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2011/07/13

危機感がないという恐ろしさ

 6日間ほど東京に行ってきた。涼しい北海道から亜熱帯のような東京に行くのはちょっと覚悟が要る。案の定、暑さに慣れるまでの2、3日はかなりしんどいし、ようやく慣れたかと思った頃には帰る日になる。それにしても、私が東京に住んでいた三十数年前は、暑いといってもせいぜい32度とか33度だったと思う。ところが、今は梅雨明け早々から35度とか36度にもなる。やはりどんどん暑くなっている。

 3カ月ぶりに東京に行ってとても恐ろしく感じたのが、原発事故に対する危機感のなさだ。聞こえてくる人々の会話も平常時となんら変わりがなく、原発事故のことや放射能汚染の話題は口にしてはいけないかのような雰囲気が漂っている。放射能に警戒する人はむしろ異端者扱いされかねない。マスクをしている人はモノレールで一人見ただけだ。

 さらにスーパーマーケットに入って驚いた。野菜売り場は「被災地応援」を理由に、福島産の野菜が並んでおり、人々は当たり前のようにそれを購入している。買い物をしている人は、それらの野菜は「検査されて基準値以下だから問題ない」と思って買っているのだろうか? だとしたら、それはそれで恐ろしい光景だ。

 どうも、東京のスーパーで売られている野菜は関東産と東北地産の野菜が大半のようだ。子どもに安全な野菜を食べさせたいと思っても、これではとても無理だ。しかし、そう思っている人はごくごく少数なのだろう。

 東京に滞在している間に、福島産の牛肉の汚染問題が明るみになった。なぜ今ごろになってこんなことが出てくるのかと呆れたのだが、事故から4カ月も経っているのに福島産の牛肉もろくに検査されずに流通されていたのだ。これほど杜撰な国もなかなかないだろう。

 週刊金曜日の7月8日号にクリストファー・バスビー氏のインタビュー記事「米国まで広がったプルトニウム」が掲載されていたが、バスビー氏はチェルノブイリの事故と福島の事故の類似点について以下のように語っている。

類似点については、二つの原発事故とも、原発を運営する管理者と政府当局が、起きたことについてウソを言ったということです。実際は、旧ソ連政府の方が日本政府よりも事故への対応が機敏であり、事故現場から半径三十キロメートル以内の住民を避難させるのも、旧ソ連政府の方がずっと素早かったのですが。

 25年前の旧ソ連政府の方が今の日本政府よりずっと機敏な対応をしたことからも、日本の国民はどれだけないがしろにされているのかが分かるというものだ。それは事故直後に限ったことではなく、今もずっと続いている。これだけインターネットが発達しているのに、まだ大本営発表と同じようなマスコミ報道を信じている人が多いというのは、何ということだろう!

 東京にいる間は、情報源はもっぱらテレビという生活だったのだが、これがまた恐ろしい。原発事故関連のニュースはあまりトップには流れないし、テレビだけ見ていたなら放射能の恐怖はまったくといっていいほど伝わってこない。それより、電力消費量のお知らせばかりが目立つ。「節電をしないと停電になる」とか、「原発がなくなったら大変なことになる」という脅しのようにも感じられる。マスコミによっていかに情報が操作されているのかが実感できる。これなら福島産の野菜でも平気で買うわけだ。

 客観的に見れば戦争と同じような非常事態なのに、被害が直ちに現れないからこそ、こうした情報操作によって人々は危機感や恐怖感を持たずに普通に過ごせるのだろう。もし、爆弾が落とされたりミサイルが飛び交う戦争だったなら学校や仕事より命を守ることに必死になるはずなのに、放射能は見えないし直ちに影響が出ないからこそ恐怖感もないのだ。大勢の人たちが同じ境遇にあるということも安心感につながっているのかもしれない。そして、実際に健康被害が目に見えるようになってから騒ぐことになるのだろう。それでは遅すぎるのだが・・・。

 ところで、東京にいる間、ずっと喉の痛みやいがらっぽい感じが続いていた。帰りの日には喉が痛くて、羽田空港に向かう際にはとうとうマスクを着用した。北海道に戻ってきたら喉の痛みがだんだん和らぎ、今はかなり普通に戻った。こんな暑い季節に喉がこれほど痛くなった記憶はない。喉の痛みの他には風邪らしい症状はなく、もちろん断定はできないが、放射能の影響という可能性も否定できないと思う。

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