高裁の橋本昌純裁判長の追及にたじたじの北海道側弁護士
「えりもの森裁判」は昨年10月14日の不当判決を受けて控訴し、現在は高裁で審理が行われているのだが、これが意外な展開になってきている。
高等裁判所の橋本昌純裁判長は、この裁判の主張の中でもっとも分かりやすい過剰伐採(「地ごしらえ」による伐採)における損害に焦点を当て、北海道に対して「損害がない」ことを立証せよと求めているのだ。
北海道は受光伐(稚樹等の生育に必要な空間や光環境を確保するための上層木の伐採)として376本の立木を特定して販売した。また、それ以外に56本が伐採の際の支障木として販売された。ところが、これらの販売木以外に403本もの立木が伐採され、現場は「ほぼ皆伐状態」になってしまったのである。403本のうち材として価値が認められている直径6センチ以上の立木は327本あった。
北海道はこの403本の伐採は植林をするための「地ごしらえ」により伐採したのであり、その結果として皆伐状態になったという不自然な主張をしている。
伐採跡地は誰がどう見ても受光伐ではなくて皆伐だし、販売対象とはなっていなかった多数の木が「地ごしらえ」名目で伐られてしまったのは一目瞭然だろう。ところが、一審では不思議なことに、この過剰伐採による損害すら認められなかったのだ。いったいどういう思考をしたらそんな結論になるのか、頭を抱えてしまう判決だ。
高裁の裁判長に「1本でも地ごしらえによる損害はなかったのか」と質された北海道は、破綻した釈明を始めた。財産的価値のある立木は受光伐と支障木処理の際に伐採され、その跡には財産的価値のない枯損木や著しく腐朽した木、かん木しか残っていなかった。これらを「地ごしらえ」によって伐採したので、財産的損害はない、というのだ。つまり327本はすべてが「枯損木、著しく腐朽した木、かん木」だったというあり得ない主張を始めたのだ。一審では一切主張していなかったことだ。
そこで、控訴人らは、327本は北海道の主張するような「枯損木、著しい腐朽木、かん木」ではなく、財産的価値のある立木であることを現場で撮った写真で示したのだ。
昨日14日の第三回の口頭弁論では、裁判長から「財産的価値ではなく後継樹としての価値がある木はゼロだったのか」、「植林した苗木は価値がないのか」と質され、道側の藤田美津夫弁護士が「植林した苗木は価値がある」と認めざるを得ない一幕もあった。また控訴人らが示した証拠写真については「場所が特定できない」など、たじたじとなっていた。
北海道は「損害がなかった」とするために、矛盾した主張をせねばならなくなっている。控訴人らの主張をよく理解した橋本裁判長の鋭い指摘によって、化けの皮がどんどん剥がれてきたようだ。
高裁の裁判長は、北海道が「損害がない」ことを立証できなければ、一審の判決を維持できないと考えているようだ。まっとうな判断を期待したい。
次回期日は8月7日(火)13:10 札幌高等裁判所
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