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2011/11/14

泊原発廃炉訴訟の記念講演会

 昨日13日は、泊原発廃炉訴訟提訴記念講演会が札幌で開かれた。この訴訟は612人もが原告となって11日に提訴されたものだ。私も講演会に参加したかったが、遠方ということもありUSTREAMで放映されたものを視聴した。作家の池澤夏樹さん、北大名誉教授の小野有五さん、弁護士の市川守弘さんの講演の内容をメモしたので紹介したい。

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「昔、原発というものがあった」池澤夏樹さん

 核エネルギーを持った社会は滅びるという仮説があった。核エネルギーは桁違いに大きい。今までのエネルギーとは7ケタ違う。万一事故が起こったときに非常に大きな事故になる。コントロールは人間の倫理観。しかし人の倫理観は高まっていない。そういう人間たちが大きなエネルギーを手にした。

 かつては人間の破壊も自然によって回復していたが、最近はそれができなくなっている。ひとつが放射性廃棄物。自然界にないものを作ってそれに頼っていく。先のわからないままに次々と新しいものができてくる。放射性廃棄物を保存しなければならないのにコンクリートの寿命は150年しかない。原子炉の中で熱を出している物質は消えない。福島は燃料が溶けて炉の下にまで落ちている状態だ。熱と大量の放射性物質を出し続ける。

 1990年、好奇心にかられて東海村に行った。人類は、核兵器を持ったほうが強いと、核の競争を始めた。その結果、地球の人類を何回も殺せるほどの核兵器を持ってしまった。1952年、アイゼンハワー大統領が核の平和利用を宣言した。それ以来、核エネルギーをいろいろなものに使おうとした。船に乗せるが、うまくいかない。今は実用化されているのは軍艦だけ。軍艦の場合は安全度が低くてもいい。それで、発電を考えた。最初は楽観的で、コストが安くなると言っていた。しかし、それも危ないことがスリーマイル、チェルノブイリの事故で分かった。しかし関係者はあの事故は例外だと言った。そのために東海村に見学に行った。

 原発の安全についてのパンフレットでは安全性を強調しているが、こんなに安全を強調するのは怪しいと思った。もともと爆弾。しかし一度安全といってしまうと自縄自縛になる。最初に結論を宣言してしまうと自縄自縛になる。ひたすら嘘を言い続けていなければならなくなる。

 東京電力は想定外の津波がきたからといった。しかし800年前に大きな津波はきている。津波で壊れたと言ったが本当にそうなのか。地震だけで壊れたのではないか。これは相当信ぴょう性がある。原子炉には無数の配管が通っている。その配管が揺すぶられて壊れないか、大丈夫だと言えるか。配管まで含めた状態をイメージしなければいけない。

 飛行機も新幹線も安全だと言えるか。人間の技術では事故の抜け道をふさぎきれない。人間の手に負えない。だから「昔、原発があった」と言いたい。おととい、福島原発の近くまで行ってきた。道路封鎖していた。20キロ圏の中は使い物にならない。今の日本の政府、指導者たちにはとても核エネルギーは任せられない。原発は確実に利権。

 北海道は風力で電気がつくれる。太陽光も地熱発電も、ほかの新しいエネルギーもあるだろう。というと自然エネルギーなどあてにならないと反論がくる。子どものころ自動車を持っている人などいなかった。だから自家用車という言葉があった。みんなが自動車を持つようになって、高速道路ができた。自動車が身近になるまで20年もなかった。その気になれば、短い間でもできる。低周波や渡り鳥の問題ももちろん考えなければならないが。発電、送電を別々にもできる。そっちに持っていけば「昔、原発というものがあった」ということになる。

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「子どもたちのために、北海道の未来のために、泊原発を止めよう!」小野有五さん

 北海道は重要な食糧基地。避難してきている人もいる。北海道を汚染させてはならない。 自身と津波だけなら復興できる。しかし福島は放射能で汚染された。除染は汚染を別の場所に移すだけ。巨額をかけたスピーディはまったく公表されなかった。放射性物質は原発の北西部のほか関東や一関、北海道にも来ている。福一の位置に泊原発を置くと、札幌は泊原発から70キロとなり、福島市と同じことが札幌市で起きることになる。

