放射能汚染に打つ手はあるのか
「現代ビジネス」が毎日のように福島の原発事故について報じている。新しい記事を三つ紹介する。
放射能で「汚れた土」がこれからしでかすこと 汚染地域800平方km以上、元に戻すには100年以上かかる。
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チェルノブイリ原発は内陸にあるため、風下になった地域が汚染された。しかし、福島原発の場合は陸地だけではなく海にも大量の放射性物質を垂れ流し続けている。その放射性物質の量たるや、前代未聞の天文学的数値だ。この漏出はいつ止まるのかも分からない。海に出てしまった放射性物質は海流によって遠くまで運ばれるし、食物連鎖によって濃縮される。今後の漁業被害は計り知れないし、海外にも影響を及ぼすだろう。海産物が食べられなくなる、というレベルの話しではなく、国際問題だ。そのうち海外からも漁業被害で賠償金を要求されるのではないだろうか。
二番目の記事では、土壌の汚染問題について取り上げている。汚染された表層の土壌を削り取ることは効果があるとしても、それを汚染された土地すべてで行うということには到底なりえない。
「除染」をしきりに強調している武田邦彦氏が、「山林から放射性物質を取り除くのが一番厳しい。特に、木や草など植物の表面に付着したのを取り除くのは大変難しいので、いっそのこと山林をすべて伐採して、新たに植林してもいい」と言っているが、汚染された山林をすべて皆伐するなど非現実的だ。
皆伐したら自然破壊だけではなく、土砂災害や洪水被害も生じかねない。仮に植物をはぎ取ったとしても、汚染された草木はどうするつもりなのか? それに、山の土壌まで剥ぎ取ることにもならないだろう。 海に流された大量の放射性物質の回収など、とてもできない。 「原発容認派の武田邦彦氏の発言は見過ごせない」にも書いたが、科学技術で除染するなどという武田氏の発想は、絵空事でしかない。
生活空間で被ばくを防ぐための除染は否定しないが、「除染」では原発事故の解決にはならない。今は原発からの放射性物質の漏えいをいかに食い止めるかということに全力を注ぐべきではないかと思う。漏えいを止めなければ、いくら土壌を除去するなどして除染しても、また汚染されてしまう。
いつも論理的な思考をされている「数学屋のメガネ」さんは、武谷三男さんの著書を紹介しながら、なぜ核燃料サイクルが無理なのかについて解説している。
論理的に考えるなら、放射性廃棄物は人間の手に負えるようなものではなく、安全に管理することはできないのだ。それは核燃料サイクルが無理だということからも、また今回の事故からも明らかだ。だから、子孫のことや地球のことを考えたなら、原発はやめるという選択肢しかない。
武田邦彦氏は、もっともらしいことを言って一般の人の気を引くのは得意のようだが、安全とは言えない原発を「安全ならいい」という理由で今も容認しており、論理的に破たんしている。「安全ならいい」というのは原発推進派の論理だ。こういう人を信用するか否かは個人の自由だが、私はまったく信用しない。
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