然別川三の沢ダムのスリット工事
27日に、然別川の三の沢砂防ダムの視察に行ってきた。この砂防ダムは魚が往来できるように2本のスリットを入れることになり、昨年から工事が始まっている。今は堆積した土砂を一部とり除き、そこまでスリットを入れた状態だが、最終的には川底までスリットを入れる予定だ(そうしないと魚道という目的が果たせない)。下の写真は下流側から見たダム。
この工事をしているのは十勝総合振興局帯広建設管理部(旧帯広土木現業所)だ。私たち(十勝自然保護協会)はスリットではなく、堤体の中央を大きくカットするだけでよいと提案したのだが、土石流が防げないという理由で受け入れられなかった。下の写真は上流側から見たダム。
このスリットだが、私たちへの説明では幅が1メートルとのことだった。しかし、実際には1メートル60センチほどある。しかも、堤体の上部には新たにコンクリートを付け足している。なぜこんなことをするのか意味不明だ。帯広建設管理部によると、このスリットだけでは巨岩の流下を防げないということで、スリットの部分に70センチ間隔(最下部は1.5メートル)で金属の横棒を7本取りつけることになっている。
巨岩の流下による被害を防止しなければならないとしきりに言うのだが、ダムの堆積物を見ても巨岩らしきものはない。少なくとも1メートル60センチ×1メートル50センチの空隙を通りぬけられないような巨岩など見当たらない。だいいち、7本もの横棒を入れる必要性など全くない。無駄もいいところだ。
下の写真では枯れて上部が折れた木が川の中に立っているのがわかると思う。これはかつて河畔に生育していたケヤマハンノキが、運ばれてきた土砂で埋まってしまったものだ。ただし、埋もれたことが原因で枯れたのかどうかは分からない。スリット化工事で堆積した土砂を取り除いたため、埋もれていた部分が出てきたのだ。
砂防ダムを造ったために、このように河畔の木が堆積物によって埋もれていくのだ。その堆積物はシルトか小さな砂利だ。つまり、帯広建設管理部が主張するような巨岩など流れ下ってきた気配はない。
土石流による被害を名目に巨大な砂防ダムをつくってしまったのだが、そもそもそんなダムは必要なかったのだ。なんとも無駄なことばかりやっており、工事をすること自体が目的としか思えない。
札内川の支流である戸蔦別川の砂防ダムもスリットを入れるそうだが、おそらくこれも同じような構図なのだろう(こちらは開発局だが)。砂防ダムの弊害を何とかするための新たな公共事業だ。
スリットを入れて土砂を流下させるのも、魚が行き来できるようにするのも反対することにはならないが、素直に評価する気分にもなれない。まずは莫大な税金を投入して問題だらけの砂防ダムを造ってきたことの反省をきっちりしなければ意味がないからだ。もちろん、そんな反省をする気がさらさらないのが見て取れるので、評価する気になれないのだ。
余談だが、この視察には夏休みを利用して福島から北海道に疎開している二人の小学生も参加した。今日、福島に帰るとのことだったが、放射能汚染された福島県に何の罪もない子どもたちを戻さなければならないことに胸が痛む。
砂防ダムも利権構造の賜物だし、原発も同じだ。その犠牲になるのはいつも弱者だ。お金に振り回されて人としての心を失った大人のなんと恥知らずなことか。民主党の代表選も恥のさらし合いをしているようなものだ。
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