原発設計者が語る地震の危険:直下型地震では必ず壊れる自信!
以下の岩上安身さんのサイトに、元GE技術者で福島第一原発の設計者でもある菊池洋一さんへのインタビューが紹介されている。書き起こしもあるので、お読みいただきたい。
菊池洋一氏(元GE技術者・福島第一原発設計者)2011年4月21日
ほんとうに恐ろしいことなのだが、原発の設計者が日本の原発は「直下型地震に関しては必ず壊れる自信がある」といっているのだ。原発というのは、脆弱な部分がたくさんあるというのだ。そんなものをこの地震大国で何十年も運転してきたのだから、福島の事故は起こるべくして起きたということにほかならない。
菅直人首相は昨日、中部電力に対して浜岡原子力発電所の全面停止を要請した。このこと自体はまっとうであり歓迎する。停止の理由は東海地震の震源域にあり、国民の安全確保のためだという。しかし、疑問が残る。
一つは、なぜ浜岡だけなのかということ。日本の原発が大地震に耐えないことは福島第一原子力発電所で証明されたし、菊池さんをはじめ多くの方が指摘している。地震で危険なのはなにも浜岡原発だけではない。東海・東南海・南海地震が連動して大地震になる可能性も指摘されているのだ。それなら四国の伊方原発も止めなければならない。菊池さんの話にあるように、九州の川内原発は地震の巣に造られているらしい。北海道の泊原発も、近くに活断層があると言われている。日本はいつどこで大地震がおきてもおかしくないのだから、全部を止めねばならないだろう。
もう一つの疑問は、停止の期間を「防潮堤設置など中長期対策が完了するまで」としていることだ。菊池さんも指摘しているように、地震で原子炉や格納容器、配管などが破損してしまったなら、いくら津波対策を考えても、あるいは電源対策を講じても大きな事故になり得るのだ。
福島第一原子力発電所も、おそらく地震そのもののよる配管の破断などがあったのだろう。ところが、政府は地震そのものによる破損についてうやむやにしたままだ。
今回の菅首相の要請は評価するが、結局は政治的な判断が働いてのことで、原発の本質的な欠陥、危険性を認識しての判断ではないと思う。
今日、北海道文化放送(UHB)で、「どうする北海道と原子力」という番組が放送された。元東芝の格納容器設計者である後藤政志さんもゲストとして出演していた。北海道の泊原子力発電所も、福島原発の事故を受けて緊急安全対策を講じるという。たとえば、移動発電機車を高台に配備、海水ポンプ電動機の予備機を設置、水源の確保、防潮壁の建設などだ。これらに200~300億円かけるという。
しかし、後藤さんも言っていたが、こういう対策には必ずリスクが伴う。たとえば高台に移動発電機を設置しても、高いところのほうが地震のリスクは高くなるし、配管も長くなりリスクが増す。いくら後付けの対策を講じても、完璧な対策などというのはないのだ。しかも、原発では故障や人為ミスも多い。こうした危険性を考えるなら、対策に何百億もの費用をかけるのは馬鹿げている。原発を止める選択しかない。
番組では高橋はるみ知事の発言も紹介されていた。高橋知事は、「原子力は過渡的エネルギーだと認識しているが、脱原発は現実論としてはあり得ない。安全対策を最大限にやっていくべき」と言っていた。しかし、安全対策だけではリスクをなくすことはできない。高橋知事の頭は「はじめに原発ありき」でしかないのだろう。
番組の最後に、北海道民へのインタビューを取り上げていたが、7割が現状維持、つまり原発は必要だという意見だったという。福島の現実を本当に理解してそんなことを言っているのだろうか? おそらく多くの人が福島の事故は「対岸の火事」であり「収束に向かっている」と思っているのだろう。自分の身に死の灰が降りかかるかもしれない、という意識が感じられない。
3月下旬から1週間ほど東京に行った。街からネオンが消え、駅のエスカレーターが止まり、スーパーやコンビニの照明が減らされていた。でも、この程度のことはちっとも不便ではない。家庭でも職場でももっともっと節電できるはずだし、原発事故というとてつもなく恐ろしい人災、地球規模での環境破壊のことを考えれば、電気の使用量を減らすのは当たり前のことだ。
十勝自然保護協会も、高橋知事と北海道電力に泊原発の廃止を求める声明を送付した。
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