ウチダザリガニを増やした機関庫川の河川改修
去る7月25日、帯広市内を流れる機関庫川の河川改修事業について、河川管理者の帯広建設管理部(旧帯広土木現業所)による現地説明会が開催された。
この日視察したのは帯広北高校から「まなび野公園」にかけての区間、および稲田4号橋付近だ。帯広北高校から「えがお橋」の上流までは昨年でほぼ整備が終わっている。
長靴で渡れる小さな河川に、ずいぶん大掛かりな工事をするという印象だが、10年に1度の確率の規模の洪水を想定して断面を確保するのだという。十勝川の場合は150年に1度の確率の洪水に対応する河川整備をしているが、小中河川の場合は10年~30年に1度の確率の洪水に対応した整備をするとのこと。また、川の両側に管理道路(片方は舗装道路でもう片方は砂利道)をつけるという。
実際に現地を見て、いくつかの疑問が浮かびあがった。まず、昨年河川改修をした「えがお橋」から帯広北高校にかけての区間で河床に玉石を敷いていること。この河川にはもともと玉石はないので、意図的に持ち込んだものだ。この玉石は特定外来生物であるウチダザリガニの格好の生息地となる。しかも、このあたりの河川敷は樹木がないために川に直射日光が当たり、藻類が付着している。これがウチダザリガニの餌にもなる。
下の写真は「えがお橋」の上流。ここにはかつてバイカモが生育していたが、今は見られない。ウチダザリガニが採食してしまったようだ。このあたりでは、地域住民の方が河川敷の草刈りをしているという。なんとも味気ない景観だ。
この河川改修は「ふるさとの川整備事業」として国交省から認定を受けている。では「ふるさとの川整備事業」とは何か? 以下に説明がある。
ふるさとの川整備事業(国土交通省)
これによると目的は「河川本来の自然環境の保全・創出や周辺環境との調和を図りつつ、地域整備と一体となった河川改修を行い、良好な水辺空間の形成を図ること」なのだそうだ。しかし、「自然環境の創出」とはなんだろうか? 自然環境の保全や復元ならわかるが、創出というのは意味不明だ。神様じゃあるまいし、「創出」などとはおこがましい。こういう発想がいかがわしい「多自然型川づくり」につながっているのだろう。
河川管理者は、洗掘を防ぐ目的で玉石を入れたと説明していたが、おそらく川の水深を均一化し、玉石を敷くことで子どもたちの水遊びの場をつくりたかったのだ。しかし、利用を中心とした不自然きわまりなりない発想によって、ウチダザリガニを増やしバイカモを消滅させることになってしまった。
7月30日には十勝自然保護協会がこのあたりで「稲田のウチダザリガニを退治する会」を実施したが、何と684匹も捕獲された。
もう一つ不可解なのは、河川の両側に管理用道路を整備するということだ。なぜ両側に整備しなければならないのだろう? 道路の整備は一部の樹木の伐採をすることにもなる。散策の道が欲しいのなら、遊歩道で十分だろう。両側の管理道は過剰な整備としか思えない。
河川管理者によると、この川の隣接地に住宅が造成されたので、洪水被害を防ぐために河川改修が必要になったのだという。川の近くまで宅地開発をさせたことにも問題がある。また、洪水対策であればこれほど大掛かりな工事をしなくても、部分的な掘削と土盛りで対応可能なのではなかろうか。とにかく、工事のための整備という感が否めない。
下の写真は豊成小学校建設地のあたりだ。奥の樹木が生い茂っているところが河畔林で、この中を蛇行して機関庫川が流れている。こういう景観が機関庫川の原風景だ。機関庫川は「キラッと帯広!景観百選」にも選定されているのだが、こうした原風景に近い河川に戻すことこそ「自然百景」にふさわしいのではなかろうか。
この豊成小学校の隣接地にある池にも玉石を入れて整備をするらしい。
しかし、説明会では池の整備についての説明は一切なく「ここの部分は管理用道路をつけるだけで基本的に手をつけない」と言っていた。
水辺の空間を散策などに利用するのはいいのだが、本来と異なる環境を創出するなら自然破壊でしかない。自然の池と人口の池の位置づけを履き違えたような整備も疑問だ。
【8月10日追記】
豊成小学校の隣接地にある池は、自然のものではなく以前の地主が掘ったものであることが判明しました。お詫びして訂正します。
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