める領収証を使用していなかった。このことは、行政書士法第13条及び東京都行政書士会会則第28条の2の規定に違反する。

処分根拠
法第14条第2号

*上記の東京都のホームページ(報道発表資料)では行政書士の氏名や事務所所在地が削除されているが、掲載当時は氏名、事務所所在地、登録番号まで公表されていた。

 しかし、ここに書かれている処分理由だけでは金坂行政書士がどのような経緯で不正行為を行ったのかまったく分からない。何しろ、「行政書士は、その業務に関する帳簿を備え、これに事件の名称、年月日、受けた報酬の額、依頼者の住所氏名その他都道府県知事の定める次項を記載しなければならない」と行政書士法第9条で定められているのに、帳簿を備えていなかったというのである。しかも、日本行政書士会連合会の定める領収書も使用していない。これが事実なら、行政書士として「基本のキ」もできていないことになるし、不正の温床になる。きわめて重大な事実だ。

 金坂行政書士の不正の背景には何があったのだろう? 東京都行政書士会の調査や東京都の聴聞に対して、金坂行政書士は何と説明していたのだろうか? このことを知るには処分に係る公文書を入手するほかないし、被害者である私には知る権利がある。そこで、11月22日付で東京都に対して情報開示請求を行った。開示請求した公文書名は「平成24年11月9日に懲戒処分があった金坂滋行政書士の処分に関わる公文書の一切」、開示を必要とする理由は「懲戒請求を行った当事者として、行政処分の経緯を知るため」とした。

 東京都情報公開条例によれば、開示するか否かの決定を2週間以内に行うことになっている。ところが「開示請求に係る公文書に都以外のものに関する情報が記録されている」との理由で、開示決定の期間が1月25日まで延長された。なんと、2カ月以上も引き延ばされたのだ。結局、2つの公文書が非開示、8つが一部開示となった。複写の手数料などを支払って開示文書が届いたのが2月14日。

 結論を言えば、肝心なところはすべて黒塗りになっていた。開示された文書から分かったのは、単なる処分までの「流れ」である。具体的には、東京都行政書士会に事実確認と報告を求める → 東京都行政書士会から報告書の提出 → 日本行政書士会連合会に聴聞実施の通知 → 金坂行政書士への聴聞(2回) → 処分についての審査 → 処分の決定 → 処分の通知、という事実が分かっただけ。報告書や聴聞記録はすべて黒塗りだったし、「不利益処分の原因となる事実」まで黒塗り。

 結局、開示決定に2カ月もかかったのは、都が黒塗り部分を決めるのに時間がかかったということなのだろう。それにしても、ここまで黒塗りにするとは呆れて物も言えないし、開示請求者(被害者)をないがしろにしているとしか思えない。また、非開示にされた2つの文書は、私が送付した懲戒請求の収受文書だ。これが非公開とは理解不能だ。

 黒塗りの主な理由は以下。
・個人に関する情報であるため(東京都情報公開条例7条2号)
・公にすることにより、個人(被聴聞者)の権利利益を害するおそれがあるため(同)
・公にすることにより、行政書士の懲戒処分に係る事務の適正な遂行に支障を及ぼすおそれがあるため(第7条6号)
・都の機関内部における審議、検討又は協議に関する情報であって、公にすることにより、率直な意見の交換若しくは意思決定の中立性が不当に損なわれるおそれ、不当に都民の間に混乱を生じさせるおそれがあるため(7条5号)

 報告書や聴聞記録の黒塗りの理由は、行政書士の権利利益を害するおそれがあるためだという。しかし、他人の戸籍を入手するという不法行為について明らかにするのは公共の利益に資することである。違法行為がニュースとして報道されるのも公益性があるからだ。ところが、東京都は公共の利益より違法行為を行った行政書士の権利利益を優先するという信じがたい判断をした。そもそも、行政書士法第14条の3第5項で「聴聞の期日における審理は公開により行わなければならない」とされている。公開で行われた聴聞の記録をなぜ黒塗りにするのだろう。

 都の機関内部による審議に関する情報も黒塗り。昨今は、行政が主宰する審議会や検討会なども多くが公開であり、議事録もホームページで公開されるのが普通だ。公開にすることで公平性が保たれ市民の信頼が得られるのに、公開することが「率直な意見の交換若しくは意思決定の中立性が不当に損なわれるおそれ、不当に都民の間に混乱を生じさせるおそれがある」とは恐れ入る。

 「行政書士の懲戒処分に係る事務の適正な遂行に支障を及ぼすおそれがある」というのも理解不能だ。私は、金坂行政書士の処分が決定されてから開示請求したのだから、金坂行政書士の処分に係る事務の適正な遂行に支障を及ぼす訳がない。また、行政書士の処分の種類や程度は「行政書士及び行政書士法人に対する懲戒処分事務処理要領」に基づき、過去の事例とも対比させて行われるのだから、金坂行政書士の調査報告書や聴聞記録を公開したところで、他の行政書士の処分に係る事務の適正な遂行に支障を及ぼすことにはならない。むしろ、公開されることで「事務の適正な遂行」が保たれるはずだ。

 それにしても、「行政書士の懲戒処分に係る事務の適正な遂行に支障を及ぼすおそれがある」という理由はなんと便利なことか。もし恣意的に開示したくないものがあれば、この理由を持ち出すことによって何でも非開示にできる。

 裁判においても、当事者は裁判記録の閲覧や複写ができる。それなのに、東京都は被害者に対してなぜここまで隠そうとするのだろう。情報公開条例があっても、これではほとんど意味をなさない。

 開示決定に不服がある場合は、知事に対して異議申し立てをすることができる。こんな黒塗りだらけの開示決定に黙っていることにはならない。もちろん、異議申し立てをするつもりだ。

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