気になっていたクリス・バスビー氏の日本語訳付きの動画が公開された。今回は、この動画からバスビー氏の発言を紹介したい。
VIDEO
以下が日本語訳の字幕(太字は筆者)
福島の放射能汚染は、おそらく人類史上最悪の原発事故でしょう。間違いなくチェルノブイリより悪い。
放射能汚染は東京南部にも及んでおり、私は、独自に車のエアフィルターを取りよせ計測しております。少なくとも20個の別の車のエアフィルターが私の研究所に届き、これは東京南部のものも含みます。多くが福島から100km以上離れた地域のものです。このフィルターには、多量の放射性粒子が含まれていました。高レベルのセシウム134、137です。我々は、これによりまったく疑いない結論に至りました。福島原発から200kmもしくは200km以上距離の地域が、深刻な放射能汚染されているのです。
車のフィルターが放射性粒子を吸ったということは、人間も吸ったということです。子供も吸ったのです。子供たちも放射能汚染されたのです。
最近、我々は、日本政府がホールボディ・カウンターで計測したことを聞きました。これは、人間が放射能計測装置に入り、どれくらいのセシウムが体内にあるか計測することです。この結果では、セシウムのレベルは健康に影響を及ぼすほどのものでないと判定されました。同時に私は、日本の方からの報告では、母親や子供のセシウム137の放射能汚染量は、私の同僚のユーリー・バンダジェフスキーがチェルノブイリ事故の後に、ベラルーシで計測したものと同程度の量なのです。
どう影響するかといえば、セシウムは心臓の筋肉に留まり、不整脈を起こし、心筋を破壊するのです。ベラルーシでは、子供たちが心臓発作と不正無悪を患っています。もちろん、彼らは、若くして心臓病で亡くなります。なぜなら、心臓の細胞は復元できなかったからです。おそらく年1%だけが、復元できるだけだからです。いままで何度も述べていますが、福島原発事故で被ばくした子供たちの心臓の細胞は、復元できません。ですから、ここで2つの事が言えます。別々の視点からのものです。
日本政府の立場では、子供たちや人々のホールボディ・カウンターによる表面的な計測をし、セシウムの体内被ばくを否定する。この被ばく小では、健康には影響がないレベルだと言う。この見解については論争があり、まるでテニスのラリーの応酬のように、独立の科学者が影響があると言えば、政府と原子力学者は問題がないと言う。もちろん、本当の問題は、我々はこの事について何かしなければいけないということです。
私は父親であり、7人の子供と11人の孫がおります。私は、座視して、原子力産業を崩壊から救おうとする原理力学者と愚かな論争をするつもりはありません。こうしている間にも、子供たちは、さらなる病と放射線にさらされている。その結果として、癌になり、心臓病になり、あらゆる病気にかかり、死ぬこともあるでしょう。これらの事総ては、チェルノブイリ事故後にわかった事で、別に新しい事ではなく、すでに何がフクシマで起こるか分かっているのです。完全に何が起こるか分かっているのです。
我々は、チェルノブイリ事故後に被ばくした人たちの健康への影響を、同じ放射性核種で、同じ放射線量で詳しく調査しています。非常に多くの人々の調査をしたのです。ですから、福島は史上最悪の原子力災害だと言っているのです。
私は、何かしなければならないと決意しました。私は、日本にいる人達に連絡し、そして何をすべきかとの相談を受けました。私たちが、何かすべきと決意したなら、私は、実際に私たちができることが何かあるはずだと。
まず最初に、私たちが自分で放射線を計測するのです。なぜなら、我々は、日本政府の計測値を信じられないからです。政府の計測値が正しいとは思えない。私は、実際に車のエアフィルターから、それ以上の放射線を計測した。政府が子供の被ばく量計測をしている時です。車が放射線を吸ったなら、同時に子供も吸ったはずです。だから、政府の発表を信じられない。これが第一点。つまり、独立した計測調査が必要です。
第二点は、被ばくした子供たちに対して、なにかしなければいけない。二つできることがあります。
一つ目は、子供たちを放射能汚染された地域から、間違いなく安全な地域へ疎開させることです。 これには別の問題があります。今起こっていることは、日本政府は、フクシマの放射能汚染された瓦礫を、日本中に移送して処分しようとしているのです。遠く離れた南日本でさえ、いまはこの瓦礫を焼却処分する候補になっているのです。この理由の可能性として、遠隔地でも焼却処分するのは、とても皮肉的で恐ろしいのですが、理由はこうです。
子供たちが、白血病や癌や心臓病などに発症し亡くなり、その親が、政府を法廷に提訴した時、放射線に汚染され被ばくしたのが原因で、癌発生率が高いと言います。他の汚染されていない地域と比べ、高い癌発生率だと言います。例えば、南日本と比べてです。だから、私が思うのは、日本中で放射能汚染瓦礫を焼却処分しようとする計画は、日本総てを破壊し、発癌率を高め、フクシマの発癌率と他の地域と比較できないようにするためなのです。 ここがみそなのです。
ですから、とにかくフクシマの子供たちを疎開させるべきなのです。安全な地域への疎開です。これが我々が行いたいことです。
