総務省の不可解な要請は何を意味するのか?
総務省は6日に、電気通信事業者関係団体に対し東日本大震災に関わるインターネット上の流言飛語について、各団体所属の電気通信事業者等が表現の自由に配慮しつつ適切に対応するよう、周知及び必要な措置を講じることを要請した。以下が報道資料と要請文だ。
東日本大震災に係るインターネット上の流言飛語への適切な対応に関する電気通信事業関係団内に対する要請(報道資料)
東日本大震災に関わるインターネット上の流言飛語への適切な対応に関する要請
この要請文はタイトルと中身に矛盾が生じている。タイトルではあくまでも地震に関わる流言飛語に対して適切な措置を講じるようにとの要請だ。つまり、被災者を混乱させるようなデマ情報の掲示板などへの書き込みに対しては削除を求めるなどの対処をせよという意味だ。ところが要請文の後半をよく読むと、意味合いがやや異なる。
要請文の後半では「インターネット上の地震等に関連する情報であって法令や公序良俗に反すると判断するものを自主的に削除することを含め、貴団体所属の電気通信事業者等に、表現の自由にも配慮しつつ『インターネット上の違法な情報への対応に関するガイドライン』や約款に基づき、適切な対応をおとりいただくよう御周知いただくとともに、貴団体においても必要な措置を講じてくださいますようお願い申し上げます」となっていて、流言飛語だけを対象にしているとは読みとれない。というか、「流言飛語」が「法令や公序良俗に反するもの」に置き換わっているのだ。
デマ(流言飛語)だけではなく、「法令や公序良俗に反すると判断するものを自主的に削除することも含め・・・」というのはどういう意味だろう? だいいち、流言飛語(すなわちデマ)か事実あるいは事実に基づく推測なのか、公序良俗に反するかどうか、あるいは合法か違法かなどといった判断を、プロバイダーができるのだろうか。だから、「不安を煽るような意見や動画は削除要請するように」というお達しとしか私には思えない。
今、マスコミでは原発事故の真相を速やかに知ることはほとんどできないと私は思っているし、信頼できる情報を提供しているのは主としてYouTubeやUstream、ホームページやブログなどのインターネットツールだと思っている。しかし総務省の要請文を読んで、まさか流言飛語にかこつけて、事実を知らせているサイトまで監視し、言論統制をしようという思惑でもあるのか・・・と悪寒のようなものを感じるのだ。
現に、反原発ソング「ずっとウソだった」を歌った斉藤和義さんの動画が削除された。その理由としてビクターが「当社として作品で出したものではなく、意図しない形でアップされたため、削除を依頼した」そうだ(以下の記事参照)。なんだか意味不明の理由だ。この歌詞に何の問題があるのだろう。この程度のことなら多くの人がネットで発言しているし、当然表現の自由の範疇だ。ビクターの削除依頼の陰には、無言の圧力を感じざるを得ない。
反原発ソング「ずっとウソだった」斉藤和義の動画アップ後なぜか削除
私は地震が起こって以来、もっぱら原発事故について書いてきた。これは日本だけではなく世界にとってきわめて深刻で重大な問題だからだ。「不安を煽っている」と批判されようと、書かずにいられない。今ほど多くの人が真実を知り、自分で考え判断し、行動せねばならないときはない。
万一、今回の事故について主としてインターネットで解説している後藤政志さんや田中三彦さん、小倉志郎さん、小出裕章さんなどの技術者や科学者の動画などまで削除を求められるようなことがあったら、あるいは彼らの解説を紹介している私のような市民に対しプロバイダーから削除要請などがくるようになったら、日本ももう終わりだと思う。
そんなことは絶対にさせないよう、ツイッターでもフェイスブックでもいいから(私は今のところツイッターもフェイスブックも関わっていないけど)一人ひとりが声を挙げねばならないだろう。何万人もの人がインターネットで声を挙げたなら、いくらプロバイダーとてそのすべてに削除要請することなどできないのではなかろうか。もっとも国によってインターネットそのものが規制されてしまえばどうしようもないが・・・。
地震も津波も火山噴火も怖いが、一部の人間の邪な意図による支配、統制ほど恐ろしいものはない。
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