単なる虐待問題に留まらない盲導犬育成団体への疑問
前回の記事でお知らせしたアトムの失踪事件に関して「長崎 Life of Animal」が署名活動を始めたので、まずお知らせしたい。
また、前回の記事に名取さんという方から以下のコメントが寄せられた。
「あんまり細かいことを考えると寿命が縮まりますよw」
名取さんは、盲導犬の虐待問題など些細なことでありブログで問題にするようなことではない、と言いたいようだ。
私がこの問題を取り上げたのは、盲導犬アトムの事件には盲導犬育成に関する奥の深い問題が横たわっているのではないかと感じているからだ。確かに「盲導犬ユーザーが盲導犬を虐待している」ということだけであれば、それは一部のユーザーの問題ということに過ぎないだろう。しかし、以下の記事にもあるように、盲導犬を育成してユーザーに貸与している九州盲導犬協会は、盲導犬アトムが足に障害があり仕事中に排尿をするという異常行動を、目の当たりにしているのだ。
可愛そうな盲導犬アトムの事実(シャムネコのブログ)
アトムの異常な状態を知りながら、貸与を続けている九州盲導犬協会の感覚は理解できない。さらに、九州盲導犬協会が繁殖ボランティア、パピーウォーカー、リタイア犬ボランティアに対して行った説明会での説明がまた不可解で疑惑を生むものだった。
盲導犬アトムの、奇怪な行動分析(シャムネコのブログ)
このブログ記事で指摘されている問題点を以下に転載する。
*現状、盲導犬のユーザーは、老人や無職の人々がほとんどだそうです。その一番の原因は、各協会で行われる一か月という期間、ユーザーと盲導犬がともに寝起きをする訓練に有る様です。仕事を持つ人々に取っては、長期休暇を取る事の困難さが理由で、ユーザーとなるべき壁を打ち砕くことが出ません。今盲導犬を必要とする若いユーザー希望者はおらず、その為同じユーザーに何度も、盲導犬を回を重ねて、渡しているのが現状になっています。これらの事項が、外出時間の少ないユーザーばかりに、盲導犬を譲渡する一番の理由になっている、との盲導犬協会の見解でした。
*さらに活動の少ない盲導犬は、長時間狭いゲージの中で、待機ばかりの時間を過ごす事となってしまうのです。少ない食事量にもかかわらず、基礎代謝がどんどん落ち運動する機会も少なく、不健全に肥っていく事は仕方がない事なのでしょうか?ましてアトムのように、股関節に不具合の有る子を、長時間同じ姿勢で座らせ続けるのは苦痛を伴い、ハンディーを作る原因に拍車をかける事になるのではないでしょうか?
*更に悲しい事に一時期、アトムは廊下に10㎝余りの短い鎖で繋がれ、横にもなれない状況で過ごしていた時が有りました。その際は、いささか(@@)訓練師もユーザーに中止を申し入れ改善させています。
*心ある人の寄付金を、県民の税金を、国民の税金を、さらに多くの時間を掛け、作り上げていく盲導犬、その意義は何処に有るのでしょう?