我々は、セシウム、ストロンチウム90、プルトニウムは他の放射線核種で付随的に調査されていないものを阻止しようとしています。私は今、ストックホルムの公園にいてお話しております。ここも放射線が高い地域です。バルト海で私が計測しました。これも別の疑問点です。
二つ目として、子供たちの身体への放射性物質の侵入を阻止することです。我々はヨウ素剤で阻止できることを知っています。ヨウ素の甲状腺への侵入を錠剤を飲むことにより防ぎますが、日本政府はやりませんでした。 別の放射性物質に対しても同様な対策がとれます。ウラン、プルトニウム、ストロンチウム90も最も深刻で、これらの放射線核種も付随的に調査されていない。これらの放射線核種は、ホールボディ・カウンターでは計測できない。
我々はカルシウムとマグネシウムを大量に補給することにより、ストロンチウム、ウランのDNAへの付着を防ぐことができます。これが被ばくした子供たちが一つできることです。カルシウム補給の錠剤を毎日飲むことです。放射性核種の阻止用カルシウム補給サプリメントを製造し、子供たちを持つ親御さんに安価で提供致します。これらの錠剤が、食品への侵入を防ぎます。また、別の錠剤も製造します。これは、セシウム137の侵入を防ぎます。
これらの活動のために“Christopher Busby Foundation for the Children of Fukushima” 「福島の子供たちのためのクリストファー・バズビー基金」を設立します。すでにウェブサイトがあり、日本語です。日本にいる同僚のジェームズ・グラントが携わっています。
この組織のために、高感度の放射線測定装置をヨーロッパとウクライナから取り寄せます。我々が食品の放射線測定、スーパーマーケットの食品の測定もします。我々は、日本に研究所を設立し、人々がその食品を持ちこみ、本当の放射線汚染検査ができるように致します。これらが、我々が日本で行うことです。みなさんもできることがあれば、我々にご協力いただきたい。これは福島の子供たちを救うためのプロジェクトです。
なぜなら、我々は日本政府が行うことなにもかもが、福島の子供たちを救うことにならないと思うからです。彼らの行っている原理は、福島の子供たちを守ることではなく、世界の原子力産業を守ることなのです。これは恥ずべきことです。
ご清聴ありがとうございました。
(字幕転載ここまで)
バスビー氏は、福島の原発事故は史上最悪の原子力災害だと言っているが、私もたぶんそれが現実なのだと思う。事故からもう半年も経つというのに、いまだに大量の放射性物質を大気へ、海へ、地下へと垂れ流しており、それがいつ収まるのかも分からないし、今後どうしていいのかも分からないという状況だ。10日ほどで放出が治まり、石棺で封じ込めのできたチェルノブイリとは全く異なっている。
そしてすでに放射能の影響が疑われるさまざまな症状が報告されている。木下黄太氏が事故当初から警告してきたことが、まさに当たっていたといえよう。木下氏は首都圏も危険だと警告していたが、それは決して大げさなことではないと思うし、市民による土壌調査も大きな意義がある。
放射能で汚染された瓦礫を汚染の少ない地域に持って行って焼却するなどというのは、どう考えたってまともな発想ではない。暫定基準値を信じがたいほど高く設定して汚染された食べ物を全国にばら撒くのも同じだ。国民の命を守りたいと思うのなら、汚染された瓦礫や食べ物は分散させるのではなく、福島に集めるのが筋だろう(福島の方たちには本当に申し訳ないが、致し方ない)政府が汚染を分散させようとする目的は、バズビー氏の推測どおりではなかろうか。
本当に悔やまれることだが、事故の前の世界には戻れない。だから、これから私たちがやらねばならないのは、汚染の酷い地域に住む子供たちや若者を疎開させること、発病を防ぐ努力をすること、汚染の少ない地域に汚染を拡大させないこと、原発を止めさせることだ。
バスビー氏は自らそれをやろうと動きはじめた。日本に住む私たちが他人事のようにのほほんとしていていいはずがない。原発事故を起こした当事国の国民が動かないでどうするのか。署名やデモでの意思表示も大事だし、ツイッターやブログ、あるいは口コミで重要な情報を拡散したり、バズビー氏の活動を知らせて、問題意識を持ってもらうことでもいい。全国の原発の廃炉訴訟に参加するのもいい。今大事なのは、自分で情報収集し、自分の頭で考えて意志表示し、自分ができる行動をするということだ。被災した人たちも、被災していない人たちも、それぞれの立場でできること、やるべきことがあるのではなかろうか。
以下がバズビー氏が話していた「福島の子供たちのためのクリストファー・バズビー基金」のサイトだ。
http://www.cbfcf.org/
【2012年1月10日追記】
上記の「福島の子供たちのためのクリストファー・バズビー基金」に関しては高額なサプリメントを販売しているとの批判がある。バズビー氏はこれに対して「クリストファー・バズビー・チルドレン・フォー・フクシマには自分の名前の使用許可を与えただけ。カルシウム錠剤は製造されなかったし、お金も受けとっていない。」「収益は、放射性物質検査機購入費用等に充てられる」と述べている。以下参照。
http://junebloke.blog.fc2.com/blog-entry-264.html
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