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2012/08/16

緑岳でのマツダタカネオニグモ調査

 14日は大雪山の緑岳中腹の岩塊地に出かけた。前回の桂月岳に続き、高山の岩塊地でのマツダタカネオニグモの調査だ。

 高原温泉から急坂を登ると、まだ雪渓の残る第一花畑に出る。もう花の盛りは過ぎていて、チングルマは大半が実になっている。ピンクのエゾノツガザクラの花は終わってしまったようだが、アオノツガザクラ(写真上)やエゾコザクラ(写真下)はまだ十分楽しめた。

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 第一花畑から第二花畑を経て、ハイマツの緩斜面をたどると緑岳への大斜面に出る。岩塊の斜面なのだが、ハイマツも結構多い。斜面の中ほどより少し上、標高1850メートル前後のところにハイマツの少ない露岩帯があり、そこが目的地だ(緑岳に向かって右側に崩壊斜面があるが、左側の岩塊斜面に登山道がついている)。

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 前日は雨天だったが、この日は晴れて登山日和になった。岩の間に網を張るマツダタカネオニグモは、晴天になると一斉に網を張り始めることが多い。だから、ここに生息していたならこんな日は網が見られる可能性が高い。

 緑岳の大斜面を登り始めると、風がどんどん強くなってきた。ときどき吹き飛ばされそうな強風に襲われひどく寒い。さっきまでTシャツ一枚で汗をかいていたのだが、長袖シャツを着て、さらに合羽の上着も着込んだ。それでも寒い。

 目的地の岩塊斜面でひとしきり網を探したのだが、結局見つけることはできなかった。やはり大雪山の高山帯には生息していないのだろうか。

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 この岩塊地にはもちろんナキウサギが生息していて、ときおり鳴き声が聞かれる。岩穴には貯食もあった。ハイマツばかりでナキウサギの餌になる植物が豊富とは思えないのだが、どこからかちゃんと植物を集めてきている。こんな厳しい環境で生きているナキウサギの生命力に驚かされる。

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 日本の山は、冬には世界一の強い風が吹くという。これは、ヒマラヤの北と南を迂回してくるジェット気流が日本の上空で収斂するためだそうだ。(小泉武栄:美しく世界的にも得意な日本の山 参照)

 夏でも日によってはかなりの強風にさらされる高山の露岩帯は、円網を張るクモにとっては条件のよい環境ではないのかもしれない。雲海におおわれることが多ければ餌となる昆虫もそれほど捕獲できないだろう。これまでこのクモが確認されているのは森林帯にある露岩帯なのだが、高山帯より森林帯の方がはるかに条件は良いように思える。

 もちろんこれだけの調査では結論づけられないが、大雪山の高山の露岩帯には生息していない可能性の方が高いような気がしてきた。

 高原温泉には、世界でここでしか知られていないダイセツヒナオトギリの群落がある。かつてはもっと広く分布していたもののここだけに取り残されてしまったのだろうか。なんとも不思議な植物だ。

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