« ベントをめぐる不可解 | トップページ | 4月29日の小出裕章さんの講演報告 »

2011/05/02

日本が原発推進という不合理で愚かな選択をしつづけた理由

 先ほど、気になっていた「マル激トーク・オン・ディマンド」の小出さんの話を聞いた。以下から視聴できるので、連休で時間のある方は聞いていただきたい。

http://www.videonews.com/on-demand/521530/001858.php

 私がとりわけ関心を持ったのは、最後の方で語られている「なぜ日本は不合理な選択をしつづけたのか」という問題だ。

 小出さんによると、米国は1974年に原子力の夢から覚めたという。74年がピークで、それ以降は計画中のものはすべてキャンセル、建設中のものもキャンセルしたという。79年のスリーマイル島の事故でさらに減り、過去30年にわたって一基の新規立地もないそうだ。アメリカではすでに原子力産業は崩壊している。ヨーロッパも、77年か78年に原子力発電に見切りをつけたという。

 60年代は世界が原子力への夢を描いていたのだが、欧米では70年代にその危険性を認識し方向転換してきたのだ。

 では、なぜ日本は今に至るまで危険を顧みず原子力発電に突っ走ったのか? 小出さんの意見は以下のようなものだ。

 日本の歴史性にあるのではないか。お上が決めたことに従うという国民性があり、国家が原子力をやると言い続けた。また、原子力産業の儲けということもある。昨年の秋のNHKの番組で言っていたことだが、日本は平和利用といいながら核兵器をつくろうとした。核兵器を持っていることは世界を支配するための条件だからだ。そのことは政府の文書にも書かれている。

 私は小出さんの意見はもっともだと思うが、それだけではないとも思う。メディアの問題だ。欧米のマスコミは政府や大企業の不祥事を暴くのが使命となっているが、日本はまったく違う。日本のマスコミは政府の発表を垂れ流しにし、大企業はマスコミに広告を出稿することで批判封じをする。国民には原発の事故も知らされなければ「原発は危険」という事実も知らせなかったのだ。むしろマスコミは「安全」ばかりをアピールしてきた。そして各地で起こされた原発裁判でも裁判所は国の肩を持った。政府と原発産業、マスコミが手を組み、裁判所まで加担しているから「原子力ムラ」の強固な壁は崩せず、国民は簡単に騙されたのだ。

 欧米が原発の危険を認識して原子力産業から手を引いていったのに、日本人だけが「原子力は危険」という世界の常識の蚊帳の外に置かれていた。もし、マスコミが原発の危険性や核兵器への転用目的について報じていたなら、政府もこれほどまで原発をゴリ押しできなかったのではなかろうか。日本のマスコミは、権力の監視ということにおいて全くというほど機能していない。そのことはずっと感じてきたが、福島の事故を目の当たりにしても姿勢の変わらないマスコミには心底情けないと思った。

 残念ながら福島の原発事故についてインターネットで情報収集している人はそれほど多くはない。だから、テレビしか見ない日本人は今も小出さんの名前すら知らない人が大半なのだろう。

 小出さんは、最後にこんなことを言っていた。

 1970年に原子力をやめさせようと思った。いつか事故が起きると思っていたが、とうとう起きてしまった。言葉がない。こういう事態なのに、まだ原子力発電が動いている。今、即刻、全部やめても電気は足りる。ただ、そんなことより、原子力はやってはいけない。日本人がそう思えないことに絶望感を持っている。

 これについては私もまったく同感だ。原子力発電所が未曾有の大事故を起こし、今も収束できずに放射能が降り注いでいるというのに、不便な生活は嫌だといって脱原発を唱えない日本人が多いのだから神経を疑う。こういう人たちは、福島の事故がどれほど深刻なものか理解していないのだろうし、アメリカですら原子力産業から手を引いていることを知らないのだろう。井の中の蛙だ。

 そして、私は電気を使って利便性を追求することに心の貧しさを感じてしまう。電化製品に頼って手も足も頭も使わない生活が楽しいのか?豊かなのか?と。

 以下は「こるとれーんtone」さんのブログで見つけた東電ソングだ。

« ベントをめぐる不可解 | トップページ | 4月29日の小出裕章さんの講演報告 »

原子力発電」カテゴリの記事

コメント

コメントを書く

コメントは記事投稿者が公開するまで表示されません。

(ウェブ上には掲載しません)

トラックバック


この記事へのトラックバック一覧です: 日本が原発推進という不合理で愚かな選択をしつづけた理由:

« ベントをめぐる不可解 | トップページ | 4月29日の小出裕章さんの講演報告 »

フォト

twitter

2024年10月
    1 2 3 4 5
6 7 8 9 10 11 12
13 14 15 16 17 18 19
20 21 22 23 24 25 26
27 28 29 30 31    

最近のトラックバック

無料ブログはココログ