「わたしたちの涙で雪だるまが溶けた」を読んでほしい
先日、本棚から「わたしたちの涙で雪だるまがとけた」(チェルノブイリ支援運動・九州 梓書院)という一冊の本を取りだした。この本は、チェルノブイリ原子力発電所事故の被害にあった子どもたちが書いた作文集だ。私の近くに住む友人が「チェルノブイリへのかけはし」の活動に参加しており、チェルノブイリの事故で被災した子どもたちの里親をしていた。私も少しだけお手伝いをしたことがあり、そんな縁で知って購入した本だ。
チェルノブイリの原発事故のことは今さら言うまでもない。1986年4月26日、あのチェルノブイリ原発の爆発事故によって大量の放射能が周辺の地域に降り注ぎ、何の罪もない多くの人たちが亡くなった。あの忌まわしい日を境に、ささやかで幸福な生活が奪われ、人々を混乱と苦痛と恐怖の世界に陥れた。そして今でも多くの人たちが放射能による病気で苦しんでいる。原発事故の惨状は戦争と何も変わらない。それが原発事故の真実なのだ。
テレビであの福島第一原発の爆発シーンを見たとき、私の頭の中はチェルノブイリの事故が重なって体中から力が抜けた。テレビで御用学者がすました顔をして「格納容器は健全です」「安全です」「チェルノブイリとは違います」と言い続けていることが無性に腹立たしかった。津波によって瓦礫の山となり果てた東北地方の被災地、そして次々と爆発する原子力発電所。この世のものとは思えない地獄のような光景に、虚脱感に襲われた。
そして、子どもたちの作文に綴られている恐るべき状況が脳裏をかすめた。これからとんでもないことが日本人にも襲いかかってくるのだろう。とうとう日本人もあの恐ろしい原発事故の被災者になったのだ。あの作文に書かれたようなことが、今度は私たち日本人の身に起こるのだろうと思うと、背筋が凍りつく思いだ。
今一度この本を手に取ってページをめくると、はじめて読んだときの衝撃がまざまざと蘇ってくる。子どもたちの心は清く正直だ。お金と欲に目がくらんだ大人よりはるかに他者の痛みがわかり、正面から真実を見抜いている。一つひとつの作品に、悲痛な心の叫びが込められている。やり場のない大人への怒りが込められている。涙なしには読み進められない。
悲惨な体験をした子どもたちは、原発をつくった私たち大人に二度と原発事故を起こさないよう訴えていた。平和な世界を願っていた。それなのに、私たち大人はまた同じ過ちを繰り返した。経験から学ばない大人たち、反省しない大人たちのなんと愚かなことか。
事故の責任逃れに必死になっているみっともない大人たちよ、今でも原発が必要だと言い張っている大人たちよ、あなたたちは何を考えてどこを見ているのか? 子どもたちの心の叫びにこそ目を向け耳を傾けてほしい。
残部の少なくなったこの本を、多くの人に読んでいただきたいとの思いで、発行者の許可をとってブログを開設された方がいる。本に掲載された50編の作文を少しずつ掲載していく予定だ。どうか一人でも多くの人に読んでいただき、原発について、放射能の恐ろしさについて、避難のことについて考えてもらいたい。
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