形式敗訴・実質勝訴の受益者賦課金裁判の意義
「広島地裁が受益者賦課金の市による肩代わりを違法と認定」でお知らせした広島の細見谷訴訟判決の意義について「細見谷に大規模林道はいらない」で報告されている。
形式敗訴・実質勝訴の判決-受益者賦課金への補助金支出は違法-
主文を引用すると以下。
主文
1 第2事件に係る訴えのうち,被告に対して,松田秀樹及び山田義憲に2 1 4 万7 6 3 9円及びこれに対する平成20年9月19日から支払済みまで年5分の割合による金員の賠償の命令をすることを求める部分をいずれも却下する。
2 第2事件原告らのその余の請求及び第1事件原告らの請求をいずれも棄却する。(以下略)
確かに、主文だけを見れば損害金の返還を認めないという判決であり、訴えた住民側の敗訴だ。しかし、この裁判の目的は損害金の返還ではない。原告らは受益者賦課金を自治体が肩代わりして支払うということの違法性を問題にしたのである。
そして、その違法性については明確に違法であると判断している。大規模林道という事業の公益性は認めてはいるものの、受益者賦課金(受益者は西山林業組合)を地元自治体(廿日市市)が負担することの公益上の必要性はない、という判断である。だから、実質的には原告の勝訴になる。
林道事業は林業組合の利益になるがゆえに受益者賦課金が生じる。それを林業組合に代わって地方自治体が支払うことに合理性がないと裁判所は認定した。地方自治体自体はそもそも林道の受益者ではないのだから、これは至極当たり前の判断だろう。今までこうしたことが問題視されなかったのがおかしいといえばおかしいのかもしれないが、多くの市民がこのような実態を知らなかったと言うべきなのかもしれない。
形式的には被告の勝訴なので被告に公訴権がない。原告も訴訟の目的は達したので控訴をせずに判決が確定した。これによって、「受益者賦課金の自治体による肩代わりは違法」という判例ができたのである。これは大きな意味を持つ。
記事の筆者も書いているが、今後、同じような受益者賦課金の自治体による肩代わりについては「確たる公益性」を証明しなければならないだろう。
たとえば、富秋地区国営かんがい排水事業においては、帯広開発建設部は「冠水被害の解消」や「国民の食料の増産」が目的だと説明してきた。しかし、排水事業によって収穫量が増えたことで利益を得るのは自治体ではなく農家である。だからこそ受益農家には事業費の5%という負担が定められているのだ。一部の農家の増収のために、自治体が税金を投入することに合理性があるのかが問われることになる。
こうした税金による受益者負担の肩代わりは全国で行われており、無駄な公共事業の温床にもなっている。ただし今回このような判決が出たからといっても、市民が黙っていたなら自治体はおそらく賦課金の肩代わりを止めようとしないだろう。自分の住む市町村でこのような受益者賦課金の肩代わりが行われているのであれば、市民はどんどん住民監査請求をすべきだ。
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