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2012/05/11

警察の真実を伝える寺澤有著「本当にワルイのは警察」

 警察問題を追っているジャーナリスト、寺澤有氏の「本当にワルイのは警察」(宝島社新書)を読了した。

 私も警察関連の本は何冊か読んでいるので、警察といえば「裏金」やら「違法捜査」などを思い浮かべてしまう。しかし、この本を読むと、裏金から始まって拳銃のヤラセ押収、警察官のセクハラやレイプ事件とそのもみ消し、個人情報の流出、天下り、公安警察の問題・・・等々、悪事や不正の数々に目を見張る。こういう組織が犯罪の取り締まりをしているのだから、開いた口が塞がらない。

 とても読みやすい本なので是非多くの人に読んでもらいたいのだが、とくに印象に残ったことをいくつか紹介したい。

 ひとつは、東日本大震災を利用した裏金づくりだ。震災で亡くなった方の遺体は変死体として扱われるため、警察官が犯罪性の有無を判断する「検視」を行い、医師が死因を決定する「検案」を行うことになっているという。そのために変死体を検案した医師には謝礼が予算化されているのだが、これが検案した医師に支払われず、書類上では支払ったことになっていることがあるそうだ。医師への謝礼(一体3000円)が、裏金としてプールされていることは間違いないという。これは寺澤氏が情報公開によって開示した資料から判明したことである。

 東日本大震災では多数の犠牲者が出て医師が検案を行っているのだが、医師に支払われるべき謝金がどうやら裏金にまわったらしい。震災による遺体の検案が1万件なら3000万円の裏金がつくられることになる。被災者や遺族の悲しみを踏みにじる行為だ。

 警察の裏金問題は今では誰もが知る事実となったが、あれだけ明るみになった警察の犯罪がいまだに続けられているのだ。しかも大震災の被災者を利用して裏金をつくるという感覚は尋常ではないし、許されることではない。また、検案の謝金だけではなく通訳謝金(外国人の被疑者を取り調べる際に民間人の通訳に支払う謝金)に関する会計文書も捏造しているという。懲りずに裏金づくりに励む警察という組織にはほとほと呆れかえる。

 興信所などを通じた個人情報の漏えいも見過ごせない。興信所には警察のOBが関わっているという話は知っていたが、警察から興信所に個人情報が大量に流出しているという。運転免許証・犯歴・加入電話・・・等々。運転免許証の情報は、名前と生年月日から本籍や住所を割り出すのに使われるらしい。

 本書の内容からはやや逸れるが、本籍や住所がわかれば行政書士などの資格を持った者が職務上請求書を使って戸籍を取り寄せることができ(もちろん違法行為だが)、家族の情報も知ることができる。このような不正は日常的に行われている。

 私も興信所を介して行政書士に不正に戸籍を取得されるという被害に遭ったために、行政書士と興信所経営者を被疑者として刑事告訴をしたのだが、警察は告訴状の受理を拒み、東京地検は受理したものの不起訴にした。開示請求によって不正取得の証拠を得ているのだから違法行為は明確であり不起訴は不当だ。捜査機関がまともに対応しようとしない背景には、警察と興信所の癒着が関係していると思えてならない。

 なお、この件に関しては、以下を参照していただきたい。ただし類似した不正事件でも、被害者が警察官であれば被疑者を逮捕して刑事事件にするのだ。ご都合主義というほかない。

興信所を使って私のことを調べていた文芸社 
行政書士が私の個人情報を不正に取得していたことが判明! 
告訴状を送った警察官の速やかなる対応
行政書士による個人情報不正取得事件の中間報告 
警察官らの戸籍不正取得で司法書士らが逮捕、私の告訴は不起訴 

 国民の個人情報保護の意識は高まっているが、本人の知らないところでこともあろうに警察によって個人情報が不正に流されているというのがこの国の実態だ。

 もうひとつ、警察官と電力会社の関係について紹介しておきたい。原発事故後の東電の記者会見での追及で、32人の元警察官が東電に再就職していることが明らかになった。国家公務員で管理職の警察官(警視正以上が該当)の再就職は国家公務員法によって公表対象になっているのだが、寺澤氏によると11人が電力業界へ天下りしているそうだ。もちろん管理職以外にも多数の警察官が電力業界や関連会社に再就職している。

 元警察官の企業への再就職に関しては、「警備」とか「トラブルへの対応」という名目もたつだろう。ところが警察は原発の反対運動をしている人たちの監視や妨害を以前からしているらしい。これは警備などというものではなく反原発運動潰しだ。その具体的なエピソードについては是非本書を読んでいただきたい。今回の福島の原発事故で捜査機関が刑事事件として動こうとしないのは、長年にわたって警察が電力会社を守ってきたこととも関係しているのだろう。

 寺澤氏が警察問題を追及するジャーナリストになったきっかけでもある高校生時代のエピソードも興味深い。

 私も警察官の知人がいるし、警察官のすべてが救い難い悪人だとは思わない。しかしどれほど善良な人でも、警察組織の中に入ってしまえば裏金づくりに加担する犯罪者となる。警察とはそういう組織のようだ。そしてどうしようもないことに、警察に自浄能力はない。

 警察の実態を知り、我々はどうすべきかを考えるためにもお勧めの一冊である。なお、以下は本書に関する寺澤有氏のツイートを集めたtogetter。

寺澤有(@Yo_TERASAWA)さん『本当にワルイのは警察』 

 このtogetterからリンクされている以下のtogetterも面白い。

警察は告訴状を受け取らない 弁護士らのつぶやき 

 警察は私の戸籍不正取得の告訴や文芸社の詐欺容疑の告発(協力出版は詐欺商法か? 文芸社刑事告発回想記参照)を受理せず、東京地検はどちらも受理したが不起訴にした。どう考えても不当な不起訴であり、何のために法律があって捜査機関があるのか分からない。どちらもご都合主義の捜査機関だと思っている。

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