「原子力ムラ」という利権構造と御用学者の作り方
「現代ビジネス」に、原発に反対してきた京都大学原子炉実験所の研究者たちや、関係者へのインタビュー記事が掲載されている。「熊取6人組」とは、福島の原発事故に関してあちこちで発言されている現役の今中哲二さん、小出裕章さんのほか、すでに退職された海老澤徹さん、小林圭二さん、川野真治さん、そして故人となられた瀬尾健さんのことだ。
ここで説明されているように、原発の利権構造を「原発ムラ」とか「原子力ムラ」などと称しているのだが、とりわけ御用学者と言われる人たちは、研究費欲しさから原発の安全性を主張することで「原子力ムラ」の構成員となっていた。この記事によると、原子力ムラの頂点に立つのが東京大学大学院工学系研究科のOBたちらしい。
彼らがどうして原発擁護に走ってしまったのかといえば、つまるところ「研究費欲しさ」「お金欲しさ」ということなのだろう。原発に反対していれば研究費はもらえないが、賛成していれば潤沢な研究費がもらえるし、昇進して給料も上がる。
こうしたことはもちろん原発に限らない。ダムなどの大型公共事業に絡む問題でも構図は同じだ。国立大学が国立大学法人になってからは、研究費の調達には大学の努力が求められるようになった。だから研究費の欲しい教員は、公共事業の環境調査を請け負っているコンサルタント会社などと癒着しがちなのだ。こういう調査は学生の論文指導にも都合がいいし、就職先の紹介もできる。事業者の主催する「検討委員会」「審議会」などの委員になることもよくある。そのような場では、当然事業者に配慮した発言をすることになる。研究費をもらってくる教員は大学にとっても有難い存在だから優遇される。こうやって研究者をどんどん囲っていくことで、御用学者ができあがるのだ。ダムなどの無駄な公共事業に明確に反対している研究者は少数派だ。
かつて一緒に自然保護をやっていたメンバーにも、コンサルタント会社に入社して豹変してしまった人や、御用学者へと転じてしまった研究者もいる。お金で信念を捨ててしまうというのは、悲しい現実だ。
原発に反対している立命館大学の安斎育郎さんは、アカデミックハラスメントを受けたり、電力会社の人に尾行されたとか。反対派を潰すという点では、自然保護運動もほとんど変わらない。かつて士幌高原道路の反対のために現場で抗議行動をしたとき、明らかに公安警察とおぼしき人が我々を双眼鏡で観察していた。
世の中には、「今は原発事故を収束させることが一番大事であり、政府や東電を批判していてもしょうがない」というような発言をする人もいるようだ。しかし、私はそうは思わない。国民が支払った税金や電気代などを使って国民を騙し欺いてきた人たちが、責任を問われるのは当然だ。
以下の「日刊サイゾー」の記事などもどうぞ。原発が「安全」だと言って推進していた人たちこそ、福島の現場に行って作業をしていただきたい。
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