御用学者のカリウム被ばく論に騙されてはいけない
昨日、松元保昭さん訳、矢ヶ崎克馬さん解説・監修によるECRR2010年勧告の概要が公表されたことを知った。
ECRR2010勧告の概要和訳 矢ヶ崎克馬解説・監訳(Peace Philosophy Centre)
以下が本文。
この和訳の特徴は、原文にない質問と解説が加えられていることだ。これによってICRPの問題点が浮き彫りになっており、ICRPモデルを元にして安心情報を振りまいている御用学者の誤りがよくわかる。質問と解説だけでも読む価値がある。
また、御用学者たちがよく持ち出すのが自然界に広く存在するカリウム40による被ばくのことだ。人体内にはカリウム40が4000ベクレルほどあり内部被ばくを受けているのであり、食品による内部被ばくなどたいしたことがない、という説だ。これについてはこの和訳を引用しながら解説している以下のサイトの説明が分かりやすい。
ECRR2010年勧告の概要・和訳完成(膵臓がんサバイバーへの挑戦)
重要な部分を引用しておこう。
4000Bqのカリウム40とは、人体内にはカリウム40の放射性原子が1.6×10^20個存在するということで、人体はおおよそ60兆個(6.0×10^13)の細胞でできているから、細胞1個あたり263万個の放射性カリウム原子がある。すごい数のように見える。しかし、細胞の寿命を平均して30日(260万秒)とすると、1秒で崩壊するカリウム原子が4000個であるので、260万×4000=100億回の崩壊が起きる。
つまり、60兆個の細胞のうち、その寿命の間にカリウム40からの放射線を受ける確率は100億÷60兆=0.00018=0.018%なのである。カリウム40からのベータ線をたまたま受けて細胞のDNAが切断されたとしても、短時間に同じ細胞に次のベータ線が照射されることはほとんどない。二重鎖切断も起きないからDNAは修復される。一方でハットパーティクルといわれる100ミクロン程度の放射性物質(仮にストロンチウム90としておく)にはやはり100億個ほどの放射性原子が存在する。その放射能が仮に1Bqだとしても、毎秒毎秒1回のベータ線が照射され、それがごく近傍の細胞だけを攻撃する。細胞の寿命ないでは100億回の攻撃を受けるのである。DNAが切断されて、修復する暇もなく次のベータ線が飛んでくる。違いは明かだろう。全身にほぼ均等に分布しているカリウム40と、食物や呼気から吸収された”放射能の塊”を、シーベルトという単位で同じ値になるからといって、同じ影響であるはずがない。
自然放射性物質であるカリウム40とホットパーティクルという微粒子の人工放射性物質を単純に比較するのは誤りであり目くらましだ。
そして、福島の原発事故では関東地方にまでホットパーティクルが飛んできていることが、アー二ー・ガンダーセン氏の報告でも明らかになっている。多くの人がホットパーティクルを呼吸で体内に取り入れてしまったと考えるべきだ。御用学者の巧みな話法に騙されてはいけない。
なお、ICRPの問題点については以下の記事も参考になる。
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