« これが音更川の堤防洗掘現場だ! | トップページ | 帯広での脱原発講演会のお知らせ »

2011/09/21

9.19脱原発集会での大江健三郎さんと落合恵子さんのスピーチ

 北海道の僻地に住んでいる私は、反原発の集会やデモにはほとんど参加できない。しかし、今は便利になったもので、6万人もが集まった東京でのあの大集会、デモの様子はさっそくYouTubeにアップされる。日本は本当に民主主義の国なのかとうんざりすることばかりの日々だが、日本でもこれだけのデモが起きるのだから、ひとりひとりの行動こそが大事なのだとつくづく思う。

 大江健三郎さんと落合恵子さんのスピーチを書き起こしてみた。集会に参加できなかった人たちも是非お二人のスピーチに耳を傾けていただきたい。

大江健三郎さんのスピーチ

 二つの文章をひいてお話します。まず第一は、私の先生の渡辺一夫さんの文章です。
「狂気なしでは偉大な事業は成し遂げられないと申す人々もいられます。それは嘘であります。狂気によってなされた事業は必ず荒廃と犠牲を伴います。真に偉大な事業は狂気に捉えられやすい人間であることを人一倍自覚した人間的な人間によって誠実に地道になされるものです。」
 この文章は今つぎのように読みなおされうるでしょう。
「原発の電気エネルギーなしでは偉大な事業は成し遂げられないと申す人々もいられます。それは嘘であります。原子力によるエネルギーは、必ず荒廃と犠牲を伴います。」
 私が引用します第二の文章は、新聞に載っていたものです。原子力政策をやめていたイタリアがそれを再開するかどうか、国民投票をした。そして反対が9割を占めました。それに対して日本の自民党の幹事長がこう語ったそうであります。「あれだけ大きな事故があったので、集団ヒステリー状態になるのは心情としてわかる」
 偉そうなことを言うものでありますが、もともとイタリアで原子力政策がいったん停止したのは、25年前のことです。チェルノブイリの事故がきっかけでした。それから長く考え続けられたうえで、再開するかどうかを国民投票で決める、そういうことになった、その段階で福島が起こったのであります。今の自民党の幹事長の談話のしめくくりはこうです。
「反原発というのは簡単だが、生活をどうするのかということに立ち返ったとき、国民投票で9割が原発反対だから止めましょうという簡単な問題ではない」
 そう幹事長は言いました。原発の事故が簡単な問題であるはずはありません。福島の放射性物質で汚染された広大な面積の土地をどのように剥ぎ取るか、どう始末するか、すでに内部被曝している大きい数の子供たちの健康をどう管理するか、今まさにはっきりしていることはこうです。
 イタリアではもう決して人間の命が原発によって脅かされることはない。しかし私ら日本人はこれからさらに原発の事故を恐れなければならないということです。私らはそれに抵抗するということを、その意志を持っているということを、先のように想像力を持たない政党の幹部とか、また経団連の実力者たちに思い知らせる必要があります。そのために私らに何ができるか、私らにはこの民主主義の集会、市民のデモしかないのであります。しっかりやりましょう。

落合恵子さんのスピーチ

 こんにちは。いっぱい声だしてくださいね。あなたに会えて本当によかったです。でもこの会えたきっかけを考えると腹立たしくて腹立たしくて仕方がありません。この腹立たしさを新しい力に変えて、明日を変えていきたいと思います。
 私たちの、これは私の世代ですが、ビートルズの歌を歌って育ちました。そのビートルズの歌にイマージンという歌がありました。「想像してごらん」からはじまるあの歌です。
 想像してください。子供はどの国のどの社会に生まれるか、選ぶことはできないのです。そして生まれてきた国に原発があってこの暴走があったことが今の私たちの社会です。想像してください。福島のそれぞれの子供たちの今を。そしてこの国のそれぞれの子供たちの今を、想像してください。スリーマイル島、チェルノブイリ、そして福島。あの原発大国フランスでも、ついこの間核施設の事故があり、ほとんどの情報が私たちは手に入れられない現実を生きています。こんどはどこで、次はだれが犠牲になるのかと、そのストレスを絶え間なく抱いて生きていくのはもう嫌だ。私たちはそれぞれ叫んでいきたいと思っています。
 放射性廃棄物の処理能力も持たない人間が原発を持つことの罪深さを、私たちは叫んでいきましょう。それは命への、それぞれの自分自身を生きていこうという人への国家の犯罪なのです。容易に核兵器に変わりうるものを持つことは、恒久の平和を約束した憲法を持つ国に生きる私たちは決して許容してはならないはずです。
 想像してください。まだ平仮名しかしらない小さな子供が、夜中に突然起きて「放射能来ないで」って泣き叫ぶような社会をこれ以上続けさせてはいけないはずです。私は、私たちは、皆さんもこの犯罪に加担しないと、ここでもう一度自分と約束しましょう。原発という呪詛から自由になること、もちろん反戦、反核、反差別は全部ひとつの根っこです。
 命、ここからはじまります。今函館で、大間原発をあの海を見ながら函館の駅に向かって歩いている大きなグループがいます。大間原発の方、そこにいらっしゃいますよね。あるいは昨日、オーストラリアから突然帰国したジュンコさん、どこかに埋もれているでしょう。ありがとうございます。
 世界から原発と核が消える、私たちのゴールに向かって歩みましょう。暴力に対して私たちは非暴力を貫きます。けれどもあきらめません。慣れません、忘れません。歩きつづけます。このひとつのウォークをけが人ゼロ、熱中症ゼロ、もちろん逮捕者ゼロで歩きぬきましょう。お願いしま~す。

« これが音更川の堤防洗掘現場だ! | トップページ | 帯広での脱原発講演会のお知らせ »

原子力発電」カテゴリの記事

コメント

コメントを書く

コメントは記事投稿者が公開するまで表示されません。

(ウェブ上には掲載しません)

トラックバック


この記事へのトラックバック一覧です: 9.19脱原発集会での大江健三郎さんと落合恵子さんのスピーチ:

« これが音更川の堤防洗掘現場だ! | トップページ | 帯広での脱原発講演会のお知らせ »

フォト

twitter

2024年9月
1 2 3 4 5 6 7
8 9 10 11 12 13 14
15 16 17 18 19 20 21
22 23 24 25 26 27 28
29 30          

最近のトラックバック

無料ブログはココログ