地震予知は公表して被害の軽減に役立てるべき
現代ビジネスに以下の記事が掲載された。
全国民必読日本中がパニックに!?予知技術はここまで進んでいる2日前に「巨大地震の可能性」を発表そのとき、あなたと家族はどうする
私は東日本大震災が起きるまでは、地震予知にほとんど関心がなかった。というより、地震の予知がある程度確立されているということ自体も知らなかった。しかし、3.11のあと北大の森谷武男さんらの「地震エコー」による地震予知のことを知り、日本でも地震予知が行われておりかなりの確率で当てていることを知った。
それで思い出したのが、2年ほど前にイソコモリグモの調査で落石岬に行ったときのことだ。アンテナのようなものが並んでおり、何だろうと不思議に思った。あれは、地震エコー観測用のアンテナだったのだ。このアンテナについては以下の森谷さんの説明を参照していただきたい。
VHF帯電磁波散乱体探査法(地震エコー観測法)による地震予知の研究
北大以外にも、民間で地震予知を行っている団体があるし、個人で予測をしてホームページやツイッターで公表している人もいる。地震エコーと相関性があるラドン濃度を観測している人もいるし、大気重力波などをチェックしている人もいる。電離層の異常も地震に関係していることが分かってきているそうだ。100パーセントの確率で当てることはできないにしても、地震はかなりの確率で事前に予測できるようになってきているのだ。これを防災に活かさない手はない。
ところが、これほどの地震大国であるのに「百パーセント確実な予知しか発表を認めない」というのが国の立場なのだという。だから、予知の研究をしている北大も予知を公表していない。否、昨秋、森谷さんがホームページで公表したらそのページは閉鎖させられてしまったのだ。
国が短期的な予知を公表しない理由には驚いてしまう。元前橋工科大学教授の濱嶌良吉氏は「予知を受けて、企業が活動停止したにもかかわらず、予知が外れたら責任が取れないなどの理由からだ」という。要するにこの国は、当たらなかったときの責任や経済面への影響ばかりを重視するがゆえに、短期予知を無視しているのである。「人命」より「外れたときのリスク」を重視するというのだから、何と馬鹿げた発想だろう。
この発想は原発事故の対処とそっくりではないか。パニックという名目で、スピーディによる予測を公表しなかったあの事例だ。経済を理由に原発を再稼働させようというのも同じだ。目先のことにばかり捉われ、国民の命を守るという姿勢がまったく感じられないのだ。
ギリシャは地震予知がもっとも進んでいて、1993年にピルゴス市をM6・7の直下型地震が襲ったときは、市が事前に警戒宣言を発令し住民を避難させたという。「外れたときのリスク」などというつまらないことに拘らず、予知を取り入れて避難をさせる国があることを日本人は知っておく必要があるだろう。
まして、日本はいつ大地震が起きてもおかしくない地震大国だ。大地震の度に多数の死者を出している。しかし、ある程度の確率で予知ができるのならば、地震や津波で亡くなったり怪我をする人はずっと減らせるのではなかろうか。危険の少ない地域に移動する時間があれば移動し、時間がなければないでできるだけ安全なところに避難する、予知によってそうした行動をとるだけでも被害は相当軽減されるだろう。要は国をあげての危機管理の問題なのだ。
「地震活動が活発化している」「首都圏直下の地震が起きる確率は何年以内に何パーセント」などと言っていても、肝心なときに何の対処もできないなら意味がない。「予知が当たらなくても責任を追及しない」というルールをつくり、予知を公表して対処を呼び掛けるべきだろう。いつ大地震がくるかと日々不安を募らせるよりよほどいい。
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