不可解な水棺
昨日、東京電力が福島第一原子力発電の事故の収束に向けた工程表を示した。冷温停止に6~9カ月を見込んでいるそうだが、果たしてその中身は現実的なのかといえば、とてもそうは思えない。
1号機と3号機は格納容器を水で満たす(水棺)というのだが、そもそもそこが疑問だ。冷却のために圧力容器に水を入れて続けているが、それでも水位は上がらない。つまり、圧力容器のどこかが破壊されて格納容器に水が漏れているのだ。格納容器が健全であれば、圧力容器から漏れた水が格納容器に溜まっていくだろう。ならば、すでに「水棺」状態になっていてもおかしくない。ところがそうなっていないらしい。ということは、格納容器も壊れて水が漏れていると考えざるを得ない。その破損箇所を修理しなければ、格納容器に水を貯めることなどできないだろう。
ところが東京電力は、格納容器の修理に関しては2号機のことしか言及していない。1号機と3号機の格納容器は健全だとでも考えているのだろうか? このまま格納容器に水を入れたなら、おそらく高濃度の放射性物質を含む水が大量に漏れ出すだろう。仮に健全だとしても、格納容器に水を入れたなら大変な水圧がかかることになる。地震と水素爆発で傷んでいる格納容器が、そんな水圧に耐えられるのだろうか?
また、原子炉建屋内はすでに高濃度の放射線量になっている。今日のニュースによると、17日の原子炉建屋の放射線量は1号機が毎時10~49ミリシーベルト、3号機が28~57ミリシーベルトだという。こんなところでどうやって格納容器の破損部分を塞ぐという難しい作業をするのだろう。おまけに原子炉建屋の中は瓦礫の山でロボットの前進も困難らしい。また16日の調査で、4号機の建屋も浸水していることが分かったそうだ。昨日の記者会見の前に分かっていたはずだが、説明していないのではなかろうか。格納容器の修理にしても、高放射線量の中での作業方法にしても、具体的なことがまったく見えてこない。なのに、東電は希望的なことしか言わない。これでは不信感が募るばかりだ。
東電の出してきた作業内容は、素人ですら頭を抱えてしまう。結局、希望的なことを並べただけだ。その程度のことしか考えられないのが現実なのだろう。それなのに最悪の事態であるメルトダウンや水蒸気爆発に関しては決して言及しない。このスケジュールが「絵に描いた餅」にならなければよいのだが、私には計画どおり実現するとはとても思えない。
« 原発を続けるのは狂気の沙汰 | トップページ | 東電の工程表に対する小出裕章さんの見解 »
「原子力発電」カテゴリの記事
- 大地震に警戒を(2024.01.04)
- 二つの大罪(2023.08.24)
- 汚染水を海に流すという犯罪(2023.08.14)
- 原発事故から10年(2021.03.11)
- 被ばくによる健康被害を「風評」にしてしまう人たちを信じてよいのか(2019.04.19)
コメント