 チェルノブイリと福島は同じではないと言われるが、福島はチェルノブイリより悪いかもしれない。チェルノブイリは1基だけだが福島は4基、8カ月たっても冷温停止できていない。永久にできない。海洋汚染もある。世界中が3.11以降新しい時代にはいった。明治の三陸沖地震も大勢の人が亡くなっている。昭和の津波でも。田老町では高さ10メートル、延長2460メートルの防潮堤を作った。人間は土木的な対応をしようとしてきた。しかし、先人の教えを守って高台に移住した村は被害がなかった。地球科学の津波の調査結果を尊重すべきだった。超巨大津波は4、500年に一回はくる。

 津波の波高と遡上高は違う。10メートルの津波が38メートルまで遡上する。地震の原因はプレート運動。世界で地震が起きる場所は限られている。プレートの境目で地震が起きる。4つのプレートがぶつかっているのは日本だけ。こういうところには原発はつくってはいけない。太平洋プレートの動きが一番早い。巨大地震はプレートの境界で起こる。プレートが重なっているのは静岡県で、浜岡原発がもっとも危険。80年代までは日本海側は安全だと思われていた。しかし日本海中部地震によってそれが覆された。日本海側にもプレートの境界があり、30メートルの津波が起きた。日本海の海底に断層崖がある。日本海は浅いところで地震が起きている。大きな地震は20世紀後半から増えている。千島でも同じ傾向がある。北電はお金をかけて海底の調査をしているが、泊原発から30キロ圏内では活北電の調査では断層が示されておらず不可解。こうしたことは泊だけではない。

 三浦半島には大正1923ベンチ、元禄ベンチなど地震のたびに隆起してできた地形がある。地震で持ちあがったのだ。神威岬も同じ。

 東洋大の渡辺さんは、音波探査によって泊原発の近くの活断層を指摘している。長さ60~70キロ。地震は断層の長さに比例するのでM7.5くらいの地震がおきるだろう。泊原発は断層がすぐ近くにある。耐震性は大丈夫か。

 北電はなかなか断層を認めない。ようやく認めた断増は101キロでM8.2。大間原発も地震で持ちあがってきたところにある。原発より命が大事。原発が事故を起こしたらおしまい。力を集めて泊原発を廃炉にしたい。

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「泊原発廃炉訴訟について」市川守弘さん

 おととい提訴をした。原告数は612名。7月7日に立ちあげた「泊原発の廃炉をめざす会」は1800名になった。

 訴状で求めたのは泊1号、2号の停止と3号機の営業運転の中止。それらを二度と使えないように廃炉にすることを求めている。廃炉を求めるのは今回が初めて。裁判では人格権に基づいて運転の中止と廃炉にすることを求めている。人格権とは「私が私である」ということ。「私が生きていく」ことが北電によって侵害される、という訴訟。訴状は多くの人に配布するために印刷することにした。裁判の中身の報告は随時行っていきたい。

 なぜ訴訟を起こしたのか。今まで自然保護関係の市民運動をやってきた。行政相手に質問や要望を出してきた。行政にとってはそれらの書面はたいしたことはない。抗議書などは、警察はそもそも受け取らない。正しく答えようとしないことがしばしばある。しかし、裁判の場で正式に質問(求釈明)をすると相手側は答えなければならない。下手な答えを出せない。裁判では同じ土俵で回答する義務がある。活断層を認めるのか、認めないのか、認めないのならなぜ認めないのかを北電は回答する義務がある。裁判を通していろいろな事実を明らかにして市民にオープンにしていきたい。

 書面なども裁判所が出すように言うし、裁判では黒塗りもなかなかできない。いろいろな情報を市民が入手できる。裁判は市民運動とともに起こすことに大きな意味がある。裁判だけであれば法廷内だけのできごとになってしまう。リアルタイムで得た情報を広めていきたい。「これが廃炉をめざす会」という市民運動とともに訴訟を起こす意味。

 原発をとめるには訴訟だけでは無理だと思っている。玄海原発4号機が再開しようとしている。政府は原発を輸出しようとしている。津波対策をとって再開しようとしている。依然、国策として進められている。政・官・財・学が原発を推進している。ひとつひとつの声を束ねて大きな声にしていくことが大事。国策に対しては、一人でも多くの市民の力が必要。裁判とともに事実を明らかにし、大きな市民運動を広げていく。そうすると政治家も市民の声を無視できなくなる。難しいが官僚も変えていかなければならない。東京大学は官僚養成大学。官僚制度に立ち向かっているのが市民社会のあるべき姿。

 きのうまで知らない人が隣に住んでいる。今まで知らなかった人が原告として名前を連ねている。こうした繋がりをもっともっと広げて、原発を北海道から、日本から追い出してしまおう。一緒に活動しましょう。闘いましょう。

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