私はアトムの虐待事件というのは、この方の書いている最後の部分に行きつく問題だと捉えている。
盲導犬の育成は公益事業とされており、育成団体には国や地方自治体が多額の助成金を支出し、また寄付も集められている。森ゆうこ議員の国会質問での重要部分を以下に転載しよう。
○森ゆうこ君 続きまして、その補助金等を、委託金を受けて盲導犬そして介助犬を育成する団体について伺いますが、本法案では、介助犬育成団体の認可については会計報告の義務がないということで、基準が非常に緩いものになっているということですね。
私も、基本的には介助犬の絶対数を増やすために介助犬を育成する団体をなるべく規制せずに今育てていくと、そういうことが大切だなと思いますので、その趣旨には賛成の立場でございます。しかしながら、昨年春ごろから起きております財団法人日本盲導犬協会の問題を見ますと、補助金を受け、そして広く市民からの寄附金で運営される福祉団体について、その会計処理の透明性が確保される立法措置が必要ではないかということを指摘したいと思います。
まず、政府参考人に伺いたいんですけれども、盲導犬育成団体、九団体ございますが、そのうち唯一厚生労働省が認可している財団法人日本盲導犬協会につきまして、昨年度の予算額は幾らでしたでしょうか。
○政府参考人(高原亮治君) 平成十二年度におきまして、新しい施設を建設するための特別会計等を除いた一般会計の支出額は約四億八千万円でございます。四億八千万円のうち、広報啓発に係る費用等を除いた一般の事業費及び管理費は約三億二千万円でございます。
○森ゆうこ君 四億八千万、約五億ということで、そのうち三億ほどが寄附金。大変私も驚いたんですけれども、多くの国民の方が非常に寄附をしてくださっている。日本も捨てたものじゃないなと思いました。
しかし、その三億の寄附金を受け、また二億近い助成金等を受けて運営される日本盲導犬協会がその予算額で育成した盲導犬の数は何頭でしょうか。
○政府参考人(高原亮治君) 一年間の十二年度におきます育成頭数は十七頭でございます。
○森ゆうこ君 そうしますと、非常に乱暴な計算なんですけれども、一頭当たり幾ら掛かったことになりますでしょうか。
○政府参考人(高原亮治君) 全体の予算額で割りますと、一頭当たり二千八百万円。それから、一般事業費及び管理費のみで一頭当たりの支出額を見ますと、約一千九百万円ということになります。
○森ゆうこ君 私は、日本盲導犬協会が単に盲導犬を育成しているだけではなくて、非常に広報活動等に力を入れているということは十分存じ上げているつもりですけれども、ただ、このどんぶり勘定というものはしばしば問題の核心をついていることがございます。五億の予算でわずか、先ほど十七頭とおっしゃいました、五億の予算額でわずか十七頭しか育成できない。これは常識的に考えて経費が掛かり過ぎるのではないかと思います。
森ゆうこ議員が指摘しているように、平成12年度において、日本の9団体の中で厚労省が認可している財団法人日本盲導犬協会では、何と4億8千万円の費用をかけながら17頭の盲導犬しか育成していないのだ。一頭当たり2800万円もかかっている。その内訳は3億ほどが寄付金で、助成金は2億近いという。
ならば、全国にある9団体への助成金の合計はどれくらいになるのだろう? 盲導犬育成団体には多額の税金と寄付金がつぎ込まれ、その費用の使途が不明瞭なのだ。しかも訓練を受ける前の子犬はボランティアによるパピーウォーカーに任せているからお金はほとんどかからない。そして、九州盲導犬協会がユーザーによる虐待の疑いを知りつつも貸与する実態や不可解な説明、アトムの失踪・・・。
シャムネコさんが指摘している「今盲導犬を必要とする若いユーザー希望者はおらず、その為同じユーザーに何度も、盲導犬を回を重ねて、渡しているのが現状になっています。」が事実なら、ユーザー希望者が少ないにも関わらず多額の寄付や税金が投入され続けているのはおかしなことだ。盲導犬一頭当たりの育成費用は団体によって違うとは思うが、盲導犬育成に2800万円もの費用をかけている団体があるというのはどういうことなのだろう。
こういうことを総合的に考えると、寄付と助成金、ボランティアによって成り立っている盲導犬育成事業と、いわゆるダムなどの「無駄な公共事業」が重なってくる。それほど需要がないのにも関わらず多額の費用が投じられているのではないか? その費用はどう使われているのか? 何のための育成団体なのか? 助成金や寄付を得ることが目当てではないのか? という疑問が浮かび上がってくる。つまり、単なる動物愛護に留まる話ではない。
私はかねてからいわゆる共同出版(実質自費出版)の問題点を指摘しているが、インターネットで悪質商法を行っている出版社の社名を検索しても、批判サイトが上位に出てくることはほとんどなく、悪質な会社に誘導するようなサイトが多い。おそらく会社が「やらせサイト」をつくるなど、何らかの工夫をしているのだろう。同じように、盲導犬について検索しても上位に出てくるサイトは盲導犬育成団体であったり、盲導犬の必要性や意義を訴えるものであったり、寄付を募るサイトばかりだ。
問題がありそうなのに検索しても批判サイトが上位に出てこない、ということからも盲導犬育成に関しては疑惑を感じざるを得ないのである。
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