子どもたちを被ばくから守るために署名を
ここ数日、調査や裁判(えりもの森)などで出かけていて更新ができなかったのだが、福島の原発事故では相変わらず国によってとんでもないことが進行している。
文部科学省が学校で許容される被ばく線量の基準を年20ミリシーベルトに引き上げたのだ。子どもは放射線の感受性が高く、チェルノブイリの事故でも多くの子どもたちが甲状腺がんや白血病で亡くなった。被ばくの影響は何年たってから現れるのだ。数年後には日本の子どもたちにも甲状腺がんなどが多発するだろう。まるで子どもたちを見殺しにするような基準だ。戦争中だって子どもたちを疎開させて守ったのに、今の政府はそんなこともできないのか。原発の近くに住む子どもたちや家族は、目に見えない被ばくの恐怖にさらされている。
これに対して美浜の会、フクロウの会、グリーン・アクション、FoE Japan、グリーンピース・ジャパン、原子力資料情報室の6団体が抗議と撤回を求める声明を公表し、署名を集めている。オンライン署名は以下から。多くの人に署名を呼び掛けていただきたい。
http://blog.canpan.info/foejapan/daily/201104/23
声明を以下に転載する。文科省の基準がいかに酷いかものであるかが説明されている。
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子どもに「年20ミリシーベルト」を強要する日本政府の非人道的な決定に抗議し、撤回を要求する
4月19日、文部科学省は、学校等の校舎・校庭等の利用判断における放射線量の目安として、年20ミリシーベルトという基準を、福島県教育委員会や関係機関に通知した。この年20ミリシーベルトは、屋外で3.8マイクロシーベルト/時に相当すると政府は示している。
3.8マイクロシーベルト/時は、労働基準法で18歳未満の作業を禁止している「放射線管理区域」(0.6マイクロシーベルト/時以上)の約6倍に相当する線量を子どもに強要する、きわめて非人道的な決定であり、私たちは強くこれに抗議する。
年20ミリシーベルトは、原発労働者が白血病を発症し労働認定を受けている線量に匹敵する。また、ドイツの原発労働者に適用される最大線量に相当する。
さらにこの基準は、大人よりはるかに高い子どもの感受性を考慮にいれておらず、また、内部被曝を考慮していない。
現在、福島県によって県内の小・中学校等において実施された放射線モニタリングによれば、「放射線管理区域」(0.6マイクロシーベルト/時以上)に相当する学校が75%以上存在する。さらに「個別被ばく管理区域」(2.3マイクロシーベルト/時以上)に相当する学校が約20%も存在し、きわめて危険な状況にある。
今回、日本政府が示した数値は、この危険な状況を子どもに強要するとともに、子どもの被曝量をおさえようという学校側の自主的な防護措置を妨げることにもなる。
文科省は、20ミリシーベルトは、国際放射線防護委員会(ICRP)勧告Pub.109およびICRP3月21日付声明の「非常事態収束後」の基準、参考レベルの1-20ミリシーベルトに基づくとしているが、その上限を採用することとなる。
21日現在、日本政府からは、本基準の決定プロセスに関しては、何一つ具体的な情報が開示されていない。また、子どもの感受性や内部被曝が考慮されなかった理由も説明されていない。文科省、原子力安全委員会において、どのような協議が行われたのかは不明であり、極めてあいまいな状況にある(注)。
私たちは、日本政府に対して、下記を要求する。
・ 子どもに対する「年20ミリシーベルト」という基準を撤回すること
・ 子どもに対する「20ミリシーベルト」という基準で安全とした専門家の氏名を公表すること
(注)4月21日の政府交渉で、原子力安全委員会は正式な会議を開かずに、子どもに年20ミリシーベルトを適用することを「差支えなし」としたことが明らかになった。また、4月22日、5人の原子力安全委員の意見とりまとめについて議事録は無かったと、福島瑞穂議員事務所に回答している。
(参考)
4月21日付ドイツシュピーゲル誌の20ミリシーベルト設定に関する記事(「文部科学省、子どもたちに対してドイツの原発労働者と同様の被爆限度基準を設定」)より、専門家のコメント
エドムント・レンクフェルダー(オットーハーグ放射線研究所)
「明らかにがん発症の確率が高まる。基準設定により政府は法的には責任を逃れるが、道徳的には全くそうではない。」
※※参考情報:4月21日、文科省・原子力安全委員会との交渉報告(FoEブログ)
http://blog.canpan.info/foejapan/daily/201104/21
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また、以下から市民団体と文科省・原子力安全委員会との交渉の様子が見られる。
「福島の子供達を放射能から守れ」
http://www.ustream.tv/recorded/14169488
「福島の子供達を放射能から守れ02」
http://www.ustream.tv/recorded/14170225
結局、原発事故の収束の目途がたたずに放射線量が高くなっていく状況の中で、これまでの基準を維持していたなら住めなくなる人が多数出てくる。大量の被ばく難民を出したくない政府は、こうやって基準値の上限を勝手に変更し、放射能汚染されているところに無理やり居住させるつもりなのだ。子どもたちの命より、政府の都合が優先なのだ。高齢者ならまだしも、子どもにこんなことを強いるのは許しがたい。
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